111. 毒精製
俺は しばしの間考えてから、ここは彼等(自衛隊)に お任せすることにした。
今でも、市民がヘリ部隊に向かって手を振り、声援を送っているのだ。
彼等の活躍の場を奪うのはよろしくないだろう。
そして、ここは建物も無く立地が良い。応援ヘリ部隊も習志野駐屯地からなら10分掛からないだろう。
状況に応じて装甲車やヘリの展開も楽なのではないだろうか。
それに加えて、皇居や東京駅を守ったという事になれば、士気も大いに上がるだろうしな。
そういう訳で、俺達は一旦豊洲に引き上げることにした。
いまだに、巨大樹のてっぺんに居るメアリーにに連絡を入れ、揃って豊洲に転移していく。
そして、みんなを集め。今の状況や俺自身の考えなどを説明していった。
それで今度は、ゾンビ出没の情報があがっている銀座周辺を偵察しに行く予定だ。
……でも、まあ朝食ぐらいはゆっくり頂こうかと思う。
そこで、朝食を取りながらも 考えている事が有るのだが……。
徘徊するゾンビ。これは当然 討伐対象になるのだが、倒した後は? 魔石の有無は?
ダンジョンのように消えるのなら問題はないが、遺体がそのままの可能性もある。
そのような遺体から魔石を抜き出す行為は、どう解釈されるのだろう。
考え過ぎかもしれないが、つい考えてしまうのだ。 後処理するのは……、 嫌だな~。
慶子に聞いても、……黙り込んでしまった。
ここは佳奈子に聞くのが一番だろう。
そういう事で電話してみたのだが、内閣府の方でも、地震 巨大樹 ラット ソルジャーアントなど未知の物への対応で苦慮しているようだ。
とても 新しい事案を持ち込める状態ではないらしい。
それでも、まあ。書類だけは作って投げ込んでくれるそうだ。
しかし、悠長にはしていられないぞ。 地震の犠牲者は600人超えているからな。
それに、遺族確認とかで、お棺に入ったままだ。
それらが動き出したとするならば遺体安置所は、
……地獄だろうな。
さて、様子見に出発しますかね。 相手はゾンビだし、さすがに誰も付いて来ないだろうと、そそくさとテントの外に出た。 すると、
「ゲンさま。くそヤバなの分かってるけど、ゾンビにエンカしても秒だし!」
「えっ、でも。どちゃくそ臭いぞ! 腐乱死体だぞ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だし。聖魔法覚えたし。逃げるのガンダだし」
そう言う事でもないんだよな~。 1体とか2体ではないからなぁ。卒倒して、動けなくなるようでは困るんだよ。
「ゲンさん。わたしも行くから。マリが心配だし」 と紗月まで……。
まあ、どの道 戦ってもらう訳だし、行ってみますか。
そういう事で、銀座偵察隊は俺とシロ ヤカン 紗月 茉莉香で行くことになった。
紗月と茉莉香は変身サングラスを掛けてもらい、光学迷彩を施したシロに乗ってもらった。
そして晴海通りを築地に向け移動を開始した。
すると、すぐ勝鬨橋についた。 まあ、シロに乗って2キロの距離だからな。
ただ、ここから先が物々しい雰囲気なのだ。 もちろん勝鬨橋は封鎖されて渡れない。
……俺達は隅田川沿いの道を月島方面に少し進み、水門橋を越えたあたりで、向う岸の ”はとば公園” へスキップで転移した。
そして俺達は大通りは避け、裏通りを銀座に向けて、ゆっくり進んでいった。
すると、左前方に大きな寺院風の建物が目に入った。 おおっ、あれが築地本眼寺か。 なかなか立派な建物だな。
――と、その時である。 右の公園の木陰から女性の悲鳴が耳に入った。
俺達全員に緊張が走る。
俺は腰の剣を抜き放つと、その悲鳴がした方向へ走り出した。
この樹木の裏か!
俺が飛び込むと。
地面には服の胸元をはだけた女の子がもがいており。 その上には、
……3人の男が、きたねーもんぶらさげて盛ってやがった。
俺は構わず、そいつらの腹に蹴りを減り込ませてやった。
男たちはたちまち沈黙、泡をふいて気絶している。
俺は光学迷彩を解き、怯える女の子へ声を掛けた。
「もう、大丈夫だよ。怪我はしてない? もうすぐ、家の子たちが来るからね」
そしてすぐ、
「ゲンさま。どうなりました? 出たのですか」
茉莉香は少し興奮しているみたいだ。喋り方が素に戻っている。
「いやっ。今回はモンスターではない。こいつらだ」 と、縮こまった粗末なものを広げて、カエルのようにひっくり返っている男どもを指差した。
そして、紗月も到着したので、女の子を任せることにした。
そして俺は男達を縛りあげていく。
さて、こやつらだが、どーすっかなー。 表の自衛隊に渡せばいいのか?
警察と言っても、呼んだら来てくれるのかねぇ。 俺が悩んでいると、
「ゲンさま。こんなキモメン共には情けは要らないっしょ。この前、マリアたんに教わったキッツいのをキメとくからー」 と、妙なことを言いだした。
なんでも、毒魔法の中に毒精製というものが有るらしいのだ。
呪いのような毒なんかも 作り出せるという。
まあ、毒魔法のレベル自体は2と、まだ低いので毒と言うより ”嫌がらせ” に近い物らしいのだが。
その名も、”ハ・ゲール”
そして、”タタナ・クナール”
だそうだ。 効果の方は察してもらいたい。
気になる持続期間だが、個人差もあるようだが概ね3年ということだ。南無南無。
そして、彼女の場合相手に飲ませる事なく、毒自体を付与することが出来るのだ。 何と恐ろしい話であろうか……。(汗)
11.08 日曜日
11.24 満月