110. ヘリ部隊
俺はシロとヤカンを連れて、皇居外苑付近の様子見も兼ね散歩をしていた。
機動隊が警備している中を光学迷彩を掛けて躱していく。
そして、転移ポイントを作るべく皇居外苑に侵入。 地図にマークされていたポイントを回り、ソルジャーアントの巣への出入口確認も行なっていた。
ところが、日が昇ると突然 ソルジャーアントが巣の中から地上へ這い出してきた。
わらわらとその数が増えいき、300匹を超えた頃、先頭のソルジャーアントが南側の橋(祝田橋)を目指して行動を開始した。
それに対する機動隊は手前と奥に数台づつの護送用バスを並べ応戦する構えだ。
しかし、ライフルや拳銃の銃弾をはね返し、横に広がりながら迫ってくるソルジャーアントに、前線に居た部隊は成す術がない。
ここは無理せず、バスで作ったバリケードを放棄。
後に下がり、第2のバリケードを築いている後方部隊と共に攻防戦を開始したのだが、全く歯が立たない。
……このままではマズい! そう思っている所に自衛隊員を乗せたトラックが列をなし押し寄せて来て、部隊を編制していく。
「ここは俺達に任せろ!」 と言わんばかりだ。
バリケードに詰めていた機動隊が徐々に自衛隊に変わっていき。 橋の上の攻防も少し押し返す程になってきた。
しかし、それでも何とか橋を死守しているに過ぎないのだが。
さて、これからどうするんだろう? 考えながら、スマホを取り出し慶子に連絡を入れ、みんなに準備しておくようにと通達していた。
しかし、自衛隊の方も前回のラット戦で反省したのか、今回はトライポッドに据えた ”M2重機関銃” 数機を素早く展開。
歩兵部隊には ”06式小銃てき弾” を装備させている。
それで、それで、 後はどうするんだ?
俺は少しワクワクしながら、この現場を見物していた。
また、装甲車かな~? 戦車は時間が掛かるし、するとヘリ部隊かな~。
と、西の丸大手門横の石垣に腰掛けて成り行きを見守っていた。
すると、スマホがブルブル震えて着信を知らせてくる。 慶子である。
急遽皇居の森に潜み電話を受けた。
「一応、準備は出来たわよ。どうしたらいい」 とのこと。 俺は一旦豊洲へ戻ることにした。
豊洲に戻った俺は、みんなを集めて、今見てきた事を話していく。
準備はしてもらったが、今突入するとフレンドリーファイアの危険性がある。
よって、皇居外苑に戻り、もうしばらく様子を見ることにした。
「希望者は偵察に連れて行くぞ」 と言ったところ。 メアリー キロ 剛志さん 吾郎さんの4人が同行することになった。
そして残る者には、 「お茶でも飲んで待機していて欲しい」 と、甘味などのお茶菓子を出しながらお願いした。
さて、皇居に行くとしますかー。 と、急ぎ同行する4人を集めていると、
そいつらは俺の目の前に突然現れた!
3人が揃って手を出している。?! 俺が困惑していると、3人して 「「「んっ」」」 と、言って手を出したままだ。
……ああ、これか? まず、牛丼特盛りが入った袋を出す。
奪われた! 早い。
……じゃあ、次はこれか? 徳用アルファベットチョコレートを出す。
奪われた! しかし、「コレじゃない」 声には出していないが、不満顔だ。
「要らないなら、返してくれ!」 と言うと、シュッ。一瞬で消えやがった。
……そして最後はこれだよな? チュールスティックを3本出した。
奪われた! そして、掌をすり合わせて拝んでいる。
……やれやれ。もう1本出してやると、ニコニコ顔で消えていった。
何だったんだ? ……ま、いっか。
俺はちょっぴり疲れたが、気を取り直して、4人を連れ再び皇居外苑に転移していった。
さっきの様に石垣に腰掛け、観戦を決めこむ。
すると、メアリーがあの木に登りたいと巨大樹を指差している。
ハァ~、この子は。
「登っても良いが、すぐ帰ってくるんだぞ。異変を感じてもだ」 と言って送りだした。
何でこう、高い所が好きなのかね~。 東京タワーに行ったら、外から上まで登りそうだよ。
そうして、ソルジャーアントとの戦いを見守ること10分。
――――バァッバァッバァッバァッバァッバァッ
と、東の空から複数の豆粒が近づいてくる。
そちらに注目していると、その豆粒はあっという間に大きく形をなしていった。それは見事な編隊を組んで近づいてくる ”ヘリコプター部隊” であった。
そして、陸上部隊に挨拶でもするかのように、皇居外苑を低空にて1通過していった。
おおっ! ブラックホーク6機に偵察ヘリが2機か。
あ、いや 正式には ”UH-60JA多用途ヘリコプター” である。
ブラックホークとは違うのだが、細かい事はどーでもいい。 ヘリ部隊、かっちょえー(カッコイイ)のだ!
さっきまで、ブンブン飛んでいた新聞社などの白ヘリ共はもういない。
作戦の邪魔になるからな。 偵察ヘリが東と南の空に展開して、どうやら作戦開始のようである。
まず、6機編隊のヘリが皇居外苑の空を一回り。
そして、その内の3機が南から低空で侵入して来て、ソルジャーアント共を薙ぎ払っていく。
そして、北の空へと抜けて行く。 すると、もう次の3機が南からゆっくり侵入して来ている。
いわゆる波状攻撃だ。
この僅か10分程の攻撃により、ソルジャーアント軍団は壊滅的な打撃を受け、巣穴に撤退していった。
11.08 日曜日
11.24 満月