109. 吉田吾郎
俺は男組を集めて、噴霧器や各ウォーターガンに聖水を入れる作業をせっせと熟していた。
「でもよー、なんであんたらが戦っているんだ。 それに、みんな日本人という訳じゃねーよな。ほんと何でだよ」 と、意外に突っ込んでくる。
「うん。 ま~、いわゆるひとつの、 ですね~」
「師匠。ナガシマ 古いっす。 一瞬なに言ってんのか分からなかったっす」 と、妙な所からツッコミをもらってしまった。
「まー。端的に言うと、使命ですかね。 まあ、日本にも縁が有りますしね。放っておく訳にもいきませんので」
「ふ~ん。でも明らかに未成年も混じっているよな。納得済みなようだが、危険なんだろう?」
「……健太郎。雨降ってるとこ悪いが、そこで垂直飛び。 半分の力で頼む」
「へ~い。店長もグラサン掛けて、しっかり見といてよ!」
そして、オリャっと軽く10m程ジャンプして見せた。
それを見た店長は、サングラスを掛けたまま上を向いて固まってしまった。 ……やれやれ。
「あんたら、本当に何者なんだ。どーしたら、あんな芸当や魔法が使えるんだよー」
「うん。その辺は、秋の夜長。 ゆっくり説明してやるよ。 だから、手を動かしてくれ」
……そして、合点がいった熊店長は、
「じゃあ、俺も行く! 家の2匹が居れば遅れはとらねーんだよなぁ」
俺は熊店長を鑑定することにした。
ゴロウ・ヨシダ Lv.4
年齢 21
状態 通常
【従魔】 パンチ ジョン(ゴールデンレトリバー)
HP 32/32
MP 10/10
筋力 16
防御 13
魔防 8
敏捷 15
器用 13
知力 8
【スキル】 魔法適性(土) 魔力操作(1)
【祝福】 ユカリーナ・サーメクス
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パンチ Lv.8
年齢 3
【契約者】 ゴロウ・ヨシダ
HP 47/47
MP 37/37
筋力 32
防御 28
魔防 29
敏捷 35
器用 21
知力 33
【特殊スキル】 状態異常耐性 感覚共有(小)
【スキル】 魔法適性(風・結界) 魔力操作(5)
【魔法】 風魔法(4)結界魔法(2)身体強化(2)
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
どれどれ、ふんふん。 えっ! 若! 21歳。 めちゃくちゃ若いじゃん。
あの髭と体格かなぁ、子供が2~3人居ても納得しそうだ。
Lv.4 か……。微妙だが、従魔が2匹いるから何とか行けんのか~。
それにしても、パンチが風・結界魔法 ジョンが水・回復魔法と、攻め 守り 回復とほとんど隙がない。
それに、この短期間での成長ぶりには目を見張るものがあるよなー。
さすが、”シロの舎弟” だな。
……うん。この2匹が居れば大丈夫だろう。 まあ、前に出ては戦わないだろうしな。
俺は明日のソルジャーアント戦に、熊店長 改め、吾郎さんの参戦を認めることにした。
そして、このあとミーティングをおこなう。
シロによる魔力操作レベルの引き上げや、従魔召喚の方法を細かく指導していった。
そして、次の日。
俺はシロにペシペシ起こされ。 散歩のついでに皇居外苑へ行って見ることにした。
これは、”トラベル” による移転のポイント作りでもあるのだ。
豊洲から東京駅 そして皇居外苑まで、およそ8キロの道のりであったがシロ ヤカンと一緒に30分程で駆け抜けた。
パンチとジョンも行きたそうにしていたが。 さすがに、このスピードには付いて来れないので残念だが置いてきた。
外苑に着いた俺達は、転移のポイントになりそうな所を通りつつ ソルジャーアント の巣の穴も確認していった。
皇居外苑を通る内堀通りはすでに封鎖されており、外苑に通ずる各橋には護送用の大型バスが置かれバリケードを築いている。
一応皇居の守りには、”警視庁の機動隊” が任務に当たるようである。
だが自衛隊でも手を焼くダンジョンモンスターを相手に、どう対応するのだろうか。
まあ、お膝元である警視庁のプライドもあるのだろうが、銃火器が効かない相手に どれ程耐えられるのだろうか?
ここで気になるのが、中の皇居は大丈夫かって事だろうけど。 おそらくは、すでに葉山か那須の御用邸に移られているだろう。
地震も酷かったしな。 まあ、非常事態という事で、どこに移られているかは公表されてはいない。
葉山が近いが海辺なので、季節を考えれば那須の方だと思うのだけれど。
あと問題と言えば、この巨大樹だよね。 皇居前広場の前にドドーンと立っている。
ここなら、スッパリいっても被害はほとんど出ないよね……。
戦いの後、どさくさに紛れていっとくー?
切り倒さないまでも、シロに言って巨大樹から魔力吸ってもらえば良いのかな。
おっ、アリンコが動きだしたな!
うわ~、出てくる出てくる。40 50 80と2ヶ所の巣穴から、うじゃうじゃ、わらわら出てきたなー。
あれっ、撤退? 最前列の部隊は、バリケードのバスを残して後方に下がっていく。
2台目のバスの後ろまで下がってきた。 その間にもソルジャーアントは増えていき、皇居外苑は蟻だらけになってしまった。
しかし、幸いな事にソルジャーアントは水はダメらしい。 橋を落とすような作戦はとれないよな~、 さすがに。
あ~あ、バスを乗り越えはじめたよ。これより橋の上の攻防が始まった。
パン! パパン! 一斉に発砲を開始したが、まるでダメージはない。
逆に敵愾心を煽っているような始末だ。
すると、どこに居たのか自衛隊の輸送トラックが各方面より、どんどん集まり隊員を降ろしていく。
おおっ、後は俺達の任せろ! 的なやつか。 橋を死守していた機動隊は自衛隊と入れ替わるように、後方に下がっていく。
……いかん! 高みの見物を決め込んでいる場合ではなかった。電話だ! 電話。
俺はスマホを取り出すと、慶子に連絡を入れ。
こちらの状況を伝え、30分で準備するよう指示を出していくのであった。
11.08 日曜日
11.24 満月