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105. マツタンゴ

 アンデッドが関わっているという事なので、もう少し(くわ)しい説明を求めてみた。


 すると、その胞子(ほうし)のような物はアンデッドが下位眷属(かいけんぞく)を作る時に出す、 ”死の灰(しのはい)” であろうということだ。


 現場を見て事実確認(じじつかくにん)が取れていないので確定(かくてい)ではないのだが、他にそんな現象(げんしょう)を知らないという。


 その死の灰を死者が(かぶ)れば、ゾンビやスケルトンが形成(けいせい)され。瀕死(ひんし)の者が被れば、高い確率(かくりつ)でグールが形成されてしまうということだ。


 ほう、そういうことか。 アンデッドだかリッチだか知らないが、ぞっとしないな。 被災者(ひさいしゃ)をもてあそぶ行為(こうい)は。


 ……まあ、もう手遅れだろうがな。 そして俺はもう一つの疑問(ぎもん)をぶつけることにした。


 そう、渋谷(しぶや)巨大樹(きょだいじゅ)やその周りに自生(じせい)している、マツタケによく()た例のキノコだ。


 此方(こちら)の方は、意外とすんなり答えにたどり着いた。


 その答えとは、「マツタンゴ」 というキノコのモンスターの仕業(しわざ)だという。



・マツタンゴ

 キノコ自体は松茸(まつたけ)によく()ており、焼いて食べると香り高く美味(おい)しい。

 ただし、麻薬(まやく)のような中毒性(ちゅうどくせい)幻覚性(げんかくせい)があり一度これを口にしてしまうと、それを食べる事を止められなくなってしまう。

 やがてこのキノコを食べ続けた人間は、2日程で全身に菌糸(きんし)(普通に焼いたぐらいでは菌糸は死滅(しめつ)しない)が回って身体のあちこちにコブのようなものができる。

 次第に顔の輪郭(りんかく)(くずれ)れて元の顔も判らない怪人(かいじん)へ変わっていき、最終的には手足の生えた完全な キノコモンスター 「マツタンゴ」 へと変貌(へんぼう)()げるのだ。


 これも、仲間を()やしていくタイプなのかー。


 一応だが、治療法(ちりょうほう)も聞いておいた。リカバリーに浄化(じょうか)の魔法を平行して使えば良いらしいが、これも初日までなのだそうだ。


 菌糸が身体に馴染(なじ)んでしまうと、すでに手遅(ておく)れだということのようだ。


 しかし、状態異常耐性じょうたいいじょうたいせいを持っていれば食べたり()れたりしても、特に問題にはならないようだ。


とは言え、厄介(やっかい)なキノコである事に変わりはないがな。





 そして、最後に巨大樹(きょだいじゅ)のウロに付いても聞いてみた。


 すると、それ自体が ”魔力スポット” 的な(あつか)いになるらしいのだ。


 正規(せいき)のダンジョンなら、一つや二つの ”魔力スポット” ぐらいではビクともしないらしいが、若いダンジョンがそれを行なうと、すぐに魔力が枯渇(こかつ)してしまうだろうとのことだ。


 つまり、ほっとけば自滅(じめつ)してくれるという訳だ。


 という事は、魔力を使わせるようにすれば良いのか? 帰って検討(けんとう)してみる余地(よち)はありそうだ。


 それに、良いことを聞いた!


 つまり、ダンジョンである「ハンゾー」や「イナリ」に、その魔力スポットを作ってもらう事で、今までのように満月を待たずして、此方(こちら)に戻れるということになるよな。





 うんうん。 ほんと偶然(ぐうぜん)こちらに帰るハメになったが、十分すぎる成果(せいか)が出ているんでないかい。(笑)


 さてと、後は何をしていくかだが。食料の調達(ちょうたつ)と変身サングラスの補充(ほじゅう)


 身体サイズのデータが有るから、坂井(さかい)隊長と、熊店長に革鎧(かわよろい)とチェインヘルムを用意しておいてあげよう。


 あとは、サラからスイーツの調達もしておこう。


 以前 戻ったときに、熱帯植物(ねったいしょくぶつ)であるタヒチ産のバニラの原木(げんぼく)と、加工処理(かこうしょり)の方法を教えていたのだ。


 その影響(えいきょう)で、また一段とスイーツ作りにのめり込んでいるようすだ。 サラはダンジョンだけどな。


 しかし、あの天然(てんねん)バニラビーンズ特有(とくゆう)の甘い香りや風味は、プリン ケーキ アイスクリームにも欠かせないものになっている。


 そして、次回の計画としては、カカオの原木になるだろう。


 これについてはマリアベルも(すご)(よろこ)んでいたので、ナルハヤで進めて行きたいと思っている。


 さて、ゆっくりもしていられない。 そろそろアースに戻りますかね。


 再び、シオンに 「行ってくる」 と告げて俺達は元の新宿(しんじゅく)へと戻っていった。


 そして、光学迷彩(こうがくめいさい)()けたままウロの外に出てきた。





 ……あれっ? 巨大樹の様子が変だ。 色が黒っぽく変色し、下から上に何本ものクラックが走っているのだ。


 ああ、これはやっちゃったのか? 俺が。(汗)


 異世界間(いせかいかん)のトラベルでかなり魔力を消費(しょうひ)してしまったのだろう。


 おそらく枯渇状態(こかつじょうたい)? だと思う。 魔力の放出も止まっているし……。


 まっ、何かが起こる前に片付けられたと思っておこう。


 ……さあ、次だ! 次行こう。 渋谷(しぶや)だ! 渋谷。


 そうして、俺達はその場をそそくさと離れていくのだった。


 そのまま新宿御苑(しんじゅくぎょえん)内の ”中の池” を横切り、千駄ヶ谷(せんだがや)門を出た俺達は西の方角に進み。


 明治通り(めいじどおり)に出ると、原宿 渋谷方面を目指して駆け抜(かけぬ)けていった。 


 それで、渋谷の巨大樹なのだが。 やはりココ、渋谷スクランブル交差点(こうさてん)のど真ん中に立っていた。


 まあ、ここしかないですよね~。 心なしか ”ハチ公” も狭苦(せまくる)しそうである。


 取りあえず、ハチ公にごあいさつ。


 あっ! ハチ公も片耳が()れているのな。シロとは逆の耳だけど、何かそれでけで親近感(しんきんかん)()いてきたなぁ。





 ここでも、シロとヤカンを連れて一周回って見ることにした。


 まあ、お(さっ)しだと思うが魔力の出は北東方向だね。


 しかし、若者が多いなぁ。 巨大樹の影響で車の通行が出来ないものだから、天然(てんねん)歩行者天国(ほこうしゃてんごく)のようになっている。


 巨大樹を(かこ)っている三角ポールとポールバーに沿()うように、若者が何グループも(たむろ)している状態だ。


 ほんと君たちは、この日本が大変な時期(とき)に何してんの? と、言いたい所だが 俺は此方(こちら)の人間じゃねーし。 知ーらねっ!







11.06 金曜日 

11.24 満月




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挿絵(By みてみん)
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