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103. 巨大樹

 今日のところは、みんなにも(つか)れが見えるので、このままゆっくり休ませてもらおう。


 そして明日の朝から、池袋駅前(いけぶくろえきまえ)にあるという 「巨大樹」 を実際(じっさい)この目で見てみようとおもう。


 ……そして次の日の朝。


 シロに起こされた俺は、シロとヤカンを連れ散歩がてら、池袋駅に行って見ることにした。


 道沿いにあるコンビニで、パンやおにぎりなどをちょこちょこ補充(ほじゅう)しつつ、すでに見えている巨大樹を目指してすすむ。


 (すご)い! 高さは既に100mは有りそうだ。 こちらから見て、サンシャインビルには遠く及ばないものの、実に壮観(そうかん)である。


 しかし、ダンジョンが作り出した物と考えるならば、やはり禍々(まがまが)しさを感じさせるのも事実である。


 その巨大樹は、池袋駅東口を出てすぐの5差路交差点(さろこうさてん)のど真ん中に堂々とそびえ立っていた。


 もうすぐ周りのビルを浸食(しんしょく)しそうな(いきお)いである。


 そして巨大樹の周り10mぐらいには、三角コーンとコーンバーが設置されており、立ち入り禁止になっているようだ。





 俺はシロとヤカンを連れて巨大樹をぐるりと回って見る事にした。すると、あるエリアに差し掛(さしか)かったときである。


 ……なんだろう? この立ち(くら)みのような感覚(かんかく)は。


 もう一度、回って見るがやはり同じエリアだけだ。方角でいえば南東の方向だろうか。そこで、横に居るシロに聞いてみた。


 すると、シロの方でも同じだったらしく、魔力酔(まりょくよ)いの感覚に似ているということだ。 ?!


 おおっ、そうか! それだ ”魔力酔い” だ。言われてみれば、そうなのだ。


 ……するとどういう事だ? う~ん、いくつか仮説(かせつ)は立てられるが、ここだけでは何とも言いずらいな。


 そのように、考えを(めぐ)らせながらも、いつものように牛丼を調達していった。


 大漁だ! さすが東京。さすが池袋である。 まさに牛丼天国♪


 そして、気を良くした俺はさらに進んで、東京ダンジョンの本拠地(ほんきょち)である駒込(こまごめ)まで足を伸ばすことにした。


 そうは言っても、俺だけがトラベルで富士(ふじ)神社サイドまで転移したのち、シロとヤカンを召喚(しょうかん)しただけなのだが。 





 久しぶりの富士神社。 さっそくダンジョンマップを発動した。うん、確かにダンジョン! 階層(かいそう)もできている。


 ただ、やはりダンジョンの入口である広場も階段も見当たらない。


 これでは侵入(しんにゅう)はまず不可能(ふかのう)。 穴を掘ったところで、構造(こうぞう)を変えて(かわ)されるだけなのだ。


 それではどうしたら良いのか? ダンジョンの方から開いてくれるのを待つしかないわけだが。


 では、口を開かせる(ため)にはどうしたら良いのか。 ……それが分かれば苦労はしないよな。


 ダンジョンはここにも、例の巨大樹を生やしているのだが、魔素(まそ)を放出させている以外は何も分かっていない。


 俺達は社殿(しゃでん)を離れ、境内(けいだい)に生える巨大樹のほうにやってきた。


 こちらも立ち入りが出来ないように、三角ポールとポールバーで囲いがしてある。取りあえずシロを連れて一周してみた。


 あれっ? こちらの大樹も魔素の放出はしているようだが、魔素を出している方向が少し違っているようだ。


 もう一度確かめる。 うん、南だよな。 ……う~ん。なんだろう。すごく嫌な予感がするのだが、いっその事シロに切り倒してくれるように頼むか?





 いや、それは早計(そうけい)だろう。切った挙句(あげく)、スタンピードが起きました。大勢(おおぜい)死にました。 では話にならない。


 うーん、一旦戻って、みんなで情報を共有して打開策(だかいさく)を考えよう。


 そこで、再びトラベル! を発動して剛志さんのマンションまで帰ってきた。


 リビングにて朝のあいさつを()わし、テレビに目を向ける。相変(あいか)わらず地震関連(じしんかんれん)のニュースや特番ばかりだ。


 死者の数はやはり大幅に増え、400人に達している。これから、本格的な捜索ほんかくてきなそうさくが行われていく事を考えると、死傷者のも増え続けていくのだろう。


 そして、ここで地震関連でない新しいニュースが入って来たようだ。新橋に出現している巨大樹がテレビに映し出されている。


 あれだけ巨大で有りながら、地震の影響(えいきょう)を受けた様子がまったくない。


 周りの建造物(けんぞうぶつ)軒並(のきな)崩壊(ほうかい)している中で、我関(われかん)せずと言った感じでスラリと立つ一本の巨大樹。


 その姿はまるで、瓦礫(がれき)の上に立ってるようにもみえ。(さら)不気味(ぶきみ)に映っているのであった。





 その巨大樹の葉の部分から胞子(ほうし)、あるいは花粉(かふん)? のようなものが風に流されるように、周りに飛散(ひさん)しているようなのだ。


 う~ん、まあ。スギ花粉(かふん)が飛散するような感じだろうか? 


 何か、見ているだけで目が(かゆ)くなってきそうである。


 被災地(ひさいち)に降り注ぐ胞子? なにか意味が有るのだろうか……。


 そして、巨大樹関連でもうひとつ。 今度は渋谷(しぶや)からだ。巨大樹やその木の根(きのね)周辺から、マツタケによく似た感じのキノコが自生(じせい)しているらしいのだ。


 そのキノコをアホな若者が好奇心(こうきしん)にあおられ食したところ、


 「(まさ)に ”高級マツタケ” のようだった」


 とSNSで拡散(かくさん)した事により、若者を中心に大変注目されているらしいのだ。


 立ち入り規制(きせい)はしているものの、侵入(しんにゅう)して採取(さいしゅ)する者が後を絶(あとをた)たないらしい。


 ……はぁ~。 何してんの、こいつら!


 ダンジョンの物を確認もせずに……。 ありえん。


 まあ、中には ”目立ちたがり屋” もいるからな~。


 それに、政府は(いま)だにダンジョンの事を()せているしなぁ。







11.06 金曜日 

11.24 満月




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挿絵(By みてみん)
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