100. 2匹の舎弟
俺達は昨日利用した、野外バーベキュー店を訪ね。野営の許可を取るべく交渉をしていた。
すると、意外とあっさり許可をもらうことができた。 その代わり、
「大ネズミが出ても助けることは出来ない」 と言われてしまったが、めちゃくちゃ有難い。 そこで、
「店長こそ、どうして避難されなかったのですか? とても危険な状態だと言う事ですが」 と、逆に聞いてみた。
すると店長は、前方のトレーラーハウスを見やって、
「あいつらが居るから、ここを離れられなかったんだよ。我ながら、甘ちゃんだよなぁ」
と、言って熊店長は ――ガハハハハハッ と、大口を開けて笑うのだった。
ふ~ん、そうなんだ。 あの子達の為にね~。
笑っている店長が見つめている先には、2匹のゴールデンレトリバーが此方を向いて、ゆったりと尻尾を振っていた。
なんだ、熊のやろー良いヤツだな。 俺達が確り守ってやるからな!
そして、俺とシロが2匹のゴールデンレトリバーに近づいて行くと、その2匹はシロの目の前でお腹を見せ、揃って服従のポーズをとるのであった。
熊店長は驚いていたが、シロは ”フェンリル” だ。格が違いすぎるから当然だよな。
ところで、名は何というんだ? おっ、タグが付いてるな。どれどれー。
こっちが、「パンチ」 あっちが、「ジョン」 か~。
良い名前だ。アメリカのハイウェイを走ってそうだな。
「お~う、よしよし」 可愛いよなー。 置いて行ける訳がないよな~。
そして、俺達は日が暮れるまで、施設の修繕や片付けを手伝った。
「いや~。こっちが、すっかり世話になっちまったな~」
「ほんと、大助かりだよ! そっちのおねーさん方もハンパねーな。ビックリしちまったよ」
と、言いながら大皿に肉や野菜 魚介類まで、てんこ盛りで出してくれた。
なんでも、ここの電気がまだ止まったままで冷蔵庫が動かないらしい。
この分だと中の食材は、明日までしかもたないだろう。
だから、ガンガン食えと言う事だ。 そういう事なら遠慮なく、いかせていただきやす。
カーー! 旨ー。 シロも尻尾をブンブン振って、喜んでいるようだ。
周りは電気が来てないので、真っ暗だが。 このテントの周りは篝火が焚いてあるので明るく、そして暖かいのだ。
お腹がいっぱいになったのか、シロが俺の前に来てストッとお座りをした。
んっ、シロが暖かい目で何かを訴えている?
……なるほど! さすがシロ。
それで、どこが良いんだ?
おお、あのデカい 「ティピーテント」(アメリカインディアンの家、おもに平原の部族が利用する移動用住居)か。
そこには白のキャンパス生地で出来た、人なら7~8人は入れそうな円錐型の大型テントがあった。
俺はさっそく隣で、パンチ ジョンと戯れる熊店長に話をとおした。
はじめは困惑していた店長だが。 話をして行くにつれ興味が出てきたのか、目がキラキラしている。
……騙されやすそうで、とても心配になるが。 まあ、今はいいだろう。
そして、女神ユカリーナさまの像だが、今回もやはり ”ベ○ダンディタイプ” をチョイスした。
横向き加減で、両手を八の字に広げて ふわっと飛び立つ姿が美しい。原型を作ってくれたコトブ○ヤさんありがとう!
そういう訳で、ティピーテントに入り、中を少し片づける。テントの中央付近にテーブルを置き、女神像を設置した。
……そして、みんなで祈りを捧げた。
今回はシロの要望も有り、店長の愛犬たちも一緒だ。
おおおー! 光っているぞ熊も犬も。 スゴイなぁ。
みんな祝福と加護を授かっている。
んっ、あぁー。 そういう事ね。熊は ”おまけ” ってことね。
そうなのねシロさんや。
つまり、パンチとジョンは「加護」を授かっているが、熊店長には「祝福」が授けられている。 というわけだ。
どうも、ジョンとパンチはシロの舎弟になったようである。
これは、あれか? 『ここは、お前達に任せるぞ』 的な……。
2匹共、ほぼ同じパラメーターで、使える魔法が少し違うようだ。 では、せっかくなのでパンチとジョンのステータスをご覧にいれよう。
ジョン Lv.1
年齢 2
HP 30/30
MP 15/15
筋力 15
防御 15
魔防 15
敏捷 15
器用 15
知力 15
【特殊スキル】 状態異常耐性 感覚共有(小)
【スキル】 魔法適性(水・回復) 魔力操作(3)
【魔法】 水魔法(1) 回復魔法(1)
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
おお、何処かで見たような数字の羅列。
シロがかなり強めにお願いしたのだろう。 すでに魔法は使えるようになっている。
ジョンの ”水・回復” に対して、パンチは ”風・結界” だ。
この2匹を連れていれば、ダンジョンでも、結構 上の階層まで無双できるよな。
するとシロから、2匹のリードを外してくれという要請がきた。
熊店長に了解を得て、2匹のリードを外す。 ……ああっ、おぉい。
シロが2匹を連れて、広場の方へいってしまった。
なんだ? シメるのか! カワイガリか?(汗)
……おおっ違った。
魔法の訓練だったようだ。 結構、熱心に教えている。
そうだよな。 ちょっと間違ったら大変な事になるからなぁ……。
ここ1時間程、魔法やその他の訓練を終え。トットットと涼しい顔でシロは2匹を引き連れて、此方に帰ってきた。
11.04 水曜日
11.24満月 .01日ダンジョン