99. 行けニャー
俺達は有明テニスの森奥の駐車場に集まっている。
隣には、結構でっかいスーパーが有るのだが、今日の営業は出来るのだろうか? 電気が来てないのでは、何ともならないだろう。
新豊洲の変電所がやられているのかもしれないな。 この揺れで ”ラット共” も動き出すかもしれないし。
……テレビやスマホで情報が取れないのなら、ここで様子を伺っていくしかないだろう。
俺達は車の中でミーティングを行い、現状の報告と今日の動きを確認していく。
まずは戦力なのだが、現地に入っている自衛隊員は およそ100名。
各道路封鎖で一ヶ所に一分隊10名が配置されているようだ。
本部はおそらく豊洲駅前にいるトラック群であろう。ここに30名程の自衛隊員が配置されている。
総勢で180~190名程の中隊規模であるようだ。
さて、俺達の仕事だが。 戦端が開いてからの支援という事になる。
ただ、正体を隠しての行動になるので、なかなかに大変だ。下手したら後ろからズドンも有り得るのだ。
まあ、支援で雷魔法などを撃っていくだけになるが。 これが一番効率が良いだろう。
チームはツーマンセルで 俺とヤカン タマとキロ シロと剛志さんだ。 支援の行動時間は安全マージンも考えて30分だ。
それに休憩をはさみ、様子を見ながら続けていく。
タッタッタッタ タッタッタ、乾いた音が聞こえてくるようになった。どうやら戦闘開始のようだ。
「よし、行くぞ。初めは自衛隊さんが相手していないヤツから始末して行こう。ラ○シャンスガーデンの方からだ。 時計を合わせるぞ、3.2.1」
俺達は車を出て豊洲との水道の方に向かった。 物陰で、変身サングラスを掛けて、トラベル! 豊洲に降り立つ。
散開しながら、予め調べて置いたラットの竪穴を 魔法を撃ちこみながら念入りに潰していく。
タマ・キロ組はキロに場所の地図を渡しているし、シロ・剛志組はシロが居るから大丈夫なはずだ。
まあ、ラットが自然繁殖するかどうかは分からないが、なんとか一匹残らず始末したいものだ。
その後も俺達はタンタンとラット狩りを続けて行った。ところがだ、戦闘開始から2時間ぐらい経過しただろうか。
俺達の前から来ているであろう 自衛隊員の姿が何処にも見当たらないのだ。
んっ! どうした? やられた訳ではないよな。
そこで、俺達も作戦を中止して、建物の上から様子を伺う事にした。
ちょうど、お昼近くになってたので、みんなに牛丼とお茶を配り、食べながら状況を見守っていた。
すると、前方の豊洲駅方面より、
「軽装甲機動車」と タイヤが8つの「96式装輪装甲車」が列をなして進行してきた。
いずれも、上部にMINIMI(5.56mm機関銃)か、M2(12.7mm重機関銃)を乗っけている。 カッコイイ!
それから、 ……始まってしまった。 イタチごっこが。
確かに、威力的には何とかなってはいるようだが、如何せん数が多い。
そして、素早い! 構えた時にはもう居ない。 俺達も上から観戦し、
「やれやれ! そこだニャ! 行けニャー」 と、タマが応援しているが、ご覧のような有様だ。
まあ中には取りつかれて、オロオロしている車両も有ったので、そっと上から ”パラライズ” を落としてあげていた。
まあ、戦車もそうだが、歩兵あっての装甲車だからな。
この戦いは、結局 埒が明かないという事で1時間程で終わってしまった……。
さっきまで、 「やれニャー、行けニャー」 と、応援していたタマもどこか寂しそうである。
俺達が始末して行ったので、ラットの数も半分近くには減っていると思うが。
これから、どうするつもりだろう?
……1時間が経った。 ……2時間が経った。
ええっ! 終わり? 今日はどうやら終わりのようだ。
そして、スマホを見るが復帰していない、圏外のままだ。 仕方ない、ホテルに戻るか。
「どうやら、今日はここまでのようです。一旦、ホテルへ戻ります」 と、剛志さんに声を掛け、トラベルを使いホテルの裏手に転移してきた。
そして、表に回りホテルに入ろうとしたのだが、入口にバリケードが設置されていた。
【ご迷惑をお掛けしております】 と、張り紙が貼ってある。
地震の影響で、電気が止まっている中での営業は、困難だということらしい。
まあ、当たり前と言えば、当たり前だよな。 ……さて、どうしようか?
俺は野宿でも構わないのだが、何処でもという訳にはいかないだろう。
下手な所でやってると、通報されてしまいそうだ。
かと言って、もう こんな時間だから、近くのホテルはダメだろうな。
う~ん。 あっ! 有るな、一ヶ所。 あそこだ! ほれっ、何って言ってたか、ほにゃららマジック。
まあ、こんな時だ。事情を話して野営させてもらおう。
そういう事で、剛志さんにも了解を得て、俺達は再び豊洲へ戻る事になった。
光学迷彩を張り、昨日のバーベキューテーブルの近くに転移してきた。
周りを見渡してみると、地震の影響で中は酷いものである。
すると、向うの方で動く人影を見つけた。俺達は、光学迷彩を解き、その人影を訪ねることにした。
「すいませーん。こんにちは!」
「えっ、おお。あなた方は昨日の。 で、どうされました」
「いやー。我々。泊る所が無くて。 どうしたものかと思っていた折に、こちらの事を思い出しましてねー」
熊店長は、困惑しながらも話しを聞いてくれていた。
11.04 水曜日
11.24満月 .01日ダンジョン