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ウッキウキ! 修学旅行初日の昼②

ブックマーク、評価をして下さった方々、本当にありがとうございます!


それと、先に謝っておきます。すいませんでした。

 前野さんに引かれてイリス様たちの下へ行く。

 イリス様たちの近くにいた鹿たちは、イリス様たちを堪能し終えたのか、少しづつ数を減らしていた。


「あっくん! どこいってた……え? な、な、何で二人は腕を組んでるの……?」


 俺と前野さんの様子を見て、あからさまに星川が動揺する。


「ふふふ。何でって、ラブラブだからに決まってるじゃない」


 前野さんはそう言うと、星川に見せつけるように俺の腕を抱き寄せた。


「そ、そうなの!?」 


 星川がもの凄い形相で俺に詰め寄ってくる。


「いや、違うから。これは、あれだ。前野さんが鹿が怖いって言うから仕方なく俺の腕を貸してるんだ。決して、前野さんとラブラブなわけではない」


 だが、俺だって必死だ。イリス様も俺たちの様子を見ている。間違ってもイリス様に前野さんと付き合っているなんて勘違いはされたくない。


「ふふ。照れちゃって可愛いわね」


 前野さん。頼むからお前は大人しくしといてくれ。


「照れてない。まあ、そう言うことだ。ほら、さっさと行こうぜ。大仏が俺たちを待ってる」


 話をこれ以上続ければ、前野さんがまた余計なことを口走りかねない。さっさと東大寺に行き、イリス様たちの意識をそっちに向けた方がいい。


 そう思い、前野さんを引きずってずんずんと前に進もうとする。だが、前野さんが掴んでいない方の俺の腕を星川が掴んできた。


「わ、私も鹿が怖いから、こうしていいよね?」


「いや、さっき鹿たちと戯れてたよな?」


「い、今さっき怖くなったの! それともタマちゃんは良くて、私はダメなの?」


 上目づかいで不安げな表情を向けてくる星川。


 くっ。その聞き方はずるい。ここで、星川はダメと言えば俺は前野さんを特別扱いしていることになる。

 俺は前野さんを特別扱い何てこれっぽっちもしていないし、する気もない。


「はあ。好きにしろよ」


「うん! ありがとう!」


「あらあら……。へえ。ふ~ん」


 星川とそんなやり取りをしていると、ニヤニヤした笑みを前野さんが向けてくる。


「何だよ」


「い~え。ただ、蒔いた種はちゃんと刈り取りなさいよ。じゃないと、何が芽生えるか分からないわよ?」


 何を言っているんだこいつは?

 俺はこれまでに植物を育てた経験はほぼないぞ。小学二年生の頃にオクラを育てたくらいだ。

 ちなみにオクラはちゃんと全部食べた。美味しかった。


「とりあえず行こう。時間も少ないしさ」


 愛乃さんが声を掛けてきて、それを合図に俺たちとイリス様も動き出した。


***


 東大寺。

 奈良の大仏と呼ばれる、大きな大仏が有名な寺院である。

 大仏は国宝、東大寺は世界遺産に登録されているという素晴らしい観光スポットだ。


「でけえええ!!」

「やべえええ!!」

「かっけえええ!!」


 故に、こうして修学旅行生がよく来る場所でもある。そして、とりあえず大きなものを見るとテンションが上がる男子高校生が大人しくしていられるわけもなく、寺院の中は割と騒がしかった。


「うわー! 凄い大きいね!」


「本当ね。ねえ、悪津君。私も割と大きなものを持っているのよ」


 そんな中、純粋な星川と邪な前野さんに俺は挟まれていた。


 前野さんの言葉通り、前野さんは大変大きく立派なものを持っていた。腕からそれがしっかりと伝わってくる。


「タマちゃんも大きなもの持ってるの? どんなもの?」


 流石は純粋な星川。穢れなき眼で、前野さんに疑問を投げつける。

 もし、前野さんが半端な気持ちでさっきの言葉を言っていたのなら、純粋な星川の疑問に恥ずかしくなっていただろう。

 だが、前野さんは性根から邪な存在だったらしい。


「ふふ。それは、これよ」


 前野さんは、惜しげもなく俺の腕に胸を押し付けている状況を星川に見せつける。


 この人は頭のネジが十本くらいぶっ飛んでるんじゃないのだろうか?


「なっ……! うぅ……」


 自分の胸と見比べたのだろうか?

 星川が前野さんの立派な胸を見て、少し落ち込んだ表情を見せる。


 折角の修学旅行なのに、その表情はいただけない。星川が楽しそうにするところをきっとイリス様も望んでいるはずだ。


「大きさが全てじゃないだろ。前野さんが持っているものを星川が持ってないのと同じで、星川しか持ってない星川の良いところがたくさんあるんだからよ、気にすんな。大仏だってめっちゃでかいけど、中身はスカスカ何だぜ? 星川は大きさじゃなくて中身で勝負すればいいんだよ」


「あら、私は中身もいっぱい詰まってるわよ」


 折角の俺のフォローが前野さんの一言で台無しになってしまった。


「前野さんは黙っててくれ。てか、そんなこと言って恥ずかしくないのかよ」


「あなたこそ、女性の胸の話で中身が云々って言うのはどうなのかしら? セクハラよ」


 バカな!? 俺の完璧なフォローがセクハラだと!?


「な、何を言ってるんだ。セクハラなわけないだろ。なあ、星川?」


 星川に視線を向ける。


「セクハラだよ」


 星川は真面目な顔でそう言った。


 セクハラはやられた側がセクハラと言えばセクハラになるらしい。つまり、俺の行動は立派なセクハラだったのだ。なんてこった。


 だが、星川の言葉には続きがあった。


「……私以外に言ったらね。だから、絶対に私以外には言っちゃダメだよ!」


 さっきまでの真面目な顔から一転して、星川は微笑みながらそう言った。


「お、おう」


 おお……何か知らんが助かった。

 やれやれ、危なかった。あと少しで、折角の修学旅行中にセクハラで訴えられるところだったぜ。


 その後も、上機嫌な星川と、ニヤニヤと不気味に笑う前野さんと供に大仏を眺める。


「明里ちゃん、環ちゃんもこっち来なよ!」


 愛乃さんに呼ばれて、どっちに向かうとそこには人一人が通れるか通れないかという穴がある柱があった。


「何だこれ?」


「これは大仏の鼻の穴と同じ大きさの穴がある柱っしょ。ちなみに、この穴をくぐることが出来たら無病息災、祈願成就の効果があるみたいっしょ」


 横を見ると、そこには三郎がいた。


 こいつ……いつの間に!?


「へ~。三郎君は物知りなのね」


「え! あ、いや……そ、そうでもないっしょ! ははは!」


 前野さんに褒められたことで三郎が顔を赤くして頭をかく。

 微笑ましい光景だ。

 三郎が俺の靴を踏み付けていなければ。


「ところで、環さんはどうして善道と腕を組んでいるっしょ?」


「ふふ。気になる?」


「も、勿論っしょ!」


「悪津君どうする? 私たちの関係、教えちゃう?」


 やめろ三郎。笑顔で俺の足をぐりぐりと踏み躙るな。前野さんも紛らわしいこと言うな。


「ち、違うよ! 別にタマちゃんとあっくんは何でもないから! これは、タマちゃんが鹿が怖いって言うから腕を組んでるだけだからね! 二人はラブラブなんかじゃないから!」


 俺が「前野さんとは何もない」と言う前に、星川が否定してくれた。


 素晴らしい! よくやった星川!


「そ、そうっしょ……。でも、このお寺の中には鹿はいないっしょ。なら、もう腕を組む必要はないんじゃ……」


 確かに。三郎の言う通りだ。

 だが、前野さんは実際は鹿が怖いから俺の腕を組んでいるわけではない。どう返すべきか……。


 俺が悩んでいると、前野さんが自ら俺の腕から離れた。


「そうね。悪津君ありがとう。楽しい時間が過ごせたわ。三郎君、ちょっとあっちに一緒に行きましょうよ」


「え、あ、はい!」


 そう言い残して前野さんは三郎と供にどこかへ歩いて行った。


 結局、前野さんは何がしたかったんだ? まあ、いいか。前野さんが自ら離れていったんだ。俺は別に約束を破ってはいない。

 前野さんがイリス様に、俺がイリス様に好意を抱いていることを言わないか不安だが、それはイリス様の近くでしっかりと目を光らせておけば大丈夫だろう。


「それで、星川はいつまでくっついてるんだ? 三郎の言った通り、もう鹿はいないぞ」


「あ、うん。そうだね……」


 名残惜しそうに星川が俺から離れていく。


「そんなに俺の腕は頼りがいがあったか?」


「え!?」


「いや、何か名残惜しそうだったから」


「な、名残惜しくなんかないよ! あ、そういえばカノッチに呼ばれてたんだ! それじゃあね!」


 首をぶんぶんと横に振って星川は俺から離れていった。

 その顔は端から見ても明らかに赤くなっていた。


 星川……。お前まさか、俺と腕を組んだことを恥ずかしがっていたのか!?

 まあ、星川も年頃の女の子だ。同じクラスの男子に、男と腕組んでいるところを見られたら恥ずかしいと思うのが普通だ。


 いや、でも顔を赤くするってことはもしかすると星川は俺に好意を抱いているとか……?

 いや、まさかな! そもそも星川は俺がイリス様のこと好きだってこと知ってたし、まさかなぁ!


「やあ、善道君」


「お、お前は……!」


 そんなことを考えていると、誰かに肩を叩かれる。振り向くと、そこには『罠の支配者(トラップルーラー)・罠民』がいた。


「そんな警戒しないでくれ。僕はただ君に提案をしに来ただけさ」


「提案?」


「そうさ。あれを見なよ」


 罠民が穴の空いた柱を指さす。その柱の周りには、イリス様たちの他にもたくさんの生徒の姿があった。

 そして、一人の男子生徒が穴を丁度くぐろうとしていた。


「くっ!! 何でだ! これ以上何で行けないんだ!!」


「太郎頑張れ! 叶えたい願いがあるんだろ!」


「そうだ! 俺は……! 俺は、この穴をくぐってアカリンに凄いって褒められるんだあああああ!!」


 穴をくぐろうとしていたのは太郎だった。

 雄たけびを上げ、芋虫のようにうねうねと動きながら少しずつ穴から這い出てくる太郎。正直、ちょっとだけ気持ち悪い。


 よくよく周りを見てみれば、その様子を見ている女子は何人か引いていた。


「いっけえええええ!!」


 そんなことを知る由もない太郎が最後の力を振り絞り、遂に穴を潜り抜けた。


「はあ……はあ……やったぜ!」


「凄いよ! 太郎!」


 次郎が太郎を褒めたたえる。


「ああ。これで俺のアカリンに凄いと言われるっていう願いが叶うといいんだけどなぁ」


「うーん。それはちょっと高望みじゃない?」


「まあ、そうだよな」


 ははは! と太郎と次郎が二人で笑いあう。そこに一つの影が近付く。


「私がどうかした?」


「ア、アカリ……じゃなくて、星川さん!?」


 近づいて行ったのは星川だった。元々、穴の近くにいたのだ。自分の名前が呼ばれて気になったのだろう。


「あ、別にアカリンでいいよ~。ところで、私の名前が聞えた気がしたんだけど、気のせいかな?」


「あ、え、いや、その……」


 顔を赤くしてもじもじと口ごもる太郎。相変わらずあいつは星川の前だと何も出来なくなるらしい。


「そ、その! 太郎、この穴をくぐったんですよ! 凄くないですか?」


 その太郎を見かねて、次郎が助け舟を出す。次郎の言葉に太郎がもの凄い勢いで首を縦に振る。


「えー! 凄いね! こんな細い穴なのに、太郎君って結構スリムなんだね! お願い叶うといいね!」


 星川はそれだけ言うと、イリス様たちがいる場所に戻っていった。


「ふおおおお!! ヤッフオオオイ!!」


 拳を突き上げ、その場で飛び上がる太郎。その目からは涙が零れ落ちていた。


「さて、見て分かったと思うけど、この穴の力は本物だ。どうだい? 善道君も挑戦してみないかい?」


 太郎たちの一連の様子を見終わった後で、罠民が俺を誘う。


 確かに、太郎のあの場面を見てしまった以上、この穴の力は馬鹿には出来ない。だが、一つ気になることがある。


「俺を誘ってくれるのはありがたいが、罠民はやらないのか?」


 俺の言葉に罠民は首を横に振る。


「もうやったんだよ。残念ながら僕では潜り抜けることが出来なかった。でも、君なら……班決めのくじ争奪戦で僕に勝利した君ならこの穴も潜れるんじゃないかなって思ったのさ」


「そうか……。そうだな。折角だし、是非挑戦させてもらおうとしよう」


 やらない理由はない。それに、俺も太郎の様にイリス様に凄いと言われるかもしれない。


「そうこなくっちゃ」


 罠民は笑顔を浮かべ、俺を穴の入り口に案内する。


「ルールは二つ。自分だけの力で潜ること。道具とかを使わないことだ。そうそう、ちゃんと願いを抱きながら潜らないと効果はないみたいだから気を付けなよ。じゃあ、行ってきなよ」


「おう」


 罠民に返事を返し、穴に頭を入れる。

 穴の中は俺が思っている以上に、狭く通りにくかった。


 これは、腕を伸ばさないと無理だな。

 

 水泳の飛び込みのように、両手、頭、身体の順で穴の中を突き進む。

 肩がつっかえて通りにくいが、太郎の様に身体をうねうねと動かせば何とか通れる。


 よし、もうすぐ出口だ!

 そして、遂に頭が出口から出た。ここまで来れば後は簡単に出れる。

 そう思った時だった。


「ふふ。行かせないよ」


 足元から罠民の声がしたかと思えば、誰かに足を掴まれた。


「わ、罠民か!? 放せ! これじゃ出れないだろ!」


「出なくていいんだよ。全て、計画通りだ」


 どういうことだ! と声を上げようとしたその時、俺の目の前に数人の男子生徒が姿を現した。


「お、お前らは……『猫王(キャッツキングダム)・猫又』に『晴天(ハレルヤ)・晴田』、『石頭(ストーンヘッド)・石田』そして、『『芋男(ジャガー)・田沼』!! 何故ここに……? まさか!?」


「そのまさかさ。ここにいるのは、あの日君に負けた敗北者たち。分かるだろう? 僕らは君に嫉妬している!!」


「ま、待て! 結局、あの日のくじは外れだったん――「「「黙れい!!」」」


 俺の言葉は猫又、晴田、石田の三人に遮られた。


「くじなど関係ない。俺たちが嫉妬しているのは今日の出来事だ!」

「タマタマたんと腕を組むに飽き足らず、アカリンとも腕を組むというお主の暴挙!」

「見過ごすわけにはいかないよなぁ!!」


 そう言うとさっきの三人に田沼を加えた四人は、俺に向けて、一斉に尻を突き出す。


 ま、まさか……。


「ま、待て! 田沼はどうなんだよ! お前はあの日の争奪戦にも参加していなかったし、こんなことする理由はないだろ!」


「オイラはただ、このガスを放出したいだけなんだなぁ。今日は朝から大分溜めてるから、早く出したいんだなぁ」


 のんびりした表情で田沼がそう言う。


 『芋男(ジャガー)・田沼』――ポテトをこよなく愛し、ポテトチップスを常備している男だ。争奪戦の日、もし田沼がいればくじの女神は田沼に微笑んでいただろうと言われるほど、こいつはとてつもないガスをその身に宿している。

 そのガスをまともに浴びれば、誰であろうと一時間は目覚めないとか。


 そのガスが大分溜まってるだと……!?


「ちょ、ちょっと待ってくれ! こんなところで浴びたら逃げ場がない! 頼む! 俺はこんなところで終わりたくないんだ!」


 恥も外聞もなく、命乞いする。まだ、俺は生きていたかった。


「ははは。善道君。君は僕に話しかけられた時点で疑うべきだった。だって、僕は『罠の支配者(トラップルーラー)・罠民』なんだから。さようなら。良い夢を」


「まっ――」


「「「行くぞ!!」」」

「行くよぉ」


 スゥー。


 狭いところからガスが漏れ出る音とともに、俺の鼻を強烈な臭いが襲う。その凝縮された臭いを前に、俺の目の前は真っ暗になった。

すいませんでした!

まあ、おならネタはかいけつゾロリもよく使ってることなんで、生温かい目で見て、許してください。もう使いません。多分、きっと、メイビー。


こんな話を書いといて、いいにくいのですが、よろしければブックマーク、評価、感想お願いします!

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[一言] ちょっと、タマタマたんはだめでしょ!
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