突然の再会
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***<side イリス>***
「あーあ。行っちゃったー」
「ねえ。折角、久々に会えたのになぁ」
私の前で、悪道を撃退? した春香ちゃんと秋穂ちゃんが残念そうに呟く。
「春香。あなた、気付いていたの?」
「うん! あの時、イリスお姉ちゃんと一緒に落とし物探し手伝ってくれたお兄ちゃんでしょ? あんなに印象深い人忘れるはずないよ!」
「えー! はるちゃん、あのお兄さんと知り合いだったのー? いいないいなー!」
正直、春香は忘れているのかと思った。
愛乃春香。あの日、私と悪道がお出かけした時に忘れ物探しを手伝った少女は花音の妹だった。
それが分かってから、春香に懐かれ、春香と遊ぶうちに春香の友達に懐かれて、子供と過ごすことが多くなった。
今日も、春香とその友達の秋穂に誘われて公園で遊んでいたのだけど、まさか悪道に会うとは思わなかった。
悪道。私を愛してくれている人。そして、私がもっと近づいてみたいと思う人。
今日の最初こそ、もしかしたら子供を狙ってきたのかと思って警戒したけど、そんなことは無かった。
悪道は、今も昔も変わらないただのバカだった。
「ねえねえ! イリスちゃんさあ、あの男の人のこと本当はどう思ってるの? あの男の人はイリスちゃんのこと愛してるって言ってたけど」
「確かに! イリスお姉ちゃん、前に私とあった時デートしてたよね! あのお兄ちゃんのこと好きなの?」
春香も秋穂も年頃の女の子。
そう言う話題には興味津々なのか、私に「どうなの?」と詰め寄ってくる。
「そ、そうね……。嫌いではないわよ」
「わー! イリスちゃん顔赤くなってるー!」
「ねえ、結婚するの? 結婚!」
結婚。
その二文字に私の方がビクッと震える。
「け、結婚なんて、そんなの早いわよ! ましてや子どもなんて……。育てるのにお金だってかかるし、そ、そもそも子どもを産むためには私が、悪道と……うぅ」
その未来を想像すると、どうしても顔が熱くなる。
でも、素敵な未来に思えた。
愛に溢れている彼なら、きっと子供のことも大事にしてくれる。私の親のような偽りの愛ではなく、本物の愛情を子供に与えてくれる。
今日だって、春香や秋穂は彼を気に入っているようだった。子供はそういうところは敏感だ。
彼女たちが悪道を気に入るということは、悪道が悪い人じゃないことの何よりの証明だ。
「あーあ。イリスちゃん、自分の世界入っちゃった」
「まあ、そっとしておこうよ。久々の再会だったんじゃない? でもさー。あのお兄ちゃんの最後の言葉。私少しだけときめいちゃったな」
「えー? はるちゃんチョロすぎない? 凄い小物感出てたよ」
「でもでも、今どきあんなに真っすぐ思いを言葉にする人って少ないよ! 私はいいなって思った」
「まあ、確かにそう言われてみればそうかも」
「ねえねえ! イリスちゃんはどう思った?」
春香が問いかけてくる。
悪道が最後に私に向けて言った言葉。
『イリス様をこの世で一番愛しているのは俺なんだからな!!』
思いだすと、また顔が熱くなってきた。
組織にいた頃は毎日の様に言われていた言葉だ。でも、意識するだけでそどうして、こんなにも温かい気持ちになるんだろう。暫く言われないだけで、どうして不安になるんだろう。
「……う、嬉しかった」
「「キャー!!」」
私の返事を聞いた春香と秋穂がキャッキャと色めき立つ。
そう。嬉しかった。
私は、悪道にまだ愛されているという言葉を聞いて嬉しいと思った。悪道がイヴィルダークに残って、毎日の様に隣にいた存在が突然いなくなって、私は不安になっていた。
悪道が私を忘れてしまうんじゃないか。もう、私のことは好きじゃないんじゃないかって。
でも、それは杞憂だった。あのバカは、まだ私を好きでいてくれている。私を愛していると、変わることのない真っすぐな目で言ってくれる。
だからこそ、やっぱり私は悪道を取り戻したい。イヴィルダークじゃなくて、私の隣にいて欲しいと思う。
け、結婚とか、子供とかに関してはまだ分からないけど、でも、悪道に傍にいて欲しいという思いだけは変わらない。
「……頑張ろう」
「見て見て! あきちゃん、イリスちゃん凄く可愛い!」
「私知ってるよ! あれはね、メスの顔って言うんだって! お兄ちゃんが言ってた!」
ある特定の人に、好きだとか愛していると言われると、顔が熱くなったり、胸が苦しくなる。
今までに感じたことのない、不思議な感覚。でも、どこか心地いい。
この感情が恋なら、私は悪道のことが――。
ありがとうございました!
これは完全に自分のミスなのですが、こちらの都合で第六話に出てきた女の子の名前を花音から春香に訂正きてます!
姉:愛乃花音 妹:愛乃春香 です。よろしくお願いします。
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