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マッサージ

投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません!

「タッコン、今日からここがあなたの部屋よ」


 イリスさんと食堂で食事を終えた後、イリスさんに連れられてやってきたのは普段イリスさんが寝ているという部屋だった。


「私は、あそこのベッドで寝るから、あなたはこっちの布団を使って」


 イリスさんは部屋の隅にある布団を指差す。

 イリスさんはベッド、俺は布団、しかも同じ部屋……。

 こ、これって……同居!?


『美少女と同居! ヒャッハー!!』


 脳内で歓喜するタコを他所に、俺の心臓の鼓動はどんどん早くなっていた。

 イリスさんは痴女である。だが、その顔は紛れもない美少女、おまけにスタイル抜群ときている。

 いくら痴女でも、そんな人と一緒にいて緊張しないはずがない。


 いや、俺の心にはいつも星川がいる。惑わされるな。俺の好きな人は星川だ。


『へへ……。ね、ねえ、折角美少女と同じ部屋で二人きりなんだ。やってもいいよね? ねえ?』


 ま、待て!

 落ち着くんだ! 俺には星川がいる。それに、イリスさんはあくまで俺たちを子ども扱いしているだけ!

 変な行動をするんじゃない!


『子供だったらさあ! 別にママの身体に触れても問題ないよねぇええ!!』


「きゃっ……タ、タッコン!?」


 タコの言葉が脳内に響くと共に、俺の触手がイリスさんに襲い掛かる。

 突然触手に四肢を掴まれたイリスさんは可愛らしい悲鳴を上げて、俺の方を見る。


「タッコン……? もしかして甘えたいのかしら?」


 イリスさんの言葉に俺の首が縦にぶんぶんと動く。

 完全に、タコの欲望が俺の身体を支配していた。


「そうなの? もう、仕方ないわね」


 イリスさんは穏やかな笑みを浮かべて、俺の突発的な行動を許そうとしていた。

 その一言を引き金に、俺の身体は更に触手をイリスさんの身体に這わせていく。


 タコ野郎! それ以上はダメだ!!


『へへへ……喉が渇いてる時にさ、目の前に清流が流れてたら、突っ込まないわけないよね!』




***



 イリスはタッコンと触れ合うだけのつもりだった。

 甘える子どもをあやすように、優しくタッコンの身体を抱き寄せ、頭を撫でる。そうすれば、タッコンは満足するだろう。

 そう考えていた。


 だが、タッコンの触手はうねうねと気持ちの悪い動きでイリスの身体をはい回り、優しくイリスの身体を撫で、揉んでいく。


「あっ……だ、だめ! タ、タッコン……そこはっ!?」


 タッコンの行動がおかしいことに気付き、イリスが止めようとするが時すでに遅し。

 走り出した暴走列車にブレーキは搭載されていない。


「んっ! いや、だめっ! それ以上は、本当にいけな――あっ」


 瞬間、イリスの全身が跳ねる。


(な、なにこれ……? 全身の力がぬけていくような……だ、ダメよ。私はこの子の保護者なんだから、し、しっかりしないと……!)


 意識を強く保とうとするイリスの身体を触手が更にもみほぐしていく。

 肩、腰、太もも、二の腕、首回り。


「はうっ……はぁ、はぁ……だめぇ……」


 イリスの声が徐々に弱弱しく、艶めいたものになっていく。


 イリスという少女は、ここ数日休むことなく活動していた。特に、ラブリーエンジェルという強敵が現れるようになってからの仕事量はまだ十代の少女が背負うにはあまりに多すぎた。

 更に、そんな彼女に追い打ちをかけるように、自分のしていることが本当に正しいのか、という悩みが彼女を襲う。

 故に、肉体的にも精神的にも彼女の身体は疲れ切っていた。


 タッコンの触手たちは、そんなイリスの肉体の疲労を瞬時に察知し、疲労の溜まっている部位を集中的に優しく揉みほぐす。

 更に、リラックス効果の高い粘液を触手から分泌し、ネットリとイリスの身体に塗りたくっていく。


「ひゃあ! な、なにこのぬるぬる……」


 肌から伝わるヌルヌルした感触にイリスが声を上げる。だが、直ぐに粘液から放たれるアロマのような香りに誘われて、再び目尻をトロンと下げる。


「マッサージ……」


 ポツリとタッコンが言葉を漏らす。

 その一言で、イリスの脳裏に存在しない記憶が流れ込む。


『あら、タッコンどうしたの?』

『あのね! ママいつも頑張ってるから、僕が肩揉んであげるの!』

『本当? それじゃ、お願いしようかしら』

『うんー! うんしょ、よいしょ……ママ、きもちいい?』

『ええ、最高よ』


(そうね……。あの頃はまだ力が弱かったのよね。それが、いつの間にかこんなにマッサージが上手くなっちゃって)


 イリスの視線の先、そこには立派に大きくなり、緑色に光る目をイリスに向けるタッコンの姿があった。その目にいやらしさなどは無く、ただただイリスを気持ちよくしてあげたいという純粋な善意が宿っているとイリスは感じた。

 実際は、いやらしい気持ちが八割だが、我が子が自分のためにマッサージしてくれると思っているイリスには、そんなこと分かるはずなどなかった。


 愛する我が子が自分のためにマッサージをしてくれる。それを拒否することなど誰が出来ようか。

 イリスは、一瞬でもタッコンの行為を止めようとした自分を恥じた。そして、覚悟を決めた。


「んっ……タッコン、おねがい……もっとやって?」


 タッコンの目が見開かれる。

 それから、更に力強く、優しくイリスの身体を触手が撫でまわし、揉みこんでいく。

 絶え間なくイリスを襲う、未知の快感。


「あっ――」


 そして、その快感はイリスを昇天させた。




***



『はあ……はあ……。最高だった』


 脳内には満足気な声を上げるタコ。

 目の前には、気持ちよさそうに寝息を立てる粘液まみれの美少女。

 そして、その美少女を見下ろす触手の化け物。


 エロ漫画じゃねーか!!


『なっ!? し、失礼な! 女の子を気持ちよくさせるさっきの神聖な行為のどこにエロがあったんだ!』


 全部だよ! このエロタコが!


『なんだと!? 言っておくが、僕はこの美少女にマッサージをしただけだ。それをエロいと思う君の方こそ真のエロではないのかい!? 自分のエロさを人のせいにしないでくれ!』


 ぐっ……!


 タコの言葉に一理あると思ってしまう自分がいた。悔しい……。


『君のような人間が触手を見ただけでエロいと言うんだ。本当にエロいのはどっちだって話だよ。反省しなよ』


 ……はい。


『分かればいいのさ。それにしても、見なよ。彼女の幸せそうな表情』


 タコの言う通り、ベッドの上に寝転がるイリスさんは幸せそうな顔で眠りについていた。

 まあ、途中からこの人抵抗してなかったしな。触手を受け入れ始めた時はびっくりした。

 やはり痴女だったか……。


『これだよ、これ。僕はこれを目指していたんだ。さて、それじゃ次へ行こうか』


 つ、次?


『ああ、そうさ。僕が見た限り、この組織には随分と疲れやストレスを抱えている人が多い。そんな人々の肉体も心も揉みほぐし、心の底から触手に屈服させる。それが僕らの目的だったじゃないか』


 そういや、そんなことを言っていたような気もするな。


『そうだよ。ほら、早く行くよ。この組織の人全員が触手に屈服すればかなりの功績だ!』


 そ、そうか。

 何か悪かったな、エロいとか言って。お前は、男とか女とか関係なく、お前の目的のためにマッサージしてただけだったんだな。


『分かってくれたならいいさ。それじゃ、外へ行こう』


 タコの言葉に従い、部屋を後にする。

 そして、廊下をぺたぺたと歩いていると、階段を見つけた。その階段は地下へと続いており、見るからに怪しかった。


『……行ってみよう』


 まじで? 止めておいた方がいいんじゃないか?


『いや、行く。絶対に行く!!』


 理由は分からないが、タコは強く自分の意志を口にする。

 そこまで言われれば、俺に断る理由は無かった。


 そのまま、階段を降りて地下に足を踏み入れる。

 少し肌寒さを感じる地下は、不気味なほど人の気配が無く、また暗かった。


 おいおい。こんなところに人なんていないって。


『いや、いる。あっちだ!』


 タコが肉体の支配権を奪い、強引に身体を動かし始める。

 必死なタコの行動を不審に思いつつ、タコの意思に従って動く。そして、タコは地下にある牢屋の前で足を止めた。


「あら? 誰かいるのかしら?」


 牢屋の中から声が聞こえた。

 大人びた美しい女性の声だった。


 誰かいるのだろうか。

 暗くて、姿が見えない。


『僕に任せてくれ! オクトパス・アイ!! 説明しよう! オクトパス・アイとは、暗闇の中だろうと鮮明にものを見ることが出来る便利な目なのだ!』


 やけにテンションの高いタコの声が脳内に響いたかと思えば、視界が徐々にはっきりしてくる。


 そこには、着物のような服を着て妖艶な笑みを浮かべる狐耳と尻尾を生やした美女がいた。


『ひゃっほう! ケモミミ美女だー!! やっぱり、僕の直感に狂いは無かった!! ふへへ……早くその耳と尻尾をもふもふして粘液まみれにしてあげたいよ!!』


 嘘つき!!

 やっぱりエロ目的じゃないか!!

これからも自由に書かせていただくので、こんな展開があるかもしれませんが、ご了承いただけると嬉しく思います。

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