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ドキドキワクワクの転入初日!②

ブックマーク、評価、感想をくださった方々本当にありがとうございます!

 昼休み、転校生である俺にたくさんのクラスメイトが近寄ってくる……なんてことはなかった。自己紹介に失敗した敗者に待つ末路はボッチ飯。

 厳しい現実に絶望していると、俺の方に星川が近寄ってくる。


「あーっくん! さっきの自己紹介最高だったよ~。おかげで朝から笑いこらえるので必死だったよ!」


「そう言ってもらえると助かる。でも、もう自己紹介のことは言わないでくれ」


 大失敗だった俺の自己紹介を笑ってくれたのは星川くらいだ。だが、これ以上傷をえぐるのは勘弁してほしかった。いや、まじで。余裕で致命傷だから。


「あ~。まあ、確かにあの空気は地獄だったもんね。ねね! ところでさ、良かったら昼ご飯一緒に食べない?」


 そう言った星川の右手には弁当があった。特に断る理由はない。寧ろ、初日のうちに出来るだけ話せる人は増やしておきたいから、星川の申し出は俺にとってありがたいものだ。


「こっちこそ、是非頼む」


「じゃあ、決まり! こっち来て!」


 星川に連れていかれた先には何とイリス様と、もう一人桃色の髪の女子がいた。


「かのっち! イリちゃん! あっくんも一緒に食べてもいい?」


「うん。私は別にいいよ」

「私も構わないわ」


 どうやらイリス様もかのっちという女の子も俺を受け入れてくれるようだ。ありがたい。

 星川のおかげで意図せずしてイリス様に近づくことが出来た。これは星川には感謝してもし足りないぜ!


「あ! あっくんはまだ知らないよね。こっちの髪が桃色の子がかのっち! それで、こっちの銀髪の子がイリちゃんだよ!」


「えっと、愛乃花音(あいの かのん)って言います。これからよろしくね!」


「白銀イリスよ」


 星川の紹介に続いて、愛乃さんとイリス様が自己紹介した。イリス様の苗字、白銀だったんだ。知らなかった。


 愛乃さんは見る人を幸せにするような笑顔が素敵な可愛い子だった。イリス様の可愛さと美しさは最早、言うまでもないがイリス様は俺には興味無さげだった。


「二人とも私の親友で、私と将来アイドルユニット組む予定だからよろしくね!!」


 星川はそう言うと二人の間に立って、二人と肩を組む。


 アイドルユニット!? イリス様がアイドル……素晴らしい! ⅭDは玄関に立てかける用と、持ち運ぶ用と、布教用と、保存用と、お風呂にも一つ欲しいし、枕元にも欲しい。まあ、とにかくたくさん買えばいいか。


「明里。私はアイドルにはならないって言ってるでしょ」

「あはは。私もアイドルはちょっとね」


 イリス様のアイドル姿に胸躍ったが、どうやらイリス様も愛乃さんもそこまで乗り気じゃないようだ。


「え~! 何でよ! 二人とも可愛いから勿体ないじゃん!!」


 星川の言葉には全面的に同意するが、イリス様本人が拒否するなら諦めるしかないだろう。


「まあ、いっか。 説得はまたすればいいしね~。それじゃあ、次はあっくんの自己紹介です! どうぞ!」


 そう言うと、星川は俺の方にどうぞどうぞと手を向けていた。


「えっと、善道悪津です。まあ、そのよろしく」


 俺は自己紹介が下手だということを今日知ったので、無難な内容に留めておく。だが、星川はそれに不満げだった。


「えー! どうせだし趣味とか好きなものとかも教えてよー!」


「趣味はイリ――」


 危ねえ。こんなところで「趣味はイリス様の観察です☆」何て言ったら確実にストーカー扱いされてた。


「いり?」


「ああ。いりこで出汁を取ることが趣味なんだよ」


「え!? いりこって何?」


 まさかの星川の反応に、口を開いたのは愛乃さんだった。


「あのね、明里ちゃん。いりこは煮干しのことだよ。西日本だといりこっていうみたい」


「へ~。かのっち、よくそんなこと知ってるね」


 星川は感心したようにそう言った。


「九州の方に親戚の人がいるから、たまたま知ってたんだよ」


 星川の言葉に愛乃ははにかみながらそう返した。ちなみにここまでのやり取りをイリス様は静かに見ているだけである。

 超美しい。


「てか! あっくんって西日本出身なんだ! それに料理するの?」


 イリス様をチラ見していると、星川が目を輝かせながら聞いてきた。


「まあな。ちなみにこのパンも俺の手作りだぞ」


 俺の手にあるパンを星川に見せる。そのパンはがっつり未開封の袋に包まれていた。


「え!? 本当に? めっちゃ凄くない!」


 目の輝きがより強くなる星川。もう分かった。こいつはバカだ。


「はあ……。明里、ちゃんと見なさいよ。彼の持ってるパン。どう見ても買ったものでしょ」


 イリス様に指摘されてから星川が改めて俺の手にあるパンを見る。ついでにこのパンを買った時のレシートも見せてやる。


「騙したなあ! もうこのパンは私が食べてやる!!」


 怒った星川が俺のパンを分捕った。


「お、おい! それは返せよ!」


「返してほしかったら。それ相応の態度があるんじゃない?」


 挑発してくる星川。だが、パンがあっちの手にある以上、俺は無力だった。


「世界一のアイドルになる予定の星川様。どうかパンを返してください!」


「え~。どうしよっかな~。明里って呼んでくれたら返してあげよっかな~」


 ニヤニヤと俺を見てくる星川。ま、まずい! 朝のやり取りがあってからのこれでは、俺はチョロい男だと思われてしまう。それは嫌だ!


 だが、そこでイリス様が星川の頭をペンで軽く叩いた。


「あいたっ! も~。イリちゃん何するの!」


「お昼の時間もう残り少ないからそろそろ弁当食べなさい」


 時計を見ると、昼休みは残り十分になっていた。


「やば! こんなことしてる場合じゃないじゃん! 早くお弁当食べなきゃ!」


 そう言うと星川は俺にパンを返して大急ぎで弁当を食べだした。


 何か知らんがイリス様が助けてくれた。やはりイリス様は女神か。イリス様に祈りを捧げてから俺はパンを食べ始めるのであった。


***


 そんなこんなで過ごしていくうちに学校の授業が全て終わった。授業は殆ど理解できなかったが、ノートだけは取っておいた。


 家に帰ってから勉強をしておかなくてはいけない。学力を高めることで、学校になれていないイリス様に勉強を教えてあげることが出来るかもしれない。やらない理由がないぜ!


「今日の連絡事項は特になしだ。ああ、誰か転校生の善道に学校を紹介してやってくれ。それじゃ、さようなら」


 SHRの締めを担任の先生がして、クラスメイトの多くが鞄を持ち教室を後にする。

 まあ、担任の先生が言ったからといって、学校紹介してくれる物好きな人なんていないだろう。

 そう思ったが、いた。


「あっくん! 良かったら私が学校紹介してあげようか?」


 星川は俺の席にやって来てそう言った。正直なところ、星川としか喋っていない気がするから、他のクラスメイトと喋りたいところではある。だが、現状頼れる相手は星川しかいない。ここは、星川の善意をありがたく受け取らせてもらおう。


 そんなことを思っていると、星川と俺の間に三人の男子が姿を現した。


「いやいや星川さん! 善道は俺たちが学校を案内するよ!」

「星川さんたちは学園祭の準備とかあるんでしょ?」

「っしょ! 俺らに任せるっしょ!」


「本当? なら、任せてもいいかな?」


 星川の言葉に三人は全力で首を縦に振っていた。


「じゃあ、お願いね!」


 そう言うと星川は俺たちに手を振って教室から出て行った。イリス様と愛乃さんと供に。


「えっと……。じゃあ、案内よろしくお願いします」


 案内を申し出てくれた三人に頭を下げる。すると、三人は不自然なほどニコニコとした表情で握手を求めてきた。


「ああ。よろしく。俺は佐藤太郎だ」

「よろしく。僕は鈴木次郎っていうんだ」

「よろしくっしょ。俺は田中三郎っしょ」


 太郎、次郎、三郎か。分かりやすい名前でありがたい。


「それじゃ、早速行くか。付いてきてくれ」


 太郎の言葉に従い、俺は三人と供に教室を出た。


「な、なあ……。このフォーメーションは何なんだ?」


 教室を出てすぐに、トライアングルの形で俺を囲うように歩く三人に疑問を投げかける。


「ああ。実は僕たちは将来SPになりたくてね。これはその練習なんだよ。気にしないで」


 ニコニコしながらそう言う次郎にうさん臭さを感じたが、これから友達になるかもしれない相手だったから追及するのはやめた。


 体育館、音楽室、保健室など主要な学校の教室や施設を順番に巡っていく。その間、ずっと三人の顔は笑顔だった。

 学校の案内は殆ど終わり、残すところはいよいよあと一つの教室となった。

 そこは学校の地下二階にある教室とのことだった。エレベーターに乗り、下に降りる。


 地下二階まであるとは凄い学校だなぁ。それにしても、この三人は日頃からこんなに笑顔で生活しているのだろうか?


 そんなことを考えていると、地下二階に到着した。


「さ、行こうか。といっても地下二階には教室が一つしかないんだ。ほら、入ってくれ」


 太郎が笑顔でそう言った。だが、俺は太郎の笑顔に違和感を感じた。


「……な、なあ。何か企んでないか?」


 冷静に考えてみれば不自然だった。この放課後に突然、案内をすると言ってくる。まあ、それだけなら親切だという話で終わりだ。だが、あまりにも先ほどから三人の笑顔が作られたもの過ぎた。


「ちっ」


 俺の言葉に舌打ちをしたのは次郎だった。


「あーあ。ばれちゃったっしょ。ま、ここまで来ればもう終わりっしょ」


 三郎がそう言った次の瞬間、太郎が俺の首を絞める。


「ぐあっ……かはっ」


「お前は悪くない。いや、無知が罪だとするならばお前は悪いと言うべきか。まあ、全てはこの後明らかになる」


「「「我々のWOTE裁判でな」」」


 そして、俺の意識は静かに闇に沈んでいった。


ありがとうございました!

モチベーションに繋がりますので、よろしければブックマーク、評価、感想お願いします。

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