旅行へ行こう! 初日編②
めちゃくちゃ遅くなってすいません!
新作とか書きたくて、色々と悩んでる間にこっちの更新遅くなってました。
とりあえず、よろしくお願いします!
八幡坂。
それは、北海道函館市にある有名な観光地だ。海から真っすぐに続く並木道であるため、坂の上から見下ろす景色はまさに絶景となっている。
この道を恋人同士二人手を繋いで、並んで歩く。
それは正にロマンチックの塊と言えるだろう。
「という訳で、手を繋ぎませんか?」
「はあ……。その説明が無ければ、もう少しロマンチックだったと思うんだけど?」
手を差し出すと、イリス様はため息を一つついてそう言った。
た、確かに……!
これは、完全に俺のミス……!!
「くっ! すいません! もう一回、やり直してもいいですか?」
「いや、いいわよ。ほら、これでいいでしょ?」
そう言うと、イリス様は俺の手を握り、指の間に指を入れてきた。
ひえっ!
「イ、イリス様……。こ、これは恋人繋ぎというやつでは……?」
「恋人なんだから、別にいいじゃない。それとも、嫌なのかしら?」
「いえ! 寧ろご褒美です! ありがとうございます!」
「そ。なら、行きましょう」
そう言うと、イリス様は前を向いて歩き出した。
その態度に、少しだけ心配になる。
俺は、こんなにもドキドキしているというのにイリス様は平然としていてズルい……。
そう思いながらイリスさんの横顔を見ると、イリス様の頬がほんの少し赤くなっていることに気付いた。
……ん?
これは、もしかしてイリス様も照れてるのか?
「何よ。そんなにジロジロ見て」
イリス様が俺の方を見てくる。
これは、試してみるか。
「イリス様、好きです」
「は、はあ!? き、急に何言ってるのよ」
俺がそう言うとイリス様は顔を更にカアッと赤く染める。
ふむふむ。どうやら、イリス様もちゃんと照れているらしい。
いやー良かった良かった。
どうやら、ドキドキしてるのは俺だけじゃないみたいだ。
「イリス様! 楽しい旅行にしましょうね!」
「な、何よ急に……。まあ、でもそうね」
振り返れば、青い海に続く綺麗な並木道が見えた。
これまで歩いて来た道のりは我ながら中々に良いものだったと思う。
だからこそ、これからの道のりも楽しいものになる様に、俺は一歩を踏み出す。
***
五稜郭、赤レンガ倉庫などをじっくりと周ってから、夕方頃になり、旅館のチェックインを済ます。
少し早めの夕ご飯を、街の中でイリス様と楽しんでから、俺たちは今日最後の観光スポットである函館山に来ていた。
世界三大夜景の一つとも言われるほど、この函館山からの夜景は絶景らしい。
この夜景だけは、イリス様と是非とも見たいと思っていた。
「人、多いですね」
「そうね。まあ、有名な夜景みたいだし仕方ないわよね」
イリス様に右手を差し出す。
「手、繋ぎましょう」
「ええ」
イリス様は微笑みながら頷く。
そして、俺の手に左手を重ねた。
ロープウェイのチケットを大人二人分購入し、ロープウェイに乗る。
満員のロープウェイに乗って、数分。
目的地である、函館山の展望台に辿り着いた。
「行きますか」
「そうね」
手を繋いだまま、二人で並んで夜景が見えるところに移動する。そして丁度良い場所で足を止めて、夜景を眺める。
今日の天気は快晴で、目の前に広がる光景は、正しく世界三大夜景に相応しく綺麗なものだった。
「綺麗ですね」
「ええ、本当に」
そう言うイリス様の声は何処か震えているように感じた。
そう言えば、ここは山だ。それに、時刻は夜。気温は昼に比べて相当低くなっていると見ていい。
俺は、静かに上着を脱いで、イリス様の肩にかける。
「え……?」
そして、何も言わずに、イリス様の肩に手をかけて俺の方に身体を寄せる。
抱きしめたい。
震えてるイリス様を見た時、そう思った。
でも、両手で抱きしめたらきっと景色が見れないから、片手で身体を寄せるだけ。
最初の方こそ、身体を強張らせていたイリス様だったが、徐々に俺の方に身体を預け、暫くの間、そうして二人で夜景を眺めていた。
チラリと、左下に視線を下げると、そこには穏やかね表情で夜景を眺めるイリス様の姿があった。
どうしようもなく人を愛おしいと感じるときは、突然やって来る。
俺は、それが今だった。
「イリス。愛してる」
***<side イリス>***
ずっと、イリス様だった。
ずっと、敬語だった。
それに慣れていたから、特に訂正する気も無かった。
でも、少しだけ気にはなる。
名字だけど、明里には呼び捨てで、仲良さそうにしてるのに、私には敬語で様付け。
善喜が私を大事にしてくれていることはよく分かる。
でも、本当は――
――私の名前を呼び捨てで呼んで欲しい。
――少し強引にでも、私を引っ張って欲しい。
目の前に広がる夜景を前にして、善喜は唐突に私の肩に上着をかける。
バカだけど、周りが見えてる彼らしい行動。
ありがとう。
その言葉を紡ごうとした時には、私の身体は彼の胸元に寄せられていた。
私が彼に抱き寄せられたんだと気付いたのは、それから数秒後のことだった。
思わず顔を上げるけど、善喜は平然な顔で夜景を眺めてる。
ドキドキと高鳴る心臓を必死に抑えながら、私も夜景を眺める。
でも、ちっとも心は落ち着かない。さっきまで少し肌寒いくらいだったのに、今は顔が少し熱い。
暫くして、漸くこの状況に慣れてきたと思った時だった。
「イリス。愛してる」
ズルい。
何時だって、このバカは私の心をかき乱す。
私のお願いを叶えてくれる。
どうしようもないくらい、私を幸せな気持ちにしてくれる。
「私も愛してるわ。きっと、世界で一番」
花音の助言。
今日に限って、私の気持ちを高ぶらせるバカの行動。
美しい夜景。
溢れ出す思いを止めることなんて出来ずに、夜がやって来る。
***<side end>***
これからも不定期になると思うんですけど、更新は続けるつもりなので、暇な時にでも見てくれると嬉しいです。