最終話 好きな人のために悪の組織に入った結果
最終話です!
好きな人の為ならどこまでのことが出来るのだろう?
よく、「君の為なら死ねる」だとか、「僕の全てを捨ててでも君を守る」だなんてことを聞くが、それは本心からの言葉だろうか?
人間というものは結局のところ自分が一番大事で、自分の命や人生を捨ててまで他人のために行動することなどできない。
それが、俺――悪道善喜の考えである。
あれ……?
そうだったっけ? いや、どっちかと言うと俺は好きな人のために命を賭けられる人間な気がする……。いや、気のせいか?
そんなことを考えながら、ベッドの上に寝転がる。
朝目覚めたら、病院のベッドの上だった。
これには、流石に驚いた。
両親の手紙を読んだ次の日に家を出て、悪の組織に出くわしたところまでは覚えているのだが、それから先の記憶が曖昧だ。
もしかして、これが噂の記憶喪失というやつだろうか?
だとしたら、これから俺の失った記憶を取り戻すための大冒険が幕を開けるのかもしれないな。
きっと、そろそろ俺の新たな物語におけるメインヒロインがこの病室にやって来て――。
ガラガラガラ。
冗談のつもりで考えていたら、本当に病室に誰かが入ってきた。
身体を起こし、来訪者の姿を見て、俺は言葉を失う。
「……あ、ああ!」
「お邪魔するわね」
美しい銀色の髪。
不安そうに揺れる瞳。透き通るような、綺麗な声。
その顔に、スタイルに、声に、仕草に――全てに惚れた。
「好きだああああああ!!!」
「……ふふっ」
俺の一世一代の大告白を受けたイリス様は、一瞬驚いた顔を浮かべたが、直ぐにおかしそうに、そして、嬉しそうに微笑む。
……ん? イリス様? 何で俺はこの人の名前が思い浮かんだんだ?
そして、イリス様は俺の方にゆっくりと歩み寄ると――。
「んっ」
「んんっ!?」
――イリス様の美貌に見惚れている俺の唇に口づけした。
「私も好きよ。善喜」
そして、イリス様は頬を赤く染めながら笑顔を浮かべた。
そこで、俺は思いだした。
全てを思いだしたわけじゃないけど、大事なことを確かに思いだした。
――そうだ。
俺は、この人のために悪の組織に入って、この人のために命を賭けるくらい、この人を、イリス様を愛している。
「……イリス様、大好きです。俺と結婚してください!」
「ええ。喜んで」
俺が差し出した手に、イリス様が嬉しそうに手を重ねる。
俺が記憶を無くした間、何があったのかはまだ全てを思いだせない。
でも、今イリス様がこうして笑顔でいられるということは、俺はちゃんとイリス様が笑顔でいられるハッピーエンドのために戦い続けたんだろう。
それが分かれば、十分だ。
横を見ると、笑顔が可愛くて、美しい最高の彼女がいる。
きっと、これ以上の幸せは無い。
だから、この笑顔が絶えることの無いように、俺はこれからもイリス様を愛していく。
温かな日差しが、俺とイリス様を祝福するように照らしてくれていた。
ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます!
感想を送ってくださった方々、あの感想たちが無ければ完結していなかったかもしれない、と思うくらいには僕を支えてくれていました! 本当にありがとうございます!
この話で物語としては完結ですが、個人的にあと1話ほど、あり得るかもしれない未来の話の一つを書きたいなと考えています。
多分、この土日のどちらかで投稿できると思うので、よろしければそちらにもご付き合いしていただけると嬉しく思います。
それが終わった後も、気が向いたら番外編のような形で物語を書くかもしれません。
最後に改めて感謝を伝えさせていただきます。
今まで、本当にありがとうございました!!