表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/14

連絡先とプロゲーマー

憂鬱な午後の授業も終わりを迎える。

解放感が凄い、刑務所からシャバに出る時はこんな感覚なのだろうか。

知ろうともしないし、知りたくもないけど。

僕はある目的を果たすために席を立ち彼女のもとに向かう。


「霧江さん、ちょっといい?」


彼女はきょとんとした顔で「何?」と言った。


「実は朝の事だけど……」


「へ? あ、朝!?」


何かを思い出したように焦り始める霧江さん、やっぱり変だ。

そんな事を考えていると霧江さんはバックからスマホを取り出し。両手で持つ。

そう言えば、朝もスマホをこんな風に持っていた。お昼の時もちらちらと気にしていたようだったし。

そうか! わかったぞ! 霧江さんの原因はスマホに関係する事かもしれない。

僕は必死に頭をフル回転させる。多分授業中よりも頭を使ったけど、何も思い浮かんでこない。

こういう時はどうすれば良いのか僕は知っている。それは――


「ごめん! 僕何も心当たりが無くて……。霧江さんに何かしちゃったのなら、教えてくれない?」


「烏間君が私に? 何かしちゃったの?」


「え、違うの?」


「逆になんでそう思ったの?」


その時僕のスマホの着信が鳴る。達也からだ。


〈今日の朝相談してきた答え、アレ嘘な。ちょっとからかっただけだよw  3:58〉 


「……」


朝の朝の相談? 僕が霧江さんになんかしちゃったってやつ?

達也の方を見ると、スマホを指さして、何かジェスチャーを送ってくる。

旗から見ていると正直、面白い動きだった。大きく口を開けて伝えようとしてる。

全く分からないけど。

達也は僕が理解してない事に気づいたのか、ため息を一つして、LINEの画面を見せてくる。

(LINE? なんでそんなもの……あ! 霧江さんは僕の連絡先を聞きたかったのか!)


「霧江さん、もしかして朝から僕に連絡先を聞こうとしてくれた?」


「……」


無言で首だけを縦に振った。霧江さんの首は白くてとても華奢だ。

僕はスマホを霧江さんの前に出して振る。彼女もスマホを振ると連絡先を交換する事が出来た。


「……鈍感」


声が小さすぎて聞き取れなかった。


「今、なんて?」


「何でもない。連絡先ありがと!」


彼女はそれだけ言うと、カバンを持って教室を出て行った。

急ぐ用事でもあるのだろうか。

耳がいつもより赤くなっていた気がするのは気のせいだろう。


「翔太……お前マジか」


「なんだよ、てか、お前朝の相談嘘教えやがって!」


「あれは騙される方が悪いと俺は思うぞ」


「うっ……」


確かに彼女は朝から僕にずっとアピールしていた。

それに気づけなかった僕が悪いのは明白だ。……いや、待てよ。


「なんで霧江さんは普通に聞いてこなかったんだ?」


「はぁ!? お前ってやつは……」


達也が呆れたような目で見てくる。


「ラノベの主人公と良い勝負だと思うぞ、俺は」


「ラノベの主人公と脇役の僕のどこが良い勝負してるんだよ」


達也が大きくため息を吐く。


「もう、帰るぞ……」


~~~~~~~~~~~~


僕は達也と駅に向かって歩いていた。

学校の登下校で通る、商店街へ入ったところだ。

もう空も若干暗くなり始めた時間帯の商店街では、昔ながらのコロッケの良い匂いが食欲をそそる。

今日の夕飯は何かな~と、ベタなことを考えていると。


「そういえば翔太はいつも家で何してるんだ? 趣味とか今はなさそうだしな」


「なんだろうな、強いて言うなら、テレビをだらだら見るくらいかな。

あ、でも最近は部屋にあった[バレット・アンド・ライフル]ってゲームもするぞ」


そう、実は最近僕は、あるゲームにハマっていた。その名も[バレット・アンド・ライフル]FPSのゲーム、いわゆる一人称アクションのゲームで銃ゲーだ。

このゲームの基本的なルールとしては簡単で、チームで分かれて、キル数の合計が多い方が勝ち。

いたってシンプルなルールだけど連携やグラッフィクが綺麗で中々人気らしい。


「あー、あのゲーム面白いよな。良く一緒にやってたよな。今度久しぶりにやるか!」


「良いけど、俺下手くそだぞ?」


「んなもん、前からだから気にするなって」


「前から下手で悪かったな……」


「まあまあ、そう卑下するなよ、そんな君に朗報がある。」


「なんだ?」


「聞いた話だけどな。学校に[バレット・アンド・ライフル]のプロゲーマーがいるらしいぞ。あんな難しいゲームなのにすげえよなー」


「マジか? プロは凄いな」


「だろ! そんなわけでその人にゲームを教えてもらえれば、翔太でも絶対上手くなるぞ!」


達也は自信満々に言っているけど、現実的に考えてムリに決まっている。プロは僕らの予想以上に忙しいはずだ。


「そもそもの話、そのプロゲーマーの人が誰だか目星ついてるか?」


「そりゃあ……知らないな」


案の定知らないみたいだ。しかも本当にいるのかさえ疑わしい。

ただ、本当にいるのなら興味はある。


「まあ、でも僕も教わる云々は置いといても、純粋にプロがどういうものなのか興味があるから調べてみるよ」


「おう! 俺もなんか分かったら教えてやるよ。有料で」


「金取るのかよ……」


その後もどうでもいい話をして、家に帰る。

小、中、高と同じ学校なだけあって、家も近い。

今度鈴も連れて冷やかしに行くとするか。


家に帰り、ふろに入り、夕食を済ますと、僕はベッドに横たわりスマホを見る。


「霧江さんの連絡先か……まあ、使われることはほぼないだろうな……」


今日一日色々あったからか、僕はすぐに意識を落としてしまい泥のように眠った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ