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挙動不審な霧江さん

なんでだ!?


今、僕の目の前にはスマホを両手で抱えている霧江さんがいる。

じっと見つめられて何だか歯がゆい。

僕なんかした?

入学式から一日が経った。

入学式の日の朝以降、霧江さんとは話していなかったので怒られる理由はない、はずだ。

だから、じっと見られていることをさっぱり理解できない。

ちょっと照れる……霧江さんみたいな美少女に見つめられたら、照れないやつなんかいないと断言できるな。


「霧江さん、おはよう。僕に何か話したいことでも?」


沈黙に耐えられなくなった僕は話を切り出す。


「い、嫌、あのね、そ、その、用って程の事でもないけど……」


ほんのりと頬をイチゴのように赤くさせ、もじもじとする彼女は言葉では表せないくらい可愛かった。僕の語彙力がないだけかもしれないけど。


「う、うん。用って、な」


言いかけたところで先生が入ってきて、朝のホームルームの時間に入ってしまった。


「ごめん、やっぱり何でもない!」


彼女はそれだけ言うと、自分の席に戻った。

やっぱり、僕には言いづらい事があるのかもしれない。



「達也、僕今日どこか変?」


「うーん、強いて言うなら、そんな事を聞いてくるお前が変だな!」


「そういう事を聞いてるんじゃない!」


ホームルームが終わった後に僕の唯一の男友達である達也に話す。


「実はさ……」


「なるほど。そりゃ、お前がなんかしちまったな」


妙にニヤニヤして、勘に触る顔だ。

これでイケメンだからなおさらタチが悪いんだよな。

女子が達也の事をイケメンって噂しているのを聞いたことあるし……。羨ましい。


「まー、それよりもお前と霧江さんがそんなに仲が良かった事に驚きだけどな」


「まーね、色々あったから」


霧江さんが僕の記憶に関係している事は話していない。

意外と優しい達也の事だから、僕を思って霧江さんを責めてしまうかもしれない。

霧江さんが優しい事を、僕は知ってる。

だから億が一にも彼女が不当な言われを持たれることを、僕は避けたかった。

達也が彼女の人柄を理解してくれたら言ってもいいかも。


「そんなに霧江さんと仲が良いなら背後に気を付けた方が良いぞ。主に俺からな」


「お前かよ!」


冗談を言い合うと、少し気分が晴れる。

達也は普段ふざけているが、こういう時には頼りになるやつだ。


「もう少し考えてみるよ。ありがとう達也」


達也はなぜか下を向いて、体をプルプル震えさせながら「お、おう」とだけ言う。

なんだ、僕なんか面白い事でも言ったのか?

良く分からなかったが、とりあえず授業を受けるために席に戻った。



疲れたー!!

僕は手を上げて体を伸ばす。やっと昼休みだ!

普通初めての授業は簡単なガイド説明や自己紹介から始まるというのが一般的なはずだけどな……。

流石は進学校。

凄いスピードで授業が進んでいく。特に数学が凄かった。

初日からあんな進むか普通?

その証拠に達也なんて見るからに机に突っ伏して死んでいる。


「翔太君はお昼どうするんですか?」


「これから購買に行って買ってこようと思ってる」


この学校には購買と学食があるが、学食はいつも混んでいるらしい。

だから、基本的には購買かお弁当を持参する人で分かれる。

ちなみに彼女はお弁当派みたいだ。


「私も一緒にご飯食べてもいいですか? もちろんお友達も一緒で大丈夫です」


「うん、良いね。じゃあ呼んでくるよ」


僕は机で死んでいる達也を起こしに行く。


「おーい、達也、飯食うぞ」


「翔太か……。悪いが俺はここで死ぬみたいだ……。俺の屍を越えていけ……」


「達也! 諦めるな‼ お前が死んだら僕は霧江さんと二人でご飯を食べるのか……」

あれ? それはむしろ良いんじゃないか?


ガバッ‼と効果音が付きそうなほどの勢いで達也の顔が上がる。


「霧江さんがいるなら先に言えよ!」


「あれ、死ぬんじゃなかったのか?」


「可愛い女の子は蘇生薬です」


どうやら、可愛い女の子は、世界樹の葉みたいなものらしい。


「霧江さん、こっちは久住 達也変なやつだけど悪いやつじゃないよ」


「誰が変なやつだ!」


「ふふ、二人は本当に仲良いんだね。私は霧江 愛奈よろしく、久住君」


仲良くできそうで良かった。

僕たちは近くの席をくっつけて、達也と霧江さんはお弁当を置く。


「じゃあ、僕は購買に行ってくるから先に食べてて」


二人は初対面だけどコミュ力お化けの達也がいるから平気だろう。


「あ、あのね! 烏間君!」


霧江さんは下を向きながら、恥ずかしそうに口にする。


「も、もし迷惑じゃなかったら、お弁当食べてくれない? つ、作りすぎちゃったの‼」


霧江さんの風呂敷からお弁当が二つ出てくる。やけにでかいとは思ってたけど……。

朝言いたかったのはこの事かな?


「うれしいけど、僕が食べちゃっても平気なの?」


「大丈夫! というか、むしろ……食べて欲しいかも……。 そ、そうだ! まだ何もお礼できてなかったし――ダメ??」


「ううん、じゃあもらおうかな!」


「うん!」


霧江さんがくれたお弁当には、卵焼き、唐揚げ、野菜に可愛らしいタコさんウインナーが入っていた。

どれもおいしそうで、色鮮やかだ。

「それじゃあ、いただきます」


「召し上がれ」


僕は卵焼きを口に入れるとほんのり甘くて、でも甘すぎない完璧な味付けだ。


「すごくおいしいよ‼ 霧江さん」


「本当!? 良かった~、そう言ってもらえて!」


彼女は、顔を柔らかくして笑う。マジで天使だな。


「もし烏間君さえ良かったら、明日も作ってこようか?」


「え! うれしいけど……。霧江さんが迷惑なんじゃ……」


「全然! 一人分も二人分も変わらないしね」


「そういう事なら、お願いしようかな」


「任せて! 期待して待っててね」


「了解!」


「お前いつからラブコメの主人公に……」


達也が何か言ってたけど、聞こえなかった。

多分一人言だから気にせず、そこからは他愛ない話をしながらご飯を食べる。

霧江さんは、スマホをちらちらと気にしているように見えた。

どうしたんだろう。

聞く前に昼休み終了のチャイムが鳴り響き、僕の憂鬱さを一層増させる。


は~、午後の授業面倒くさいな。


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