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球技大会1

「ああ、気乗りがしない……」


今日もいつもと変わらない学校が始まったと思っていたのにまさか学年全体で球技大会があるなんて話聞いてなかったぞ……。


「なんだよ、翔太。そんなに嫌か?」


チャラくてスポーツが出来そうな達也が、僕に分かりきった事を聞いてくる。

なんだ? 嫌味か? くそ!


「普通に嫌だろ、だって運動出来ないし」


そう! 僕は運動が出来ないのだ。一体どうやったら運動が出来るようになるのだろうか。僕的には遺伝九十、努力十だと思う。もちろん僕の偏見だ。


「そうなんだよなー、翔太は昔から運動だけはからっきし駄目だよな。鈴ちゃんは運動神経悪いどころか、むしろ出来るよな」


「ほんとだよ。僕の運動神経全部鈴がとったんだろうな」


「でも、翔太の親、運動神経悪いらしいぜ。前に言ってた」


「じゃあ、元々搾りかすくらいしか無かったものをとれなかった僕は?」


「負け組だな」


「お前慰める気ないだろ!!」


達也は随分と辛辣な事を言う。全く……僕の心境を考えてほしい。


「まー、まー、実は俺もこんなナリしてるけど全く運動が出来なくて、いつもみんなに驚かれるから気持ちが分かるよ……」


達也……お前も僕と同じ悩みの持ち主だったんだな。やっぱり持つべきものは悲しみを共有できる親友だ。


「達也も悩んでいたのか……。一緒に乗り切るぞ、同士よ……」


「そうだな。じゃあ、グラウンド行くか!」


僕たちは教室を出てグラウンドへと向かった。

グラウンドには既にほかのクラスの生徒もおり、がやがやと賑わっている。

なぜ球技大会で盛り上がる事が出来るのか、運動の出来ない僕には一生理解が出来ないことだ。

その後、校長先生の無駄に長ったらしい話を聞き流しながらどうやって競技を乗り越えるかを考える。

ちなみに僕ら男子が行う競技はサッカーと野球だ。なぜサッカーと野球なのかというと、クラスの男子数がちょうど二十人だからと言う話だ。

全員競技をさせようとする学校、これは新手のイジメではないのか疑問が残るけれど、心の中でどれだけ言っても何も変わらないので、どれだけ目立つに済むかを考える。

僕が出る競技はサッカーらしい。今日まで球技大会があったことを知らなかった僕が何でサッカーに出る事になっているかと言うと、主に原因は達也にある。というかあいつにしかない。

達也は僕の出る競技を勝手に決めていたのだ。なんでも一人で運動ができないのは嫌だという理由らしい。今回ばかりは同感だから許してやった。僕は心が琵琶湖並みに広いからな。

とにかく作戦としては端っこでこぼれたボールでも拾っていれば目立たないと思うので、僕はボール拾いに徹する事を決めた。


校長の話が終わった後、クラスのスポーツガチ勢に全員集められた。試合前にクラス全員で円陣を組むらしい。

そして名前も覚えてない男子が声を荒げる。


「みんな! 俺らが目指すのは~!?」


「「「「「「優勝~」」」」」」


まるでどこかの宗教のようにクラス全員で声を出し結束を固める。僕の本心は『帰りたい!』だけど。


サッカーの試合が始まる。僕らのクラスは二戦後だ。今から胃が痛くなってくる。

他のクラスの試合を眺めていると、予想以上に激しくヒートアップしていた試合で、僕らもこれをするのか……とブルーな気持ちになった。嫌なことは早く終わらしたい。

そんな僕の願いは叶えられ、あっという間に僕らの試合の番になる。

緊張と不安、そして嫌気で苦しめられている試合の直前、ふっと霧江さんと委員長がやってきた。


「烏間君! 頑張ってください! 応援してますよ」


「烏間君? 負けたらどうなるか……分かってるわよね?」


「霧江さん……ありがとう。僕、頑張るよ!」


応援してくれた霧江さんにお礼を言う、委員長は……今の僕に突っ込む気力はないので悪いけど無視する。


「ちょ、ちょっと! なんで無視するのよ! 分かったわよ! 応援すればいんでしょ。頑張って!」


「ありがとう委員長」


「さっさと勝ちなさいよ」


「ふふ、委員長烏間君に頑張って欲しいんだね」


「ちがうわよ、ただの気まぐれよ。ほら見てないでさっさと試合してきなさい」


仲が良く微笑ましい二人を見ていたら怒られてしまった。霧江さんと委員長のためにもちょっとは頑張んないといけないかも。

恥ずかしいとこ……見せられないし……。

そう心に決めた僕は、既にコートで準備をしていた達也に豪語する。


「僕、絶対活躍する」


「そうしてもらわないと困るぜ。お前キーパーだし」


「は?」


おぞましい単語が聞こえた。キーパーなんてコート上に一人で突っ立っているポジション、晒しプレイの公開処刑だ。しかも僕がミスしたら試合に負ける、とにかくやりたくないポジション、ナンバーワン。


「達也は?」


「ミッドフィルダー」


「交換してくれ」


「嫌だ」


イラッとする顔でそう言う達也、分かった。

達也は僕に赤恥をかかせたいんだな。

僕は意地でもボールを止めてやる。達也の予想通りにはさせないぞ。


「見てろよ、達也! 僕は完璧にキーパーをやってやるからな!」


「おう! 期待してるぜ」


爽やかな笑顔を見せられ、僕の心は更にヒートアップした。

そして僕はゴール前の定位置に着く。

やし! やるぞ!


「試合始め!」


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