1話 隕石落下
大幅編集しました。これからもどの話までやるかは未定ですが、新しくしていきたいと思います。話の内容自体は一切変わりません。
それは、突如起こった。いつもそうだ。〝最悪〟は、いつも突然やってくる。あのときもそうだ。華那の容態が突然悪くなり、倒れたときも。
とにかく、今は最悪の状況だ。
蓮斗は暗い空に向かっていう。
「まだ、死にたくねぇよ……。なぁ、華那!」
【そのとき、世界は滅びゆく─────
…………
……
遡ること数分前。
街中の道。人通りの多いこの道に、同じように歩く男がいた。彼の名は煌波 蓮斗。少し彼のことを話すとすれば、たしかに、彼は風景の中の1人として歩いているが、例えば彼は、知性、身体能力、顔。全ておいて差異はあるものの常人よりも突出しており、いささか平凡と呼ぶには相応しくない人間である。彼の天性の才能と地道な努力がもたらした結果だ。
名を宝滝 華那。
蓮斗の幼馴染兼彼女である。
華那は、蓮斗同様、平凡よりも突出した部分があるが、それら全てを覆すほど、平凡とはかけ離れた物がある。
華那の余命は、今からおよそ四ヶ月。
生まれつき病弱であり、心臓に持病を持っている。高校卒業後しばらくして、突然倒れる。急に容態が悪くなったのだ。それから、数度の入退院を繰り返して、数ヶ月前、余命宣告をされた。2人とも薄々気づいていたのだろか、落ち込みはしたが、特別取り乱しすることはなかった。(あぁ、そうか……もう、か……)おおよそこんなふうに考えていたのだろう。
だが、華那はその翌日から、持ち前の明るさと底無しの笑顔で、そんなことは周囲には一切考えさせなかった。特に蓮斗には。
最後まで明るく笑顔で生き抜く。それが華那の決断と覚悟。とはいえ、容態は日に日に悪くなる一方。嫌でも意識させられてしまう。
だからこそ、蓮斗はお見舞いに行く際、決めていることがある。
華那に悲しい表情は決して見せない。笑顔で接する。彼女の覚悟に己も答える。
そして今、毎日の習慣となっているお見舞い。
大学が午前中で終わったので、昼飯を済ませ、そのまま大学へ直行する。
(今日はバイトもないし、夜までいられるなぁ)
そんなことを考えていた、そのとき、
───ゴォォォォォオオ……!
「なんだ!?」
突然の轟音と僅かな揺れ。皆、思わず声を上げる。
(地震か?)
そう思った矢先、
「キャァァァァア!」
1人の女性が叫ぶ。蓮斗、いやその周りのみんなが、彼女の方を咄嗟に振り向く。彼女は、ある一点を見つめ、怯えるようにしていた。蓮斗はその視線を追う。
「ッ…………! なっ……ぁ……!」
絶句する。蓮斗の視線の先、はるか遠くから、炎と煙が上がっていた。他の者も皆、それを見てざわざわとしだす。中にはスマホを取り出す者も。
(爆発? 事故か?)
先程の女性も落ち着きを取り戻す。ただの事故。そのはずだった。だが、
───ゴォォォォオオ!!
「ッ!」
二度目。しかも今度は反対側から轟音と揺れ。しかも先ほどより近く感じる。蓮斗は恐る恐る、ゆっくりと振り返る。
見えるのは、炎と煙。やはり、先ほどと同様の何が起きていた。
一瞬、シーンと静かになって、数人が叫び、尻餅をつく。
当然だ。ここから真反対の場所で、ほぼ同時刻に、同じような爆発らしき何か。つまり、これは単なる事故じゃない。全員がそう確信する。こうなるともう、止まらない。
空が、曇る。
「キ」
───ドゴォォォォオ!
三度目。叫び声が、轟音にかき消される。
今度は音や揺れだけじゃない。風も感じた。蓮斗は咄嗟にその方向を見る。炎と煙が上がっている。そして近い。今までよりもはるかに近い。
「はぁ、はぁ……」
蓮斗の心臓が大きくなる。そして、
───ドゴォォォォン!
「うわっ!」
四度目。先程のよりもさらに近い。あまりの衝撃に、蓮斗は仰向けに倒れる。自然と視線は上を向く。そして気付く。
空に浮かぶ、大量の岩に。いや、浮いてはいない。たしかに落下している。地球へ、落下している。大量の岩が太陽を覆い隠し、空は真っ黒になっている。
隕石。それもただの隕石じゃない。流星群だ。無数の隕石が地上へと降り注いでいる。
大きい物から小さい物まで、大量に落ちてきている。今はもう、降ってきた隕石の数を数えることすらできないほどに、大量に。音、揺れ、風、全てが大きい。
蓮斗は上を向きながら、ゆっくりと立ち上がる。
パニック。街中がパニックだ。錯乱したのかただ叫び声を上げ続ける者、うるさく泣き叫ぶ者、静かに泣き続ける者、目を瞑り祈る者、過呼吸になる者、泣きながら笑う友人達、手を取り合い、抱き合い、キスをする恋人や夫婦、子を抱く母、それを抱きしめる父。様々だ。そんな中で、蓮斗は空を向き、呟く。
「まだ、死にたくねぇよ……。なぁ、華那!」
無情にも、隕石は一気に近づいてくる。蓮斗は目を瞑る。頬を涙が伝う。
(あぁ、死ぬ……どうせなら、華那と一緒が……)
蓮斗は、世界が滅びゆく瞬間をたしかに見た。
…
……
……………
(………………?)
あれから一分は経った。が、一向に落ちてくる気配がない。おかしい。おかしすぎる。普通なら直撃しなくとも、風や衝撃が伝わってくるはずだ。だがまるでない。蓮斗は不思議に思い、ゆっくりと目を開けてみる。
「ッ!」
開けてすぐ、目に映ったのは、今にも落ちてきそうな隕石の大群。蓮斗はすぐさま目を瞑る。そして十数秒。
(…………ぉお落ちてこない!)
また目を開ける。が、やはり隕石。咄嗟に身構える。
が、やはり何もない。蓮斗は視線を上に戻し、隕石を見つめる。
「あっれぇぇ、止まっ……た?」
隕石が止まっている。まるで動かない。
「嘘、だろ……?」
周りを見渡す。よく見れば、他の物も止まっている。一切動かない。生物、物、全て。全てが、目を瞑る前に見た光景と同じ。そういえば、音も聞こえない。あんなにうるさかった衝突音も、恐怖に染まった悲鳴も。蓮斗の発する声以外、何も聞こえない。無動無音の世界。しばらく蓮斗の頭もフリーズする。
「もし、かして……時が止まった……?」
導き出した答えは、あまりに非現実的なものだった。
そして、全てはここから始まった。
─────はずだった】
誤字脱字文句否定愚痴なんでもいいのでよろしくお願いします。
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