「我が家の掘りゴタツが異世界と繋がったみたいだけど、ぬくぬくしたいので無視してます」
砂臥様、こんな感じになりました。
魔窟、なんて呼びたいんですよ。
居候だからお手伝いしなきゃ、いけないんですが。それを阻むのが、今、私が足……いや、胸元までとっぷりと突っ込んで全力で屈してる『コタツ』なんです。
縁有って、お世話になってるお店の片隅に、一段高くなるよう木箱を並べて組み合わせて、更にご丁寧に畳まで敷いて四角い枠を置き、その中心に窪み、そして御神体みたいに『コタツ』が鎮座してます。つまり小粋な『掘りゴタツ』なんですよ。
その中には籠に包まれた謎の【あったかいモノ】が有りまして、半永久的にあったかいらしいです。謎ですよ、謎。でもホカホカするからヨシ。
そもそもココは【異世界スナック】とか言う奇っ怪なお店でして、そこに突然現れたおっさんに「美味しいモノが沢山食べられるから行ってみたら」と誘われまして、居候と洒落込んだのが随分と前の話で……
……あ、自己紹介が遅れました。私、フィオーラって言います。まぁ、簡単に説明すると、とある事故で六人と一匹、あと何か……あ、それに厄介なバカとごちゃまぜになりまして、何だかんだあって『白面九尾』ってキツネのオバケになった人狼女子なんですが、まぁ、それはそれ。
今日はお店が休みなので、お手伝いは身の回りの事だけでいーんですが……ココに入ってると……なんだか、ねぇ?
……くあああああぁ……あふ♪ 眠くなりません? コタツって……
……お手伝い、しなきゃ、いけないんですが……ふむぅ……
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……と、うつらうつら、してましたら……
何だか急に、足元がスースーしてきたんですよ。急に。
さては例の【あったかいモノ】が止まっちゃったのか? と思って、モソモソと尻尾を脇に退けて(だって九本もあるんだもん)、頭を突っ込んでみましたら……
……これは……コタツ、ですかね? 掘りゴタツの真下に妙なモノが見えますよ。【あったかいモノ】が在った場所に、コタツ。当然ながら【あったかいモノ】はありません。つまり……あったかくない。
……いやいやいやいや、これはマズイでしょっ!?
ねぇ! 私は無実ですよ!? 判ってます! コタツを壊したりしたら怒られる事なんて!! 前に濡れた洗濯物を【あったかいモノ】に載っけて乾かそうとして怒られたし、もっとあったかくしたくて【地獄の業火】を仕込もうとして怒られたから、よし、大事にしよーっ、て今まで思ってましたから!!
……しかし、何でコタツなんだろ? ……普通さぁ、こーゆー時って、階段とかじゃないの? ……えっ、何でコタツだって判ったかって!?
……だってさ、下から足がニュッ、て出てるんだよ? 人の足が。同じような掘りゴタツみたいになってて、同じようなやぐらになってて、そこの隙間から足が二本ぶらさってるの。
……でも、人が足を入れてるからかな? ……何となくあったかいや。
……うん、あったかいや。
……ほっとこ。
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「……ねぇ、ヨシオさん……そこ隙間空いてない?」
「……え? 別に空いてないよ?」
「……そう? ……何だかスースーする気がするんだけど……」
「僕はそーでもないけど……あったかいよ?」
「……気のせいかなぁ……?」
「……サーモスタットが働いて、熱くならないように止まったんじゃない?」
「……そーかなぁ……まー、いっか……」
「「……あったかいから、いっか……」」
あったかい掘りゴタツ。たまには中を見た方がいいですよ?