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光輝士セイグリッター  作者: なろうスパーク
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第48話「戦いの終わり」

ふと、浅倉春香は誰かに呼ばれたかのような気がした。

今部屋にいるのは、自分一人なのに。


振り向くも、そこには誰もいない。

いつものように笑顔で答えてくれる彼も、その執事たる無愛想なロボットも、今はここには居ない。


今彼等は、ここから遠く離れた場所で、地球を守る為に戦っているのだから。



「………もしかして、シャルル君が呼んだのかな?」



そんな事を考えながら、春香は窓から空を見上げてみる。

ここからでは、宇宙空間で戦っているという連合軍の艦隊は、残念ながら見えない。


だが、彼等は間違いなくそこにいて、地球を破滅から救う為に戦っているのだ。

そして、その中には春香が帰りを待つ「彼」もいる。



「………あの辺りに、シャルル君がいるのかな?」



春香は、最後となるかもしれない一日を、家で過ごす事にした。


今さらどうこう騒いだ所でどうにもならないし、実家に帰ろうにも間に合わない。


何より、春香はシャルルが死ぬとは思っていない。

だから、こうしていつも通りの生活を送る。


全てが終わった後、きっといつも学校から帰ってくるように「ただいま」と言って玄関の扉を開くのだと、信じているから。



「………待ってるからね、フレンチトースト」



空の向こうで戦っているシャルルに言うように、春香はそう呟いた。


きっと、彼は無事に帰って来て、約束した通りにフレンチトーストを作ってくれると思いながら。





………………





テレビのチャンネルを回すも、どこも、何もやっていない。

番組はおろか、CMすら流れておらず、深夜帯にテレビをつけた時のような、虹色の画像か、本日の放送は終了しましたという画像が映るだけだ。


当たり前だ、こんな非常時にテレビ中継なんてどこもやる訳がない。


きっとテレビ局で働く人々も、地球最後の日を愛する人や家族と過ごそう考え、誰もテレビ局に残っていないのだろう。



「せめて宇宙のシャルル達がどうなってるか知りたかったんだがなぁ」

「まあ仕方ないよ、私達みたいにこの場に残ってるって方が異常だし」

「ま、それもそうだな」



何もやっていないテレビの電源を落とし、そんな話を交わす秋戸勝一と、桐生早苗。



「………だめだ、SNSも掲示板もダウンしてる、動画サイトも」



彼等の後ろ、ちゃぶ台を挟んだ向かいに座っている五三匠が、携帯を手にお手上げだというジェスチャーを見せる。



地球最後の日は、今や多くの人々が関わるネットやSNSにまで及んだ。

ネット上で最後の一言を残そうと、アクセスが殺到したのだ。


だが、こんな状況ゆえに、管理会社もほとんどが動いていない状況でサーバーが持つはずもなく、

SNSから掲示板に至るまで、ネットに書き込む手段のほとんどがダウンしてしまった。



「………結局、俺達にできるのは地上から応援する事だけ、か」



縁側から空を見上げ、今この場にいないシャルルに思いを馳せる勝一。

この空の向こうで、彼は地球を守る為に戦っているのかと。



勝一達も、街から去らなかった。

シャルルが命をかけて戦っているのに、自分達だけ逃げられないと、街に留まっていたのだ。


そして、彼女も。



「みんな、クッキー焼けたよ」

「おっ、待ってました!」



台所の方からクッキーの並んだ皿を持ってやってきたのは、列華響だった。

彼女も勝一達と同じように、この街に残る選択をした。


彼女の場合は、シャルルともう一人、ここで待つべき人物がいる。



「………ブレード君も、あそこで戦ってるんだよね」



空を見上げ、響は呟く。

そう、あそこにはシャルルだけではなく、ブレードもいる。


戦いの前「必ず生きて帰って来て」と命令した。

響も、ブレードが命令通りに生きて帰ってくる事を願っていた。


そして、あの時あげられなかったトーストを、今度こそ一緒に食べようと。



「………よし!」



勝一は、意を決したように庭先へと駆け出した。

そして、空に向かい、叫ぶ。



「シャルルーーッ!!ブレードーーッ!!お前ら絶対に勝てよーーッ!!」



勝一の声援は、静かな青空の中へと溶けていった………。





………………





連合軍艦隊に加え、アマデウス宇宙軍艦隊が駆けつけた事により、戦況はこちらに傾きつつある。

宇宙要塞ディアブロも、艦隊のすぐ眼前に見えるほどに迫っていた。


それでも、ウィーズも必死らしく、未だその防衛線を破るには至っていない。



「こなくそぉぉぉぉぉっ!!」



プラズマ粒子砲とレールガンを乱射し、インベイドベムを次々と破壊してゆくパワードデルタクローズ。


刃も、弥太郎も、珠江も、もう何時間も戦いを続けている。

その疲労は、確実に彼等を蝕んでいた。



「敵機、新たに接近!」

「まだ来るのかよ!?」



それでも、敵は手を緩める事はしない。

パワードデルタクローズ向けて、次々と迫るインベイドベム部隊。


だが、彼等は諦めない。



「怯むなぁッ!」



刃が、珍しく声を荒げた。

普段は比較的クールな彼だが、今その心に燃え上がるのは熱き魂。



「要塞の方でシャルル君が頑張ってるんだ!大人の俺達がへばってどうする!?」



その熱意は、弥太郎と珠江の心にも着火し、燃え上がる。



「そうだ………こんな所で俺達は!」

「私達は負けない!だって私達は………!」



パワードデルタクローズに向け、無数のインベイドベムが迫る。

それに怯む事なく、刃はパワードデルタクローズを突撃させる。



「「「ヤタガラス小隊だァァーーーーッッ!!」」」



引き抜いたエナジートマホークの一刃が、新たにインベイドベムを叩き斬った。





………………





聞こえた。

聞こえないはずなのに、この空の向こうには届かないはずなのに。



「勝一君………匠君………早苗さん………響さん………」



自分を呼ぶ声が。

シャルルの勝利を信じ、応援する友人達の声が。



「刃さん………珠江さん………弥太郎さん………」



一人や二人ではない。

この宙域にいる艦隊の全てが。

地球に生きる全ての人々が。


いや、地球そのものが。

地球を滅ぼさんとするイデアの驚異から、全てを救えと。



「春香さん………………みんなッ!!」



今、それができるのは、ディアブロの本体たるイデアと接触しているキングセイグリッターだけ。

そしてそれを操る、自分だけ。



「うう………うわあああああーーーーーっっッ!!!」



ギィンッ!

電撃に教われていたキングセイグリッターの瞳が、強く輝いた。

そして。



『こ、これは………!?』



デオンが、突如起こった異変に気付き、慌てている。



「な、何がどうしたの!?」

『解りません!突然、セイグリッターのエネルギーが上昇しています!』



デオンにも、何が起こっているのか解らなかった。

キングセイグリッターのエネルギーが、突然上昇し出したのだ。

まるで、シャルルが聞いた「声」に答えるように。



『私の知らない機能が搭載されているというのか………!?』



シャルルがアマデウスを脱出してから、今の今までセイグリッターの操縦補助AIをしていたデオンも、セイグリッターにこんなシステムが搭載されている等知らなかったようだ。



だが、そもそもセイグリッターは超古代の戦争の時代に建造され、尚且つ戦争の時代を終わらせたとされている。


言ってみれば、オーバーテクノロジーの塊なのだ。

何が搭載されていても可笑しくない。

このように、まるで信仰される神々のように、遠く離れた人々の想いを力にする事も。



溢れだしたエネルギーは、キングセイグリッターその物を、黄金の輝きに染める。

そして。



バチィッ!!



程なくしてキングセイグリッターを縛っていたイデアの触手に火花が散り、触手を焼き切った。

増大したエネルギーが逆流し、触手の耐久力以上の電撃を流し、破壊したのだ。



解放され、地面に降り立つキングセイグリッター。

その眼前では、まるで混乱したかのように目まぐるしく発光するイデアの姿。


イデアに感情があるかは解らないが、突如パワーアップを果たしたセイグリッターに驚いているのは、奴も同じようだ。


それを「よくもやってくれたな」と言うように見上げ、睨み付けるキングセイグリッター。

その黄金に光輝く姿は、さしずめ伝説に登場する勇者とでも言うべきか。



「………怖いか?そうだろうな」



パニックを起こしたかのようにチカチカと光るイデアに向けて、シャルルは言い放つ。

普段のシャルルからは想像できない程の、怒りの感情を込めて。



「心を持たないお前には解るまい!ただ与えられた命令に延々と従うお前には!皆がくれたこの力が!!」



何をほざくか、と反論するように、イデアがより激しく点滅する。

そして、イデアを覆い守るように、ビーム砲のついた触手が集まってくる。



『目標、セイグリッターを危険と判断、完全破壊に移る』



無数の触手とビームが、キングセイグリッターに襲いかかる。

論破されて頭に血が登った悪党がごとく、その攻撃は雨霰のように激しい。



「うわあああーーーっっ!!」



けれども、キングセイグリッターは突撃する。

その身体に黄金の輝きを纏い、光で包まれた勇者がごとく。



無数のビームが、豪雨のように降り注ぐ。

キングセイグリッターの足取りを止めんと、それはその装甲を貫き、機体を焼く。



「装甲パージ!」

『了解ッ!!』



追加された装甲とパーツが誘爆する直前、シャルルはその全てを脱ぎ捨てた。

結果、ジャンボフェニックスを中心に、各部パーツはセイグリッターを覆うように大爆発を起こした。


やったか?


目標撃破確認と認識し、ビームを止めようとしたイデアの眼前で、装甲を脱ぎ捨てたセイグリッターが、天高く舞い上がった。


そして。



「レーヴァテインッ!」



シャルルの声と共に、ジャンボフェニックスの残骸の中からレーヴァテインが飛来し、剣の姿へと展開する。


その持ち手を、セイグリッターの腕が掴む。



「レーヴァテイン………ブレイズアップ!!」



狙いを定めるように、その切っ先をイデア向けて構える。



刀身より、ライトグリーンのエネルギーの刃が展開。


そこから放たれたエネルギー波が、イデアに命中し、その機能を縛る。



『目標を危険と判断、目標を危険と判断、目標を………』



自由を奪われ、壊れたスピーカーのように同じ言葉を繰り返すイデア。

それを前に、シャルルは。



「お父様、お母様、兄さん………終わらせるよ!」



狂ったコンピューターによってもたらされたこの破壊と悲劇を、これで終わらせる。

あの時救えなかった父に、母に、そして兄に、決意を誓う。


そして。



「受けろイデア………皆の仇だァァーーーーッッ!!」



瞬間、セイグリッターはレーヴァテインを振りかざしたまま、全身のバーニアを吹かせ、駆けるようにイデア向けて迫る。



「だりゃあっ!!」



そして剣を大きく振り上げ、その一刃をイデア向け、叩き込んだ。




ズワァーッ!




たちまち、シュピンネのボディはエネルギーの刃によって、真っ二つに切り裂かれる。



『目標を判断、危険、危険、危険、危険、危険、危険、危険………』




切り裂かれたイデアはバグを起こし、狂ったような輝きを放ちながら両断される。

そして、イデアの前に立つセイグリッター。


構えたレーヴァテインのエネルギーの刃が焼失し、元の姿に戻る。



それを、セイグリッターが再び肩にマウントすると同時に、イデアは大爆発を起こした。



ズワォ!



イデアは、跡形もなく爆発・四散する。

宇宙に悲劇と破壊をばら蒔いてきたウィーズ総統の、最後だ。



そして炎の中佇むのは、イデアを撃破したセイグリッターの、雄々しい姿。


胸の金の装飾が、戦いの終わりを告げるようにキラリと輝いた。





………………





始まりは、エネルギー供給システムが語作動を起こした事による、爆発だった。

それは武器庫に引火し、宇宙要塞ディアブロを連鎖的な爆発に包んでゆく。



「要塞が!」

「シャルル君がやったんだ………!」



崩壊してゆくディアブロを、その場にいた全ての戦士達が、見守っていた。

刃も、珠江も、弥太郎も、ブレードも、そして連合軍やアマデウス宇宙軍の戦士達も。


ふと諏佐が時計を見ると、ゲノサイダ砲の発射まで残り一分を切っていた。

ギリギリで、ようやく地球は救われた。


だが。



「でも………シャルル君は!?」



ディアブロの爆発は激しい。

宇宙要塞一つが崩壊するのだ、当然である。


セイグリッターが脱出に成功したなら、通信があるはずだ。

それが無い。

という事は、シャルルは………。


誰もの胸の中に、最悪の展開が過った。

その時。



「………あれを見ろ!」



爆炎の中、一つの塊が宇宙に向かって飛んできた。

それは。



「セイグリッター!!」



それは、セイグリッターだった。

青いボディは焼け焦げ、各部のパーツがひしゃげ、破損していた。


それでも、セイグリッターは帰ってきた。

絶望的とも言える状況から、帰ってきた。



「………デオン」

『はい、シャルル様』



全ての力を使い果たしたシャルルが、コックピットの中で、座り込んでいた。

疲労感に満ちていたが、今のシャルルはとても清々しい気持ちでいた。



「………ちょっと、疲れちゃった………休んでいいかな?」

『では、そのように』



モニターに、セイグリッターを回収しようとしているのであろうデルタクローズの姿が映る。

それを前に、シャルルは少し笑うと、その意識を手放した………。





………………





その日、一つの軍団が、その歴史に幕を閉じた。

その日、一つの正義が勝利し、一つの悪が打ち倒された。



宇宙が誕生してから何度も繰り返されてきた、弱肉強食の輪廻。


これも、その中の一つであった。



そして、国を失い、戦い続けた一人の少年の、その長い長い戦いに、終止符が打たれた。

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