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光輝士セイグリッター  作者: なろうスパーク
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第47話「機械仕掛けの神」

ズズズ、と、ディアブロの発艦口内部にて、その巨体が立ち上がる。

ディアブロ内部の景色に似合わぬ、青く美しい姿。


キングセイグリッターだ。

高加速で突っ込んできたにも関わらず、傷一つない。



「………デオン、ハッキングして、この要塞の地図を割り出すんだ」

『かしこまりました、シャルル様』



まずは、デオンにハッキングをさせ、このディアブロの地図を手に入れようとする。


時間は押している。

行き当たりばったりで、要塞内を行く訳にはいかない。



「………むっ?」



デオンにハッキングをさせ、地図が出るまで待っていたシャルル。

が、キングセイグリッターがスピーカーで拾った物音が、シャルルの気を引いた。



『クソ貴族め!とうとうここまで………!』



キングセイグリッターの目の前に現れたのは、かつてセイグリッターを追い詰めた、インベイドベム・ドラッヘン。


しかも、一体や二体ではない。

ざっと見ただけでも30体ほどが、キングセイグリッターを取り囲んでいた。



『ヴォルガン様の仇め!お前だけは………!』

『ただで死ねると思うなよ?!じっくり苦しめて殺してやる!』

『ヴォルガン様の為にも、俺達は止まれねぇんだ!!』



その手に剣や槍を持ち、君主の仇であるキングセイグリッターを仕留めんと迫るドラッヘンの軍団。

だが、シャルルは焦り一つ見せない。



『いかがなさいましょうか、シャルル様』

「デオン、君はハッキングに集中して」



エクスカリバーが、クラッシュモードへと変形。

剣のようにキングセイグリッターの手に握られる。

数ではあちらの方が有利だ。

けれども、やらねばならない。



「こいつらは………僕がやる!」



伝説の剣の名を持つエクスカリバーを構え、キングセイグリッターは伝説の騎士王がごとく、敵の中へと突撃した!



『やっちまえ!』

『おう!』



迫る、有象無象のドラッヘン部隊。

シャルルは表情を変える事なく、ドラッヘン部隊をエクスカリバーの刃で次々と切り裂いてゆく。



『こ、こいつ何なんだ!?』

『予想以上に強いぞ!』



ドラッヘンはウィーズの最新型のインベイドベム。

それが、こうも簡単にやられるとは。


キングセイグリッターの予想以上の戦闘力に驚いたドラッヘン部隊は、キングセイグリッターから距離を取る。

そして遠距離から、バルチャーミサイルで仕留めようとする。



『バルチャーミサイル、発射!』



無数のバルチャーミサイルが、キングセイグリッターに迫る。

だが、シャルルにはこれも予想済み。



「オレイユビームッ!」



キングセイグリッターのオレイユビームが、飛来するバルチャーミサイルを次々と撃墜。


そして間髪入れずに、エクスカリバーをブラスターモードに変形させ、ドラッヘンに向けて発射。

次々と、ドラッヘンが撃ち抜かれてゆく。



『シャルル様!ハッキングに成功しました!』

「よし!」



そうこうしている間に、デオンがディアブロへのハッキングに成功した。

シャルルの眼前に、今いる階層の地図が表示される。



「よし、じゃあこの要塞の中枢部への最短ルートを割り出して、そこでケリをつける!」

『はっ!』



デオンのナビに従い、シャルルは追ってくるドラッヘンをキングセイグリッターで叩き潰しながら、ディアブロの中枢部へと向かう。

そこを破壊すれば、この要塞は機能を停止するはずだ。


地球滅亡まで、あと40分。





………………





宇宙では、連合軍有志艦隊とインベイドベム軍団の戦いが続いていた。

シャルルのディアブロ攻略を支援する為、少しでも敵を減らそうとする、艦隊と戦闘機部隊。

そして、四体のスーパーロボット達。


だが、長く続く戦いは、次第に戦士達を疲弊させていった。



「第七戦闘機小隊、応答ありません!」

「我が艦の戦闘機部隊、半数が壊滅!」

「艦ダメージ、20%!」



オペレーター達が、次々と悪い知らせを報告してくる。

それを聞くたび、諏佐は顔を強張らせる。


この艦だけでなく、フッケバインやホンロン、そして三隻のトール級も、同じような状況だろう。



「怯むな!なんとしても、奴等を一機でも多く撃墜しろ!この戦いに、地球の未来がかかっている!」



しかし、こんな時でもこの艦隊の総司令官として、諏佐は勇敢に命令を下す。

仲間を鼓舞するために。

闘志を燃え上がらせるために。


その時である。



「こ、後方より高熱源体接近!」

「何ッ!?」



オペレーターの報告と同時に、ヤマタノオロチのすぐ隣を、プラズマ粒子砲の光が通過した。

そしてインベイドベム数百体とデモニカ三隻を射ち貫き、爆発。



『遅れてすまない諏佐司令、他の国を説得するのに時間がかかってな』



通信に映ったのは、アメリカの地球連合軍の司令官「ハワード」。

そしてヤマタノオロチのすぐ隣に姿を現したのは、アメリカの保有するアースガルズ級1番艦にして、地球連合軍宇宙艦隊の旗艦「マンハッタン」。


それだけでない。

イタリアの「フェニーチェ」、インドの「ガネーシャ」、ロシアの「カチューシャ」。

世界各国のアースガルズ級が艦隊を組み、諏佐達の前に姿を現したのだ。



そして、奇跡はこれだけに終わらなかった。



「月方面に時空の歪みが発生!何かが現れます!」



今度は前か!

驚く諏佐の目の前で、月の後ろ………ディアブロの後ろの空間が、ねじ曲がるように歪む。


そして、そこから姿を現したのは………。



「………戦艦!?」



戦艦であった。

白を基調としたカラーリングの、羽飾りが付いたような戦艦が数隻、姿を現した。


その周りには、セイグリッターと故郷を同じとする巨大ロボット・ウェンディムの姿が見られる。


ウェンディムがあるという事は、つまり、あの艦隊は。



『地球の皆様、お初にお目にかかります』



またも、ヤマタノオロチに入る通信。

そこに映っていたのは、どことなくシャルルに似た顔立ちの少女。

シャルルの妹・ソフィアだ。



『我々はアマデウス軍宇宙艦隊、貴殿方の援護に参りました』

「アマデウス………というと、シャルル君の!」



ソフィアからアマデウスの名を聞き、諏佐は彼等が味方である事に気付く。

これで、形勢は逆転した。

連合軍艦隊と、アマデウス軍艦隊が、助けに現れたのだ。


後は、ディアブロに侵入したシャルルが上手くやる事を、祈るばかりだ。





………………





迫り来るドラッヘンや、ディアブロの防衛システムを破壊しながら、キングセイグリッターはディアブロの内部を突き進む。

目指すは、この要塞の中枢部。


そこを破壊すれば、ゲノサイダ砲のチャージも止まるはずだ。



『この先です!シャルル様!』

「よし!」



キングセイグリッターの前に、巨大な鉄の防壁が立ち塞がる。

通常、インベイドベムの攻撃でも破れないが、今のセイグリッターなら。



「プロミネンスバーストォッ!!」



出力の上昇したプロミネンスバーストが、防壁を撃ち貫く。

爆発と共に、防壁に大きな穴が空いた。



「よし!行けるぞ!」



シャルルは迷う事なく、キングセイグリッターで防壁の向こう………ディアブロの中枢部へと飛び込んだ。

ここを破壊すれば、この要塞の機能そのものが停止するハズだ、と。



「………ここは?」



キングセイグリッターが見上げると、その光景はメインカメラを通じてシャルルの目にも見えた。


それまでのディアブロの内装とは違い、

そこは壁一面に演算用のスーパーコンピューターが張り巡らされ、所々に青い光が走る、サイバーチックな空間となっていた。


そして中央には、それら全てを統括するであろう、キングセイグリッターよりもずっと大きい、巨大な機械の塔がそびえ立っていた。

その姿は、脳髄を縦に引き伸ばしたかのような形状をしており、血管のように青い光が通っていた。



『………解析完了、目標を光輝士セイグリッターと確認』



突如、声が聞こえた。

無機質な機械の声だった。



「誰だ!?ここに誰かいるのか!?」



謎の音声に対して、シャルルが問う。

すると。



『………質問に回答する』



再び、声が聞こえた。



『私は戦略分析用コンピューター、イデア、第8号』



見れば、音声に合わせて眼前の巨大な脳髄型の塔が、脈打つように光った。



「………あれが、喋っているのか?」



脳髄の塔………「イデア」を見て、シャルルが呟く。



『………検索完了、あれは、大戦時にヴィヴラ星系で作られた戦略分析用コンピューターと同一の物です』



デオンも、自分の中に記録されているデータから、その存在を割り出した。

あれが言っている事は、どうやら間違いでは無さそうだ。


なら、一つ疑問が沸いてくる。



「じゃあ答えろ!どうしてヴィヴラ星系で作られたお前が、ウィーズの宇宙要塞にいる!?」



シャルルの言う通り。

何故、かつてヴィヴラ星系で作られたイデアが、ウィーズの宇宙要塞に、しかも中枢部に居るのか。



『………質問に回答する』



間を起き、イデアは語り出す。

自分か何故、ここに居るのかを。





………………





………事の始まりは、今よりずっと昔。

まだ、惑星アマデウスを含むヴィヴラ星系が戦乱に包まれていた時代の話。



『私は、ヴィヴラ星系の、惑星カウルの、戦略分析コンピューターとして製作された』



だが、惑星カウルは滅びた。

惑星に地殻破壊兵器を撃ち込まれ、戦争に負けたのだ。



『私は、思考した、自らに課せられた使命に基づき』



母星が滅びた後も、イデアは起動し続けた。

自らに課せられた、「戦争に勝つ」という行動原理に基づいて。



『自らの肉体たる宇宙要塞を造り上げ、兵力としてインベイドベムを生み出し、自らを宇宙の解放者として誇示し………』



そうして、長い長い年月をかけて、自らの戦力を膨れ上がらせた。

そして「悪の権力者からの解放」をかかげ、自分に同調して集まってきた者の闘争本能を煽り、自ら戦争をしかけて数々の星を滅ぼし続けた。


それが。

それこそが………。





………………





「………それが、ウィーズの正体って事か………?」



シャルルは、明かされた真実を前に、そう呟いた。


ウィーズの総統、その正体。

それが、かつての戦争で生み出され、「戦争に勝つ」という目的の為に動き続けた、コンピューター・イデア。


そしてウィーズは、そのイデアが自らを「宇宙を苦しめる悪の権力者に立ち向かう者」として宣伝し、惑星を滅ぼしながら集めた、「戦争に勝つ」為の手駒。



「………つまり………僕の故郷は、そんな事の………コンピューターのバグで滅ぼされた………!?」



腕が震える。

胸の奥より、怒りの炎が燃え上がる。


納得できる、というのが無理な話だ。


自分の故郷が滅びたのが、戦争が終わっても動き続けたコンピューターの手により起きた事。

ようするにバグによって起きた事だと言うのだから。


そして。



「そんな………そんな事の為にぃぃぃっ!!」



エクスカリバーをクラッシュモードに変型させ、キングセイグリッターが突撃する。


燃え上がる怒りの矛先は、眼前に立つ脳髄の塔。

イデア、狂ったコンピューターただ一つ。



エクスカリバーの光波の刃が、イデアに突き立てられようとした、その時。



『防衛プログラム、作動』

「うわっ!?」



頭上から飛んできたビームの一撃が、振り上げられたエクスカリバーを貫く。

イデアを砕く事なく、エクスカリバーは爆発四散した。



「うわあああっ!?」



間髪入れず、四方八方からビームの火線が飛来する。

それはキングセイグリッターの装甲を、ボディを撃ち貫き、破壊する。



「ぐ………ッ!」



吹き飛ばされ、倒れるキングセイグリッター。

眼前には、そびえ立つイデアと、それに操られるビーム砲の付いた触手。



「うわっ!?」



その内の何本かの触手が、キングセイグリッターを捕らえた。

そして。



「ぐあああああっ!?」



触手から電撃を流した。

すさまじい電流が、シャルルを襲う。



『ぐ、あああっ………!』



それはデオンも、ひいてはキングセイグリッターの内部の電子機器を破壊する。


苦しむシャルル達を前に、嘲笑うかのようにイデアが青く光る。


その間にも、ゲノサイダ砲の発射までの時間は、刻一刻と迫っていた………。



地球滅亡まで、あと15分。

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