8話 いざ〇〇装置!
ガヤガヤーー
俺の指示により国民はレンガや板などを集めている。当然俺自身も集めるのを手伝っている。板を手に取り両サイドを折り曲げ、柔軟性を確かめる。この板は結構柔らかい材質らしく、少し海老反りするくらいは折り曲がる。
(柔軟性は十分だな)
俺も実際やった事があるわけではないから、成功するかは五分五分といった感じだ。でも、今はやるしかない。国民の人達も、それが分かっているから手伝ってくれているのだろう。そうでなければ、俺みたいな奴に従うわけがない。
「……ねぇ」
「どうした?見張りはいいのか?」
「ここは公園だから見晴らしはいいの。敵が来たらすぐ気がつくわよ」
「なるほどね」
後ろから声をかけられたが、この声には聞き覚えがある。リスアだ。話しかけてきた理由はだいたいも検討はついてる。俺は作業の手を休め、リスアの方を向き直る。
「本当にこの方法、成功するの?」
もっともな意見だ。これに失敗したらドラゴンが怒り、この街に攻撃を仕掛けてくるかもしれない。チャンスは一度きりだ。そんなギリギリの状態で、ついさっき知り合ったばかりの奴に任せるのに、不安を覚えるのも無理ない。国民の皆も同じ意見だろう。
「分からん。でも、何もしないよりはマシだろ?」
俺は率直に自分の意見を言う。このまま何もしなかったら、モンスターに街を占領され、ドラゴンの攻撃で街は火の海と化するだろう。だったら、精一杯抗った方がいい。でも、リスアは納得いっていないのか、不安そうな声で言った。
「でも、この方法成功しても、街のモンスターはどうするの?」
「それは、この街の警察の仕事でしょ」
「警察……?」
警察という言葉にリスアは首をかしげる。もしかして、この世界には警察は存在しないのか?でも、街中はモンスターが来るまで安全そうだったし、街の治安を守っている団体はあるはずだ。
「この街の治安って、誰が守っているの?」
「治安は、軍が守っているはず……」
「……?」
俺はリスアの対応に違和感を覚えた。なんか歯切りが悪いというか、自信を持てていないというか……。でも、今はその事について考えている暇はない。今はあのドラゴンの事を考える時だ。
「守っている人達がいるなら問題ないだろう。今はドラゴンに集中しよう」
「……分かった」
リスアは不安はあるが、無理矢理納得したという感じだった。でもリスアは何をそんなに不安なのだろう?しかし、こんなに街がパニックになっているのに、その軍っていうのは遅いな……。俺は内心愚痴を言いながら作業を再開した。
◇ ◇ ◇
「こんなもんでいいか?」
国民が中央だけを開けて、輪の状態になって集まっている。一人の男が集めて来た資材を中央に置き、俺に確認をする。
「はい、十分です。では、早速組み立てましょう」
「は?組み立てる?」
国民達は、俺が何言ってるか分からないみたいな反応をした。あれ?結構分かりやすく、短めに話したんだけどな……。
「主語が足りないのよ……」
リスアが俺の説明にツッコミをする。あぁ、そっか。確かに何作るか分からないと、何も作れないよね。では、気を取り直して……
「あのドラゴンを撃ち落とす“ある装置”を作ります」
俺は指を、空を飛んでいる紅いドラゴンを指して説明した。これなら誰も文句ないだろう!
「あんた……ちょっと医者に行って来た方が……」
「あれ!?何で皆そんなに冷たい目してるの!?」
おかしい……。説明はバッチリのはずだ。何がいけなかったんだ……?
「あんた馬鹿だろ!?あんなにでけぇドラゴンを撃ち落とせる訳ねぇだろ!?」
「確かに普通なら無理です。でも……“羽”を狙い撃ちできればどうでしょう?」
「羽を……?」
「ドラゴンの羽は、他の部位より薄い皮のような物で出来ていました。だから、他の部位よりもダメージを与えやすいんです。それに、羽に穴などが開けば、バランスを取るのも難しくなるでしょう。特にあんなにデカイ羽ならば尚更です」
俺の考えた作戦は単純だ。ある装置を作って、それにより飛んだレンガなどの硬い物で羽に穴を開け、バランスが取れなくなって高度が低くなったら、リスアが屋根などに高い所から攻撃をくらわせるーーというものだ。作戦自体は単純だが、これにはリスアには大きなリスクを伴う。ドラゴンに一番近づくわけだから。
(まぁ、でもリスアなら大丈夫だろう)
口裂け瓜坊と戦っている時に、リスアの強さは実感できた。まるで踊っているように剣を振っているリスアは戦い慣れているはずだ。実践経験も豊富だと思うし。俺は、この役目はリスアが適任だと思ったからリスアに頼んだ。
「でも、その装置ってどんな物を作るんだ?」
「そんなに難しい物ではありませんよ。いわゆる“パチンコ”というやつです」
「パチンコって……あのパチンコか?」
「はい」
よかった……パチンコはこの世界に存在していたみたいだ。一から説明している時間はなかったし……。
「では……皆さんお願いします!」
「「おぉー!!」」
こうして、簡単なパチンコ装置製作が始まった。