4話 国の門
「…………」
「…………」
リスアとの距離を数十メートル離れ同行中。自己紹介してから俺たちは一切口を開いていない。無言でしばらく歩いているのでとても気まずい空気が流れている。話しかけようにも、近づいた瞬間に鋭い視線で睨まれる。……怖い。でも、ここで俺の命綱を失うわけにはいかない……!!
「……見えてきた」
「え……?」
リスアは立ち止まったのに気づき、俺も一緒に立ち止まる。リアスの目線を追うと、そこには一つの国を見える。遠目だけど結構大きい国だというのが分かる。国の周りには大きな塀が囲っており、俗の言うブロック塀というやつだろう。恐らく防衛のための塀だろう。近づくにつれ国の大きさがより実感する。そして、より驚いたのが門の大きさだ。
(でけぇ〜……)
門の目の前に立って門の全体を見るには腰を曲げて見上げないと見れない程だ。巨人でも出入りしているのかと錯覚してしまいそうになる。でも、この大きな門は人の出入り口ではないらしい。まぁ、こんなでかい門からわざわざ入る事はないからね。えっと、人間用門は……?
「……こっち」
リスアが人間用門に案内してくれる。何だかんだ優しいな……なんて考えている間にも門の方へすたすたとあるって行く。なんかこれと似たような事があったような……。
『門受付の人はこちらに並んでくださーい』
そんな声が聞こえ見てみると、『最後尾』と書かれた看板を掲げながら呼びかけている男性がいた。そして、その男に誘導され、門受付に並んでいる人たちの行列を見ると……
「これに並ぶのか……?」
有名店のような行列ができていた。その数ざっと数えて数百名はいる。こんなのを待っていたら日が暮れてしまうだろう。とくに、今内臓を持っているリスアは俺以上に早く入りたいだろう。割り込むわけにもいかないし、どうしたものか……。
「って、あれ?リスアは?」
てっきりこの行列に並んでいるものかと思ったけど、どこにもリスアのような人影が見当たらない。先程まで一緒だったから近くで並んでいると思ったんだけどな……。
「リスア、どこへ行ったんだろ……う……?」
リスアの姿を発見した。しかし、それは先程の行列の中ではない。人間用の門から少し離れた壁にもう一つ人間が入れそうな扉の前に立っていた。その扉の前には白色のマントを羽織り、門番らしき人が二人たっている。リスアは、門番に何やらカードを見せた後に門番によって開かれた門に入って行った。リスアを追いかけるのと少しの好奇心からそのドアに近づく。門の大きさは、先程の人間用扉と同じくらいのサイズだった。もう扉が閉じており、どうやらまた開けてもらうしかないらしい。でも、その前に少し調べてみるか……。門番に気づかれないように……
「おいそこのお前。何している?」
「グッ……!?」
まさか速攻でバレるとは思わなかった。俺は精細かつ隠密に移動してたのに、何でこんなに早くバレたんだ……?
「門の前でこそこそしている怪しいヤツめ。この門は、ランク10以上ないと入れないという決まりがある。ランク10以上じゃなければここを通すわけにはいかない」
なるほど……。つまりは『VIPルーム』いわく『VIPゲート』的にヤツだろうか?恐らく行列が出来てた方は商人や、初心者の冒険者かなどだろう。そして、この門を潜って中に入れる人はベテランの冒険者なのだろう。まぁ、どっちを優先にするかはすぐに分かるけどね。
(リスアってすげぇんだな……)
リスアがこの門を潜ったと言うことは、彼女は最低でもランク10以上ということになる。この世界のランク制はまだわからないけど、『VIPゲート』があるくらいだから、高いランクだと考えた方がいいだろう。さて、俺は初心者冒険者どころか、冒険者にすらなっていない僕にこの『VIPゲート』に入れないのは確かだ。
「仕方ない……あれに並ぶか……」
恐らく……というか絶対日が暮れるけど、そこら辺は仕方ないと割り切るしかない。そして俺は、門の行列に並ぶ。すると、ある事に気づく。
『……はい確かに。では、どうぞごゆっくりなさって行ってくださいませ』
そう、門を潜る前の人が何か紙のようなものを差し出していた。受付人は、その紙を受け取りハンコを押す。このやり取りを見るに、あの紙はこの世界でのパスポートになるって事か?
(いやいや、ちょっと待って)
いきなり問題発生って……そもそも俺金持ってねーよ!!うそっ……!まじで?俺、街にも入れず死亡?なにそれダサすぎる。どうせならモンスターと戦って名誉ある死に方したい……。いや、死にたくないけどね?
(どうすればいいんだよ……)
街に入れない事を再認識して、これからの事を考える。資金を稼ぎたいけど、街に入れないんじゃあ意味がない。モンスターを倒せばコインが貰えると思ったが現実はそんなに甘くないらしい。リスアが狩った口裂け瓜坊からなにも出てこなかったのが何よりもの証拠だ。
「俺まさか……”詰んだ“?」
それが、この状況下で俺が出した結論だった。