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3話 彼女の名は......

今起こった事を一旦整理する。えっと〜......?口が裂けている瓜坊(3匹)に追いかけられて、もうちょっとで殺されそうになった処をこの少女に助けられた......。そして、俺の目の前で亡骸と化した口裂け瓜坊......。なんだこの状況?


「......何?」

「あっ......いや......」


呆然と彼女を見ていたら、こちらをジロリとにらみつけ、冷たい視線を浴びせられた。やめて......!トラウマが呼び起こされちゃう!!


「......」

「なに......しているの......?」


彼女は亡骸になった口裂け瓜坊に近づき、腹を切った。内蔵をグチャグチャという生々しい音を立てながらほじくり出している。


「......」

「うっ.......」


血腥(ちなまぐさ)い匂いが漂ってくる。慣れない匂いと光景に嘔吐感が湧いてきた。思わず口を塞ぎ、うずくまる。


「......慣れてないの?」

「普通は慣れないと思うけど.....?」

「じゃあどうやって今まで生きてきたの?」

「えっ......?」


それは、純粋な問だった。冗談や嫌味を言った訳ではなく純粋に疑問に思ったらしい。


「それは......」


どう答えたらいいんだ......?ここが死後の世界じゃない事は今までの体験から確実だろう。だけど、「死んで、気がついたらここにいました☆」なんて言えるはずがない。てか、なんで俺こんなテンション高く言っているんだ......?


「......まぁいいけど」


そう言うと、先程から内蔵をまさぐっていた手をハンカチで拭い、バックから何やら小さな袋を取り出した。


「これでいいか」


そうつぶやくと、彼女は口裂け瓜坊の内蔵の一部を袋に入れた。それを三匹分しっかりと回収していた。


「それは......?」


明らかに異様な光景に俺は思わず質問した。怪物の内蔵を取り出すんて普通じゃない。それも、袋に入れるなんて......


「あなたには関係ないでしょ」


冷たい声音でバッサリ切りすてられる。確かにそうだけど......。でも、ここでこの人別れたら今度こそ八方塞がりになってしまうかもしれない......。......よし!


「ねぇ、君の街に連れっていってくれないかな?」

「えっ?」


自分で言っていて思ったことがある。俺、変態みたいな事言っている......。ヤバい!彼女が警戒している!!どうにか弁解しないと.....!!


「えっと......そういう事じゃなくて......!君の街を見てみたいなって!!」


なんて情熱的な告白なのだろう。あぁっ!!彼女が引いてしまった......。ぐっ......心へダメージが......!!でも、ここで引き下がるわけにはいかない!!


「どうかお願いします!!」


俺は腰から折り曲げ、頭を下げる。誠心誠意を込めて。


「あのっ......えっと......」


先程の冷たさはなくなっており、今度は逆に戸惑っていた。でも、何故だろう?頬がほんのり紅いような......?


「別に......いいけど......」

「ほっ、本当!?」

「う、うん」


やった!!これである程度の目標が立った。今の俺には所持している物や役立ちそうな物はない。お金も食料も何もない。ひとまず街に行って、食料などを調達しなくちゃいけない......。そうしなければ俺は......死ぬ。


「だけど!私から数十メートル離れて着いてきて」

「へっ?」


彼女は胸を腕で抱き、こちらを警戒している。だけど数十メートルって.....。下手したら見失うかもしれない......。


「出来れば数メートルで.......」

「だめ」

「はい......」


そこまで警戒しなくていいじゃないか......。そんな悲しい気持ちでいると、ふとあることを思い出す。


「そういえば、自己紹介まだだったね」

「必要ある?」

「俺と金輪際関わりたくないと?」


サラッとひどい事を言い出す。本当にマジで泣きそう......。でも、相手の名前とか知ってた方が何かと便利と説得して、なんとか自己紹介を始める。


「俺は卯月(うづき)(まこと)。よろしく!」


俺は手を前に差し出す。握手をするためだ。友好を深めるためには握手は絶対必要だと俺は思う。


「リスア・ローデス・ツーエンよ」


彼女は俺の差し出した手を握ーーらなかった。うん、分かってた。


「さて、早く行きましょう。内蔵が腐ってしまうから」

「結局あれってなんだったの?」


内蔵を回収する。まさかリスアにはそういう趣味があるのか......?


「なんかあなた.....失礼なこと考えてない?」

「ソンナメッソウモナイ」

「目が面白いぐらいに泳いでいるんだけど?」


この人の前で嘘をつけない気がする......(単純に俺が嘘が苦手っていうのもあるけど)。嘘をつこうとするけど。あの鋭い目に睨まれたら怖くて白状してしまうだろう......。


「それに、あの内蔵の意味は街に着いたらすぐ分かると思うし......」


そう言うと、すたすたと歩き出した。俺はそれを追うように歩き出す。まだ見ぬ地に向かって......。


「数十メートル」

「はい......」









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