最終話 決意
今回が最終回です!打ち切りという形ですみません!
「何で来たんだよ!?」
先程、国民と一緒に逃がしたはずのリスアが、俺とドラゴンの間に立っている。でもなんで……?何でここにリスアが来るんだよ……!!
「逃げろと言ったはずだ!!リスアでも、一人じゃドラゴンに敵わない!!お前も分かっているだろ……!?」
必死の訴え。俺ならまだしも、リスアをここで死なせるわけにはいかない。今は勝てなくても、今後成長してきっと強くなる。そんな確信にも近いものをリスアに感じていた。だから……!!
「一人……じゃないでしょ?」
「え……」
初めて、リスアが俺に向けて笑いかけてくれた瞬間だった。向日葵に似たような温かさ、朗らかさ……、あぁ、この子が笑うとこんなにも……“美しい”んだなと場違いにも思ってしまった。俺は、最初に見たリスアの闘い方や終わった後の顔で「美しい鬼」と思ってしまったが、今はそんな事を微塵も思えなくなってしまった。今の彼女はーー
「天使……」
暖かな笑みと、軽やかに戦う姿はまるで背中に羽があるようで……とても美しかった。
「私は今、一人じゃない。貴方がいるもの」
「っ……!」
それは、何も取り繕っていない本音の言葉だった。だからだろうか……。とても胸が苦しくなった。悲しみではない……。嬉しみでもない……。なんだろう……この胸がキュッと締め付けられる感覚は……。
「卯月!何か策はあるの!?」
ドラゴンから目を離さないようにして俺に聞く。これは、リスアからの信頼の証とも言えるだろう。なら、それに全力で答えるまでだ!
「一応ある!でも……これの成功率は正直言って高くない……」
「でも、0じゃないんでしょ?」
「あぁ」
「なら十分!」
リスアはその言葉を合図にドラゴンに向かっていき、ドラゴンの意識を自分へと集中させる。
「で、私はなにやればいいの?」
ドラゴンの攻撃を躱しながら聞いてくる。あの状況で質問できる余裕があるなんて流石だ。なんて、関心している場合じゃないな……。
「ドラゴンから俺の注意を極力無くしてくれ!俺に少しでも注意を向けていたら、この作戦は失敗に終わる!」
それを聞いたリスアはコクリと小さく頷き、きっとドラゴンを睨みつける。敵意を丸出しにして、ドラゴンを自分が敵だと確実に認識させるためだろう。
(隙を見つけろ……!ドラゴンがリスアに完全に意識が向いている時……それが最大のチャンスだ!)
リスアはドラゴンの視界に入るギリギリの場所で行動している。もし、リスアが視界から消えてしまったら、ドラゴンは辺りを見渡し、下手したら俺に注意が向く可能性がある。でも、決められた範囲で避け続けるのは至難の技であり、長くは持たないだろう。
ゴァァァァ!!
ドラゴンは、物理攻撃では拉致があかないと思ったのか、少しのタメをつくって一気に炎のブレスを吐き出す。あまり広くない道だ。躱すとなれば、さっきの物理よりも制限させるだろう。だけどーー
(見つけた……!ゆういつの隙を……!)
このブレスのおかげで隙を見つけることができた。後は、俺がしっかりとできるか……だ。
「リスア!もう一回、あのブレスをドラゴンにさせてくれ!」
「……!分かった!」
リスアがそう言うと、ドラゴンの物理攻撃がギリギリ届かないところまで間合いを詰め、一定の距離を保っている。ドラゴンはまたしてもブレスを吐こうとしているのか、少しだけタメを作る。
「今だ!!」
ゆういつの隙ーーブレスをする時のタメだ。その間は、通常よりも少しだけ無防備になる。それに加えて、リスアに注意が向いているから、不意打ちは楽だろう。
「うぉぉぉぉぉ!!」
俺は、後ろを向いたドラゴンの尻尾から背中まで駆け上がり、顔の近くまで行くと、注射器の取っ手部分を指にはめる。よし!塩酸と硝酸がうまく混ざっている!これならいける!!
「くらえっ!!」
俺はそう叫ぶと、注射器の針の部分をドラゴンの目に突き刺した。そして、すかさず取っ手部分を押し込み、中にある液体を目から注射する。
ゴァァァァァァ!!!??
絶叫。はじめの咆哮とは違う、もがき苦しんでいる声だった。上手く……いったのか……?
「あなた、何をしたの?」
すると向こうから、ドラゴンの異常の原因を確認し、その元凶の僕に聞きにきたリスアがいた。
「簡単な話さ。塩酸と硝酸を混ぜて王水を作り、それをゆういつの針が通せそうな目玉に突き刺しただけだよ」
「うわっ……あんた結構エグい事するのね……」
王水……鉄すらも溶かす強力な酸だ。それを、デリケートな目玉に注入されたんだ。ひとたまりもないだろう。
「でも、そんな事で倒せるの?」
「まぁ、見ててよ」
ドラゴンは、目を抑えもがき苦しんだ後、ゆっくりと地面に倒れ、それ以降ピクリとも動かなくなった。どう言う事だ……?とリスアが不思議そうな顔したから解説しよう。
「目玉と脳って結構近くにあるんだ。そこに、鉄でも溶かす王水が大量に注入されたらどうなると思う?」
「まさか……」
「そう。肉が爛れ、脳までも溶かしてしまうんだ」
このドラゴンは、脳にまで王水が周り、溶けてしまったから死んだのだ。
「そう言う事だったのね……ふぅ……」
緊張と躱した事での疲労が溜まっていたらしく、その場にヘタリ込む。俺も、今回は……がん……ばっ……。
ドサッ!
「卯月……!?」
◇ ◇ ◇
そこから記憶がはっきりしない。多分、ただの疲労だろう。でも、リスアの最後の言葉が妙に耳に残った。『ありがとう』と……。これからのことはわからない。だけど、俺はこの知識で成り上がってみせるさ。何年かかっても……!
お読みくださってありがとうございました!




