10話 生きて
来週で打ち切りにします!
「はぁぁぁ!!」
俺の呼びかけに応えるように、リスアが後方から飛び出した。その勢いで細剣でドラゴンを一突した。
ゴァァァァ!!
硬い鱗によりダメージはそこまで受けていないようだが、リスアに注意を向けるには十分だった。
「皆、今の内に!!」
リスアがそう叫ぶと、それまで呆然と見ていた国民は、はっ!と我に返り一斉に逃げる。それに俺も乗じて逃げーー
ゴァァァァ!!
「くっ......!」
ドラゴンはブレスを吐き、リアスはそれを寸前のところで避ける。しかし、運悪く避けた先にドラゴンの腕があり、リアスは弾き飛ばされてしまった。
「かはっ......!?」
「リスア!!」
リスアはそのまま吹き飛ばしれ、家の壁に激突した。アニメとかで見るようなめり込み方はしていなかったけど、それでも結構な衝撃の筈だ。無事では済まないだろう。
ゴァァァァ!!
やばい!ドラゴンが再びブレスを吐き出そうとしている……!このままだとリスア......!どうする!?
ゴァァァァ!!
ーー考えている暇は無い.......
「ダァァァ!」
「......!?」
間一髪でリスアを抱え、横に思い切り飛ぶ。受け身の事など何も考えていなかったから、最悪リスアだけでも……!とかんがえ、自分が下になり地面を転がる。くっ……やはり実際やると、すごく痛い……。
「卯月……!?あなた、何やってんの!?今すぐここからーー!!」
「リスアは、どうするの?」
「……!?」
リスアが一瞬目を見開く。やはりそうか、リスアは多分、“自分が囮になれば皆助かる”なんて考えたのだろう。実際に、リスアがドラゴンを引きつけてくれたおかげで、国民の皆は安全な場所へ逃がす事ができた。でも、リスアはどうなる?ドラゴンの意識はリスアに集中しているから、隙をみて逃げ出すのは無理があるだろう。まさかーー、
「まさか、死ぬつもりで囮に……?」
「…………」
リスアは目をそらし、俺と目を合わせないようにしている。やはりか。確かに国民の皆は助かる。でも、リスア自身が死んでしまったら本末転倒だ。俺は、誰も死なせないために頑張った。なのに、リスアが死んでしまったら、何の意味がもない。
「だって……!こうでもしなければ、国民達を避難させられなかったし、もっと犠牲者が増えていたかもしれない!!だから、私一人が囮になれば……!」
今まで、こうやって自分を犠牲に生きてきたのだろうか……?まだ、俺たちの世界じゃ高校生くらいの年なのに、見知らぬ人のために自分の命を粗末にする。そんなの……あまりにかわいそうじゃないか……!
「……君に囮はさせない。早くここから逃げるんだ」
「卯月はどうするの……?」
俺はニッと軽快に笑う。出来る限り、彼女に心配をかけないために……。
「なに、リスア達が逃げたのを見たら、俺も一目散に逃げるさ!こうみえて、逃げ足だけは速いんだ」
そう言っている間にも、恐怖で足が少し震えている。俺は足をリスアを誤魔化すように屈伸をする。リスアに俺の心情を悟らせないように、逃げる足枷にならないように……。
ゴァァァァ!!
どうやらあまり時間は無いようだ。ドラゴンが俺達を視認したあと、攻撃するモーションに入る。あれは……尻尾か!!
ドゴォン!!
尻尾を振り回して、次々と家をなぎ倒していく。これだけでも破壊力は一目瞭然だ。あんなものを食らったら一たまりもない。
「リスア!早く!!」
「っ……!」
俺の一喝で、少し迷いながらも後方へ逃げ出した。これで……、これでいいんだ。今までろくな人生を送ってこなかったんだ。ここで終わっても、あまり変わらないーー
「卯月!絶対……!絶対生きて帰ってきてよ!!」
「……っ!!」
……誰かから必要とされたの、いつ以来だろう……。1年前に両親が事故で亡くなって、それ以来自分の部屋に引きこもる日々が続いた。学校にも、外にも出ていない。お金とかはゲームの大会とかで稼いでたし、困る事なんてなかった。でも、“誰にも必要とされなかった”。
ゴァァァァ!!
そんな事いわれちゃーー
「簡単に死んでたまるかぁぁぁ!!」
俺は、自分に降り注ぐ尻尾を躱し、前方に全力疾走した。ドラゴンの意識は俺に向いているから、リスア達の方に向かっていく心配はないだろう。問題はーー
“こいつをどうやって倒すか”だ……。
「ドラゴンの倒し方……!アニメやゲームではどう倒してたっけ……!?」
俺は、長年の引きこもり生活によって得たアニメorゲームの知識をフル動員させる。今まで数え切れないほどのファンタジー系を見てきた筈だ!今活用しないで、いつ活用するんだ!
「剣……いや、俺には扱えない!なら、あとは……!」
走りながら思考しているせいか、上手く頭が回らない。焦りと恐怖……その感情が思考の邪魔をする。
「くそっ……!なにか、何かないか……!……あ!」
俺の頭にある知識が横切る。そうだ、何も“ファンタジーに限らなくてもいい”んだ!この方法を実行するには材料がいる。あれは……薬局!!看板にカプセルの絵が描いてあるから、間違いないだろう。
「あそこになら……!」
俺は薬局に入り、薬品棚を探る。貼ってあるラベルの文字が日本語ではないため、どれがどれだか分からない。でも、日本語ではないが、日本語に似ている文字だ。
「早くしないと……!」
今はドラゴンと距離があるからまだ時間はある。しかし、それでも数百メートルだ。モタモタしていたらこの薬局と一緒に潰されてしまうだろう。ここからは、時間との勝負だ。
「これか?これでもないし……。……!あった!」
そこには、ラベルに溶けているドクロが描かれている瓶があった。これが多分塩酸だろう。それで、こっちが金属が溶けている絵。恐らく硝酸だろう。あとは、注射器の中にこれを混ぜて……出来た!
ゴァァァァァァ!!
覚悟を、決めろ。
「うぁぁぁあ!!」
俺は勢いよく薬局から出て、ドラゴンの意識を俺に向ける。そうだ、俺を見ろ!こっちを向け!
ゴァァァァ!!
ドラゴンは尻尾で薙払いをする。俺は後ろに飛び退け回避する。チャンスは一度きりだ。冷静に、隙を見極めるんだ!続けてドラゴンは、腕を振り下ろし俺を潰そうとする。横に転がり避ける。避ける。避ける。
(くそっ……このままではジリ貧だ……)
ドラゴンは戦い慣れているのか、なかなか隙を見せない。確実に突き刺さないといけないのに……!このままじゃーー
「はぁぁ!!」
「……!?」
ドラゴンの後方から、聞き慣れた凛とした声が聞こえた。まさかーー
「リスア!?なんでここに!?」
そこには、細剣を片手に持ったリスアが立っていた。
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