とある日の巻き添え召喚、未来想像学園
遊びで書いて送りつけたのが、喜ばれたので投稿しました。
ここは、現代社会に超能力と言う特殊な力を持った人々が住まう世界。
ただ、超能力を持つ者は、人口の1%未満で、その数は少ない。
しかし、この日本において、30万人以上の超能力者が存在している。
日本政府は超能力犯罪を未然に防ぐため、成人には厚待遇で特殊公務員として雇い、未成年者にはこれまた異例な待遇で、新たに設立した学校を創設して、そこの生徒になるよう指示した。
そして、日本の利益になるように教育する……筈だった。
しかし、教育は上手くいかず、一部の学校では、増長した軍団を作る結果に陥った。
その学校は奇しくも、超能力検査で高い数値を叩き出した人々だけが通う、超エリート校『未来想像学園』だ。
さらに、同学園内でも、クラスによるランク別けがなされ、生徒は愚か教師ですら選民意識が湧く、異様な体制が確立された。
そんな、ある日。
関央学園都市線と連結する、常に賑わう駅の構内で、満員電車がやって来た。
電車の扉が開くと、塞き止められた水が流れ出したかの様に動く。
「あっ」
1人の女の子が、後ろにいた少年に押される。
女の子はランドセルをしていることから、近くにある私立小学校の生徒だと思われる。
社会の体質なせいか、女の子が倒れても大半の人々は知らないかの様に無視をする。
一部の人々は、押した人間を避難の目で見るが、その少年が『未来想像学園』の生徒だと判ると、そのまま歩き出す。
「クソチビがっ、邪魔なんだよ」
自分の倍以上の大きさの男に睨まれて、脅えないわけがない。
「気に入らないな」
ある1人の言葉に、同じく無視を決め込んでいた3人が動く。
「邪魔なのはお前だ、くそボウズ」
「こんな、可憐なレディにぶつかるなんて、あなた目が腐っているんですか?」
「家 帰って ママ 乳 しゃぶる」
「泣きながら、家に帰って母親のおっぱいをしゃぶってなって意味ですよね? アーサーさぁん」
少年は、超能力に目覚めてから、今まで1度も受けた事のない暴言に激昂する。
「キサマッ、俺を誰だと思ってる!俺がその気になれば、お前ら全員裸で正座させられるんだぜ?」
「この馬鹿は、死んでも治らないかな……ガル念のため、バカイヌの年齢教えて」
「ん~だめ、17歳と22週だ、責任者呼ぼうぜ」
「賛成です、こんな馬鹿を生み出す学校は、天地爆裂が妥当ですよ」
「親 査定する 同類 お仕置き」
「要約すると、バカにつける薬はないから、学校と両親に注意するで事ですよね? カーズさぁん」
少年はこの瞬間キレた。ちょうど反対側に電車がもうすぐ来ると解ってて、少年の超能力『サイコキネシス』で線路に落とそうとした。
だが、自慢の超能力は発動しなかった。
その代わり、キンジの履いていた靴が、男の口に入る。
「モゴモゴ、モゴォ!」
(線路に落ちない、痛っ何をする!)
「こいつ、ランディを線路に落とそうとしたぞ、しかもサイコキネシスだ」
「何っ? 殺したいぞ、おいバカ少年今すぐ年をとりなさい」
「サイコキネシス ガルと 相性 最悪」
「とりあえず、キンジの靴入れは放置して学校に行こう」
「モゴー! モゴー!?」
(何故だ! 何故超能力が使えない!?)
「えっと、未来想像学園、二年A組、増長極俊、笑える名前だな」
ガルは既に生徒手帳をスっていた。
「その学園の住所なら、簡単に調べられそうですね。早速行きましょう」
「ゴミ箱 発見 処理 完了」
アーサーは、手頃なダストボックスを見つけ、少年を頭から投げ込んだ……キンジの靴ごと。
「ああ……おれの靴がぁ……」
「キンジ、大丈夫だ。校長に弁償させよう、一万円でいいよな?」
キンジの履いていた靴は、1800円の安物だった。
◆
◇
◆
◇
◆
結局、人外四人衆は増長をす巻きにして学園まで運び、校舎のアーチにぶら下げてから、園長室に乱入した。
「…………と、言うわけで、大馬鹿の責任者に責任を取ってもらう事にした」
園長は、事のあらましを聞いてから表情を変えずに淡々と答えた。
「私が分かっていることは2つ。1つはあなた方の言い分である、小学生を押し倒したと言う証拠がない。もう1つは、我が学園の生徒に怪我を負わせたと言う事実だ。しかも、ほぼ無断で敷地内に侵入したおまけ付きでね」
「ひぃ!?」
園長の言葉にキンジは戦慄した。
確実に、あの4人を怒らせると。
(4人が全員怒ったら、だれが引き留め役をするんだ? 終わった、プチファンタジーな日本の終わりがやって来ました。カーズさんが独りでキレた時は、警視総監が全身の毛を毟られて、ムサシタワーの頂上で土下座だったから、その4倍は酷い目に合うかも~、って言うか四人組を起こらせたら、巻き添えで死んじゃうから)
キンジはいざとなったら、全力で逃げれるよう、退路を幾つか確保するため必死に考える。
人外四人衆の第一声は、カーズだった。
「ここは、確か国内最高峰の学校の筈ですね」
「その通りだ。それが?」
「そのトップである学園長が、私の話しが『真実か否か』も解らないとは……馬鹿の親玉は無能でしたか」
「俺様はさあ、カーズと一緒で会話にならない、阿呆は嫌いなんだよ、とっとと潰して『特別科学省』に行こうぜ」
「キンジの靴の弁償は誰にさせよう、困ったな」
「俺 暇」
園長は言葉に凄みを入れる。
「お前たちは、自分の置かれてる状況が判っているのか、私は今なら無かった事にしてやるから、黙って帰れと言ったんだ。ここの教師や生徒は全員、一般人とはかけ離れた能力を持っている。お前たち5人を袋叩きにしてから警察につき出す事も出来るんだぞ?」
「学園長マジックキター!! 一番言っちゃいけない言葉を見事チョイスっす」
次に喧嘩腰になったのは、ガルだった。
「良く言った、お前のみっともなくやられた画像を撮影して、2人の愛人に届けよう。マナミとアイコだっけ? 愛人に相応しい名前だ。あと警視総監も呼んで、一緒に参加させよう」
既にガルは、学園長の愛人の名前、住所、メールアドレスを調べ終わっている。
(なっ!? 何故私の愛人の名前を……偶然、偶然だ!)
丁度ガルの話が終わった瞬間、体格のよい教師が4人、流れ込んできた。
学園長が机の下にある、緊急コールボタンを、押したからだ。
「ガル、アーサー、カーズ、今回は4対4でやろう。アーサーが楽しめるほどの敵じゃないし、場合よって、日本政府にも謝って貰う」
学園長は、ランディの話は聞いておらず、自分の用件を教師陣に伝えた。
「この5人を、半殺しにして警察につき出せ」
「はい」
「はい」
「わかりました」
「イエス」
……
…………
1分かからずに、園長室は、血の海になっていた。
「あー、すまんランディ、加減間違えた」
「兄さん、私もつい……」
「俺 ピッタリ 半殺し」
「僕の回復呪文だと一発で元気になるから、新型回復ポーション『雀の涙』を使うよ」
ガルとカーズは加減を間違えて、出血多量で死が間近に迫っていたが、回復薬『雀の涙』で一命をとりとめる。
「あの小ボスの半殺しって言葉が、彼らを救ったっす。あれが無かったら、4人とも死んでたっす」
「馬鹿な、馬鹿な……」
「馬鹿はアンタっすよ。言っておきますが、みんな激怒中っすから……アーメン」
「じゃあ行きますか、第5レベル呪文……ホールドパーソンLVⅡ」
園長は、ランディの麻痺呪文により動かなくなる。
「弱っ!? うっわこの人、弱っ。おれでも耐えられる呪文なのに弱っ。弱すぎてビックリ」
今のキンジを拘束するには。ホールドパーソンLVⅢが必要だ。
園長は一番の小者に『弱い』を連発されて、屈辱にまみれるが、言葉を発する事が出来ない。
この後、園長は裸にされ、体毛をゆっくりと引き抜かれる事になる。
「ランディ、この世界にも100円ショップがあった。毛抜きアイテムをたくさん買ってきた」
「ガムテープ 接着剤 ハサミ 毛抜き ニッパー ライター ガル ノリノリ」
「ふふ、流石ガル。兄さんと並ぶほどの便利さ……早速使わせて貰いましょう」
カーズはガムテープ、アーサーはニッパー、ガルはライターを持ってニヤリとする。
「なあキンジ、毛を毟り取るのに、毛抜きを誰も選ばないんだけど、僕の感覚がおかしいのか?」
「ランディさん、おれがいるっす。ランディさんの言葉で安心しました」
「じゃ、キンジは毛抜きね。キン○マをツルツルにするまでご飯は抜きだから」
「しくしく、とんだ罰ゲーム。ランディさんもやっぱり師匠の兄さんだった」
これから一時間、園長室に来る者で、毛抜きの邪魔をしようとする者は、4人組の餌食になった。
……
…………
体毛の9割を毟り取られた辺りで、園長は窓の向こう側に多数のパトカーを見つけた。
(誰かが助けを呼んだのか。助かった、これで地獄から解放される。助かった)
しかし園長は気づかない。
パトカーが約100台も来ている異常さに。
それだけの警官が来て、なお吊るされた少年を助けない事に。
もちろん、普通に助けようとしても、ガルが発動させた結界で、容易に助ける事は出来ないのだが。
もう少しで、助け出される……そう学園長が思ったとき、扉は開かれた。
「学園長! 助けに来ました」
「うっ……」
「キャッ」
「つっ」
やってきたのは、想像学園四天王と呼ばれている、未来想像学園のトップ4だった。
血の海と化している部屋と、全裸で仁王立ちしている学園長を見て、生徒の1人が叫ぶ。
「これは、これは貴様らがやったのかぁぁ!!」
「まあ、話を聞けよ少年。たぶん栗生院だよな? お前の後輩、増長が小さな女の子を突き飛ばして、怪我を負わせた上に逆ギレした罪を、この恥ずかしいおっさんが揉み消そうとしたから、お仕置きしてる最中なんだ。お前らも参加するか?」
ガルは事前にトップ4の事を調べていた。
と言っても、数分しか調べる時間がなかったので判ってることは2つ名くらいだ。
No.1、イケメン『聖剣、栗生院』
No.2、ゴリラ『超筋、剛田』
No.3、インテリ『時の支配者、天原院』
No.4、紅一点『最適解の槇絵』
「ふざけるなっ」
「そうだ、だだの言いがかりだろ?」
「真偽のほどは、捕まえてから警官に任せよう」
「…………」
「はあ……この学園は、生徒を聞く耳を持たないように教える学校でしたか、一段落さしたらやりますよ」
栗生院という少年が、手から剣を生み出す。
「蒔絵、一番相性のいい組み合わせは?」
超能力、最適解を持つ蒔絵真奈美は、数秒間の沈黙の後、答える。
「……戦わない事が、最適……」
「馬鹿なっ、これを見て黙ってろと言うのか?」
「全体を見なくていい、戦いの相性だけ見ろ!」
蒔絵は、説得は無理と理解して、一番相性のいい組み合わせを伝えた。
アーサーが持つ超硬度の鉄棒には、聖剣使い栗生院。
動きが速い筈のガルには、時間を操る天原院を。
4人の中で一番非力なカーズには、ゴリラの腕力を憑依した剛田を。
そして、消去法でランディには、自分をと考えて、それを伝えた。
「さあ、アーサーさん達のバトル第2ラウンドが始まりました。 あれを見て怯まないってことは、教師軍団より強いってことっす、さあアーサーさんを喜ばせる事ができるのかぁ!」
キンジは調子に乗っていた。
アーサーは普段使用する、鉄棒では聖剣と戦えない事を悟り、咄嗟に神殺剣ラグナロクブレードを出してしまい、聖剣を消滅させて圧勝した。
カーズは第1レベル呪文マジックミサイルを一発ずつ連続で当て、死なないギリギリまで打ち続けた。結果、カーズに触れることすら叶わずに気を失う。
ガルは、姿を消して一瞬で背後に回り込み、動脈を優しく押さえて、意識を刈り取った。
ランディは第9レベル呪文、ネバーエンディンアンガーを使って、上空に今朝の少女が押されて転んだ映像が出現した。
その、怒りの力を取り込んだランディはさらに強くなる。
しかし、対戦相手である蒔絵は、戦うことはなかった。
蒔絵の超能力『最適解』では、絶対に手を出さない事が最適であると解っていたからだ。
しかも、映像を見て、非は後輩の増長にあると解ってしまった。
こうして、ランディも敵意のない人間と戦うことはなく、戦わずの引き分けとなった。
生徒達との戦いが終わった時、また扉が開かれた。
扉から現れたのは、多数の警官だった。
警官の中には、制服ではなくスーツを着ている人間も多数混じっていた。
学園長は麻痺して声も出ないが、助かった事に喜びの涙を流していた。
だが、しばらくすると、悲しみの涙に変わる事になる。
「未来想像学園、学園長!そちらの生徒、増長極俊を傷害の容疑で逮捕する! 並びに、学園長長野佐久間を犯罪幇助の容疑で逮捕する」
(はっ!? なんで? なんでこうなった!)
理由はこうだった。
カーズは以前『オレオレ詐欺』や『出逢い系詐欺』等の検挙率の低さに怒り『人外四人衆VS警視庁』を実行して、壊滅させていたのだ。
ウィッシュの呪文で、警視総監の体毛以外は、全て元通りになったが、警視庁の裏マニュアルに『あの4人だけは絶対に怒らせてはならない(特にカーズ)』と記載されたのだった。
そして、ガルからの通報を受けた警視総監は、全ての仕事を放り投げて、証拠をかき集め、一部を大袈裟に捏造して、駆けつけたのだった。
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連行される増長と学園長の前に、カーズがやって来た。
あなた方の軽率な行動の結果がこれです。
解りましたか?
「なんでなんだよっ! たかだかガキを押しただけだろうがっ!」
「そうだ、そんな事で私が逮捕されるのはおかしい!」
未だ反省の色が見えない2人に、ガルが呟く。
「あのさあ、それについてはちゃんと詫びれば済んだんだぜ? 根本的な原因は、俺様達にケンカを売ったことだ」
「それに、兄さんを殺そうとしました。本来なら絶対に殺すところですがね。さあ校舎を見なさい私を敵に回した結果がこれです。第8レベル呪文……天地爆裂」
その瞬間、未来想像学園は瓦礫の山になった。
「なっ?」
「ひっ!?」
驚く2人対して、警官達は意外なほど淡々と撤収作業をしている。
まるで、今の出来事がなかったかの様に。
「私はいつでも、あなたを見ています。今後の生き方に気を付けて下さいね」
2人はカーズに凄まれた瞬間、失禁した。
2人がパトカーに乗って消えた後……
「今回は僕が直そう。第9レベル呪文……ウィッシュ」
未来想像学園の校舎は、カーズに破壊された時よりも綺麗になって復活した。
「カーズさんとランディさんの人外呪文も恐ろしいっすけど、小さな事件をここまでデカくする皆が一番恐ろしいっす。もうこの日本にきて3回目っすよ? 4人揃うと、恐ろし過ぎます。あと、蒔絵って女の子、ランディさんを見てぼーっとしてましたけど、また惚れさせたんすか? またお持ち帰りするんすか? もう香織さんに言いつけますよ……はっ」
「キンジィ? お前最近運動不足だよな、ちょっと僕とジョギングしようか。浅虫温泉まで行って、そこで疲れを癒そう。ご飯は僕の奢りだ。カーズ、4日ほとキンジを借りるな」
「解りました兄さん。キンジ頑張りなさい」
「ランディ キンジに 甘い」
「えっマジっすか? やったぁ、じゃ
カーズさぁん、アーサーさぁん、ガルさぁん、行ってきます」
「ああキンジ、逝っておいで」
こうして、キンジは往復1500キロの道のりを強制的に走らされた。
1日約500キロ、血へどを吐いて倒れても、ランディに回復され、また走らされる。
キンジはこの温泉旅行で、一段階強くなった。
おしまい