神殺しの言い分
「なんてことをするんだぁ!」
偉そうな態度で高価な衣に見を包んだ老人は俺に怒鳴りつけた。俺は今、広場で吊るされている。周りには怒りの形相を浮かべは国民も集まってきている。よくわからない。コイツ…王は何を怒っているのだろうか。
「え?何が?」
心に思ったことをつい口にしてしまった。
「お前は自分が何をしたが分かってるのかァ!! お前は女神ハピュアン様をッ…うぅ…ハピュアン様を殺したのだぞォ!!」
だから?だからどうしたというのだ。
唯一神…光の女神ハピュアン。美しい女神ではあるがいかんせんやりすぎるところがあった。難民は街を汚す、そう叫びながら女神ハピュアンはスラムに住む難民を惨殺したのだ。
「ハピュアンが人殺ししたから俺があいつを殺したんだ。法律にも書いてあるだろ?人殺しは殺しても罪に問われないって。」
老人はしわがれた口をわなわなと開いた。
「そっ!そんな言い訳がッ!通じるわけなかろうがッ!!」
老人や民たちは俺を睨みつけている。何が納得いかないのだろうか。仕方ない、能無しのこいつらに納得いくまで説明してやるか。俺は丁寧な言葉で話すことにした。
「国王さま? 女神は神の一柱、法律では「人殺しは死罪」と記載されております。つまり神を殺したことを罪に問う法は用意されていませんよ? もう一度法典をご覧になってはどうでしょうか?」
茹でだこのように顔を真っ赤にした老人は我慢ならないといった様子で叫びだした。
「コイツは死罪ッ!即刻処刑せよ!!」
なんだコイツは。頭沸いてるんじゃないのか?
「だから王様?私は何の罪に問われているのですかな? それを説明いただかないと」
「だからっ!神殺しの」
「はて?先程から申しております通り神殺しを罪に問う法などありませぬし、私を殺すのなら無罪の者を殺したあなたが罪に問われますよ?」
老人はぐうの音もでないようだ。
「うぐっ…わしは王じゃ。わしな法なのだ。貴様は死罪じゃ!」
「頭沸いてんじゃねぇのかコイツ」
おっとまた出てしまった。本音が。
「なっ!ななな…不敬罪じゃ!即刻叩き斬れ!」
「逃げるのですか?」
「は?」
「だから王様は逃げるのですか、と申しました。私と言葉を交わすと言い負かされるから私を殺させるのですか? なんとまぁ脆弱な王様だろうか。殺して満足ですか?そうやって障害物を、なんでも除去していく、なんて脆弱で小心者で醜く無能な王様だ!」
「うぐっ…ぐぐぐぅ。ぅぅう!うぉぉおぁ!こっコイツを野に放てっ!二度とわしの目の前に現れるなッ!」
そうして彼は生き延びたとさ。なんじゃこれ。。