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聖剣と魔王  作者: 叢雲ルカ
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第3章 魔王と別れ

 馬車の中。

「何で俺が……」

 ルカがむくれている。

 腕には手錠がしてあり、拘束状態。

 逃げようと思えば、力ずくで逃げられるが、指名手配犯にされそうだし、手錠は魔力封じの手錠なので、かけられた段階で魔法が使えない。

 誘惑や洗脳の魔法を掛け適当に誤魔化す事が出来なかった。

 その上で騒ぎを起こせば、悪魔が30年掛けて手に入れた信用が一気に失墜する。

 魔王として、避けなくてはいけない事態になるので、ルカは文句を言いつつ、拘束されていた。

「貴方が、真実を話さないからです」

「その真実って何だよ」

「自分の胸に聞いてみると言い」

「そうか?」

 コウに言われ、ルカは目を瞑り思い出そうとする。

 しばらくして、ルカは目を開けると、ぐにゃぐにゃになり、溶けだした。

「どうしましたか?」

 コウが流石に心配する。

「俺の人生やましい事だらけだよ~もしかして、子供の時、クッキー分けろと、近所のオバチャンから、クッキー貰ったけど、こっそり全部食べて、タケル達に渡さなかった事か? いや、タケルのお気に入りのロボットの玩具をうっかり、落として壊してしまった事か? もしかして、宿題をレイに全部やらせた事か? はたまた浮気が原因か?」

「大した人生歩んでいなかったのね。この悪魔」

 リリーも同行している。

 聖剣を貰っていないからだ。

「みたいですね」

「なあ、コウ。頼むヒントをくれ」

 困った犬の顔をしている。

「貴方って人は」

「あっ、もしかして、その浮気した女性の中にコウの愛する人がいたのか?」

「いません!」

「安心しろ、リリスはやるから」

「いりません! 話を逸らさないで下さい」

「逸らして無いさ。何が原因なのか、さっぱり、分からないんだよ」

「では、聞きます。貴方はどうして力を封じているのですか?」

「嫌だから」

「何が?」

「また、星をぶっ壊してしまう事がだ」

「ねえ、ルカって、前の星は、自らの手で壊したんだよね?」

 リリーが聞く。

「そうだよ」

「どうして、そうなったの?」

「んなもん。俺に聞かないで、レイ辺りに聞けよ」

「そのレイがルカに聞けって、言ったの! いいから、答えろや!」

「はあ、余計な事を……」

 ルカは一呼吸置く。

「マザー」

「マザー?」

 リリーが聞き返す。

「人工知能システム。通称マザー。まあ、この星にはそんなシステム無いから分からないかも知れないが、要は機械が人間を支配する。それが、俺達のいた星だ」

「何か、ムカつく星ね。メカ何か、殴って言う事利かせればいいのよ」

「いつ時代の旧式メカだよ。それに、殴って破壊したからここにいるんだよ。俺」

「そうね。よくやったわ」

「しかし、何故マザーを?」

 今度はコウが質問する。

「それを話すには、まず、俺の出生を話さないとな。悪魔って、子孫を残し難い種族だ」

「それは分かっているわよ」

「俺達悪魔はマザーによって作られた。いわゆるクローンでな」

「クローン?」

 コウが聞き返す。

「複製。髪の毛一本あれば、マザーは俺と同じ顔のコピーをいくつも作れるんだ。俺はその昔ルシファーと呼ばれた悪魔のコピーって訳。コピーは里親に育てられ、名前は里親に付けられたんだ。レイや俺が悪魔名で呼ばれるのを嫌うのは、その為だ。犬だって、チワワだったり、プードルだったり、ミケがいるだろう?」

「ミケは猫です」

 コウが突っ込む。

「ルシファーやメフィスト何かは、チワワやプードルって言われているに過ぎないんだ。飼い主があれば、呼ぶだろう。くぅーちゃんだったり、マイクだったり」

「ミケギャクをひっばるな!」

 コウが叫ぶ。

「ルシファーと呼ばれたく無い理由は分かったわ。ルシファー」

「ルカだ」

 ルカはリリーがからかった事に気付かず、少し怒りながら、名前を言う。

「でも、リリスさんは? リリスは悪魔名だったかと」

 コウは思い出しながら言う。

「タケルはクローンの失敗作らしい。タケルは恐らくルシファーの遺伝子を持っている。つまりは、俺と兄弟になる」

「失敗作って……」

「複製ミスと呼ばれるらしい。魔力が他のルシファーより弱くてね。だからって、人間に負ける事はねーけど、タケルは本来処分される予定だったみたいでな。だが、俺やレイがタケルを助けた。友達だからな」

「本当に気に入らないわ。人を何だと思っているのよ。ぶん殴りたい位」

「だから、もう、ぶん殴った」

「よくやった」

 リリーが親指を立てる。

「だから、悪魔がここにいるんですよ。リリーさん忘れないで下さい」

「ううん。ルカは間違って無いもん」

「それが、嘘かも知れないんですよ」

「確かに」

「いや、嘘じゃないから、異端審問にかけられるのはゴメンだ」

「まあ、冗談はさて起き」

「悪魔を騙すな!」

「マザーが人工知能システムだけなら、星は無くならないはず、壊す必要もなかったはず、違いますか?」

「いや、マザーは星を統べるデカいコンピューターだったんだよ。星その物がマザーによって支配され、マザーは悪魔達の行動一つ、食事や仕事等、全て監視していたんだ。マザーの破壊は星を破壊する事。マザーが星の中枢でマザーが星のコアだったからな。って、付いて行けて無いだろう」

 2人は目が点になっていた。

「まあ……」

「だよな。30年前にここに来た時も、この話はしなかったよ。何か紛らわしい気がしたから」

「分かる事はルカさんの星が、ここより、遥かに文明が発達していた事位ですね。メカが人を支配するなんて、理解出来ないが、マザーが星、全ての神だった」

「その位理解出来ればいいな。コウ達は優秀な方だよ」

「マザーがムカつく存在で、ルカはマザーをぶん殴って壊したんだよね」

「まあな」

 ルカは苦笑いする。

「しかし、それだけで、破壊しますか?」

「確かにな。そもそもマザーは戦争の道具を作り出し、戦争をさせたかったんだ。マザーは他のルシファー遺伝子を持った俺の兄弟に戦争させ、真の魔王を作り、絶対的な力に特化した星を作ろうとしていたんだ。壊れてしまった以上理由は分からないがな。俺やレイ何かは、里親がマザーに反対していたせいもあって、戦争の道具として育て無かった。結果、消されたけどな」

「そんな。酷い」

 リリーの目が珍しく潤んでいた。

「まっ、お陰でマザーを殴れて、生き抜く力をくれたから、親には感謝しているよ。墓はもう無いから、会いに行けないけどな」

 ルカも悲しい顔をした。



『マザー』

 口にするのもルカは拒んだ言葉である。

 ルカは幼少期を田園風景が一面に見える田舎で育った。

 夕暮れ刻。ルカとレイとタケルが走って家路に戻っている。

 ルカ達は友人であり、家族でもある。

 普通の家庭で育つと言う、やり方ではなく、沢山の子供達と一緒に過ごすやり方で育った。

「こら、タケル置いていくぞ!」

 ガキ大将なルカが走って、後ろのタケルに言う。

「待ってよ。ルカ。レイ!」

 今とは全く異なり違いぽっちゃりとした、おおらかなタケルが2人を追いかけて、転んだ。

「もう、タケルはすぐ、転ぶ」

 見かねた白くて変な形の帽子をかぶったレイが、タケルの所に向かい、手を差し伸べる。

「でへへ。ありがとう。レイ」

 タケルは笑いながら、手を掴む。

「ほら、早くしないと、又ミネに怒られちゃうよ!」

 ルカも2人に近付く。

「それはルカだけだよ。僕とタケルはサイさんが守ってくれるもん」

「えっ、何で、あのババア。2人を贔屓ひいきしやがって」

「日頃の行いだよ。サイさんにババアって言ったら、また、怒られるよ」

 ルカのババア発言にレイが冷静に突っ込む。

「まあ、レイはサイに気に入られているもんな。将来は医者か?」

「うーん。僕、医者より、帽子屋になりたいんだよね」

「帽子屋? あははっ、そりゃ、レイらしいや」

「客になってくれる?」

「そりゃ、デザインが良かったらな。なあ、タケル?」

「うん。レイの帽子に興味ある」

「ほらな。それより、早く帰ろうぜ。腹減ったよ」

「お腹空いたね」

「帰るぞ」

「うん!」

 3人は元気に走って帰った。

 幸せな少年時代を過ごしたが、ある日それが脆く崩れ去った。



 ルカが14歳の時だ。

「ミネ。サイ」

 ルカ達は凄惨な現場を見る。

 ルカと同じ顔をした青年がミネとサイを惨殺したのだ。

「何故……」

 ルカは青年を睨む。

「よくも2人を!」

 それを見て先に逆上したのはタケルだった。

 タケルは木刀を拾い、青年に殴りかかる。

「出来損ないか、ついでに処分するか」

 青年が指先から雷を発生させ、タケルに向かって飛ばす。

「止めろ。タケル!」

 ルカは咄嗟にタケルの前に立ち、バリアを発生し、雷を弾いた。

「流石、成功体は違うな。さあ、もっと楽しもう。我が弟よ」

「ゴメンこうむりたいな。レイ。行けるか?」

 ルカはレイの肩を持つ。

「はい」

 レイは放心状態のタケルの腕を掴み、瞬間移動する。

「まあ、いい。狩りは楽しまないとな」

 青年は家に響く程の高笑いをした。



 3人は裏山に逃げ込んでいた。

「ルカは知っていたんですか?」

 レイが質問する。

「まあ、薄々は、この世界が可笑しな事。ミネやサイが何かと戦っていて、大事な事を隠していた事位は」

「どうして、2人は冷静でいられるんだ。2人があんな風になったのに!」

 タケルが涙混じりに言う。

「僕も悲しいよ。悲しいけど……」

「泣いてちゃ、前に進め無いだろう。レイ。どうやら、レイは全部知っているみたいだな」

「全部は知らない。でも、サイは僕にある物をくれたんだ。もしもの時にって、その位しか知らない」

 被っていた帽子を取り、手を入れ、ガサガサとあさる。

 しばらく、あさる。

「何、入れているんだよ」

 ルカは前々から、中身を気にしていた。

 レイいわく、帽子は何とかポケットのような仕組みをしているらしい。

 本に封じるルカの能力とは違っていた。ルカの場合は魔力で武器を圧縮させ、いわゆる本にファイリングしているだけである。

 帽子の中を覗くと、そこだけ異界に通じていた。

 仕組みが分かっても、ルカは真似が出来ないので、流石道化師メフィストフェレスの能力であった。

「ヒ・ミ・ツです。ありました」

 緊迫した状況下で、ルカが突っ込みを入れたくなる程、しばらくあさり、一冊の手帳を出した。

 ルカが受け取り、ページをめくり驚く。

「これは……やっぱり」

「何が書いてあるの?」

 タケルが聞く。

「悪いが自分で読んでくれるか?」

「うん」

 ルカはタケルに手帳を渡した。

「この星は狂っていやがる」

 ルカが苦々しい顔をする。

『この星は箱庭のようになっている。子孫はクローンにより何体もの子らが作られ、箱庭に入れられる。同じ遺伝子を持った者が複数人存在し、箱庭内では最強の王を作り上げる為、戦争が日夜行われていた。私とミネはその忌まわしい因果を断ち切る為に抗う事にした』

 サイの遺した手帳の内容だ。

 恐らく、それが、あの2人のやってきた人生の全てだろう。

 ルカはそれ以上の情報を今は必要としなかった。

 それが、正しいかは分からないが、少なくとも、あの二人を殺した青年より立派であった。

 しばらくは目標になりそうだ。

「でも、ルカ。これから、どうするの?」

 レイが聞く。

「決まってる。ミネやサイの遺志を継ぐ。だが、今は目の前の事だけに集中しろ」

「みぃつけた。ダメだよ。逃げてばっかじゃ、楽しく無いだろう?」

 さっきの青年が目の前に現れた。

「俺は戦いを楽しい何て思わねーよ」

「そうだろうか。身体は嘘つかないと思うぞ。ルシファーの血は殺戮を望む血なのだから」

「あっそう。御託はいいよ。とっとと、始めよう」

 ルカは本を取り出し、剣を出す。

「力の使い方まで、愚かな男と同じ何だな。底がしれる」

「ミネをバカにするな!」

 ルカは突進していった。



 しばらくの後。

 ルカは青年を殺害した。

「ルカって、強かったんだね」

 レイが冷静に言う。

「隠していた訳じゃねーけど、目的も無く、力を振るうのは、雑魚がやる事だから、やるなってミネが言っていたから、今まで使わなかっただけだよ」

 目は虚ろとなり、いつもの輝きが無い。

 しかし、その目はしっかりと、あの青年の血だらけの死体を見ていた。

「ルカ」

 タケルは初めてルカが遠い存在のように思えた。

 物心ついた時から3人はいつも一緒だったのに……。

「それより、2人の墓を作らないといけないな」

 ルカはタケルの気持ちを察して言う。

「そうですね。あのままもよくありませんしね」

 レイも賛同する。

 その目には涙が光っていた。

 今までレイは我慢していたようだ。

 それを見てタケルは泣き出した。

「タケル。先に泣かないでよ」

 レイも一緒に泣き出した。

「だって~」

 次第に酷くなる。

「あっ、こら、2人供。俺だって」

 一人遅れたルカも泣いた。



 3人はお墓を作った。

「これでよし」

 ルカが墓標を立て、手を合わせる。

「ルカ。これからどうする?」

「どうって、決まっているだろう。手帳に書いてあった反乱軍と合流するつもりだ」

「復讐でもするの?」

「それもあるが、それは二の次だよ。2人がそんなの望んでいるとも、思えないし、ただ、真実が知りたくなった。俺達は知る必要があるように思えるんだ。上手くは言えないけど、運命だと思う。レイとタケルはどうする?」

「僕もルカに着いて行きます。ケガしたら、治すの僕しかいませんから」

「治癒能力も使えるよ」

「大ケガして動けなかった時の事を言っているんです!」

 ガキ大将のルカだ。生傷が絶えない男なのは手に取るように分かった。

 レイはルカの身を案じている。

 案の定必要となったのは、言うまでもない。

「そうか。タケルは?」

「僕も行く。だって、2人が行くから、ダメ?」

「何で、ダメ何だよ。反対する訳無いだろう。なあ、レイ」

「はい」

「ありがとう」

 タケルは2人に感謝した。

 こうして3人は戦禍に足を踏み入れる事になった。



 再び馬車の中。

「ってか、そんな事が知りたいってだけで、こんな事普通しねーよな?」

 昔の事を思い出し、機嫌を悪くしていた。

 もし、コウの狙いが、本当に前の星の話が聞きたいだけだったら、後で呪い殺そうかと思っている所だ。

「ええ、しませんよ。本題は別にあります。ルカさん。貴方は本当に勇者ロランの居場所を知らないのですか?」

「何が言いたいんだ?」

「そのままの意味ですが、知らないとしても、勇者ロランがどんな状況か貴方は知っているはず」

「だから、知らねーよ」

「ちょっと、コウ。何で、父さんの状況をルカが知っているのよ!」

「では、聖剣を持っているのに、何故、知らないと言い切れるのですか? 最後に勇者ロランを目撃したのは、恐らくルカさんだ。時期にしたら、聖剣を委ねてすぐになります。勇者ロランはどんな事情であれ、聖剣を誰かに委ね無くてはならなかった」

「証拠も無いのに言うな!」

「そうやって、冷静さを失っているのが、何よりの証拠です。魔王が一騎士の言葉に冷静さを失うはずはありませんから」

「ルカ」

「知らない。喩え知っていたとしても、答えられない」

「そうですか。ドレイクの森。そこにいるんですよね?」

「知らないな」

「ねえ、コウ。ドレイクの森って?」

「移動する不思議な森で、そこにはドレイクと呼ばれる大人しい樹のモンスターと一部のエルフが生息しています。一ヶ所に留まらないので、探す必要があります」

「モンスターがいるなら、退治しているんじゃないの?」

「先程も言いましたが、大人しいモンスターです。しかも移動しています。退治と言う考えは可笑しい」

「じゃあ、何でいるのよ」

「それは……」

「ああ、分かった。コウ。もういい」

「ルカさん。何か言いましたか?」

「ちぃ、言わなくていい。これは、俺が言わなくちゃいけない事だ」

「どう言う事よ。はっきりと……」

「そうだな。いつまでも、隠せるもんでも無いしな」

 ルカは一呼吸する。

「居場所は知らない。だけど、ロランがどうなったかは知ってる。リリーに会わせる為にも探さなくちゃいけなかった。ロランはドレイクの森に確かにいるんだから」

「ねえ、父さんは……」

「リリー。落ち着いて聞いてくれ。ロランは確かに生きている。でもな。もう人じゃないんだ」

 ルカの言葉にリリーは言葉を無くした。

「ロランは俺に聖剣を委ねたんだ。自分に限界がきていたから」

「そんなの嘘よ!」

「ああ、俺もそう思ってたよ」

「第一人間がモンスターになる何てあり得ない!」

「いや、モンスターになるさ。見ただろう。屋敷がモンスターになっていた所を、闇は心の隙間に入り込むんだから、それは人間も例外じゃない」

 ルカはキッパリ言う。

「違う。そうよ。悪魔が邪気を出したから、そうに違いない!」

「残念ながら、悪魔は邪気を出して人間をモンスターにする事は出来ません。精々、操る所までです」

「コウ……」

「これは、立証されている事なので、庇うとかではありません。僕は監査の立場を取っていますが、それと同時に人間と中立に立たなければならないと感じています。そうしなければ、判断を誤ると思っていますし、偏見から来る闇で、悪魔が逆上してはどうしようもありませんから」

「そっか」

「嘘よ! 嘘よ! 嘘! 父さんはモンスターに何かなって無い」

 リリーは涙を溜めて否定する。

「それなら、今すぐ真意を確かめに行きましょう」

 コウはルカの手錠を外した。

「本当はこんな事をしたくは無かったのですが、アナスタシアさんから、ドレイクの森の場所を聞いた時、可笑しいと思ったので、ルカさんを拘束しました」

「って、まさか、この馬車は……」

「ええ、本部ではなく、ドレイクの森に向かっていました」

 タイミングよく馬車は止まる。

 外には怪しげな森が広がっている。

「悪魔を騙す何ていい度胸しているじゃないか。全く、とうとう来ちまったな」

 ルカは覚悟して、ドレイクの森を見ていた。



 ドレイクの森に足を運んだ、ルカ、リリー、コウ。

「何か、怖い」

 リリーは恐がっている。

「まあな。俺も好きじゃないな。ここは異物をことごとく嫌うからな。殺気が伝わってくる」

「襲って来ませんかね?」

「何、弱気になっているんだよ。騎士のクセに。まっ、襲ってはこないだろう。エルフは頭のいい種族で争いも好まないし、ドレイクも強い力を持った輩には命が惜しいから無能な戦闘は行わないよ」

「強い力って?」

「俺以外にいるか?」

「いませんね」

 魔王と言われているだけあって、何とも心強かった。

「ヘタレだからな。戦闘は避けたい。よって魔力を解放させる」

 ルカは赤い本を出し、ページを開くと、本を燃やした。

「ルカさん。何を?」

「俺は本に力を封じていてね。燃やせば、力が戻る仕掛けだ。まっ、今持っているの全部燃やしても、全てが戻る訳じゃねーけどな」

 ルカが説明する。

「何も変わっていないようですが?」

「レベル1から、レベル10になったぞ」

 ルカはドヤ顔をして言う。

「大して変わって無いじゃないですが!」

 コウが叫ぶ。

「期待して損しました」

 コウは呆れる。

「まあ、この位で大丈夫って事だ」

 ルカは笑っていた。

「もう、そんな事はいいから、早く行きましょう」

 リリーが苛立ちながら言う。

「そうだな」

 ルカは聖剣を出す。

「どうするんですか?」

 コウが聞く。

「こんなだだっ広い場所をがむしゃらに歩くのは能が無いからな。こいつに居場所を見つけて貰うんだよ」

「出来るんですか?」

「まあ、ここまで近くにいれば、可能だろう。何たってこいつはロランが作り出した物だからな」

 聖剣が光りだすと、平凡な剣は形を変えた。

「これは……」

 コウが驚く。

「勇者ロランの聖剣だ」

 大きく、長く、派手な装飾が施された剣だった。

 リリーもこの剣を見て圧倒される。

「流石、勇者の剣だ。いつ見ても迫力あるな~さっ、案内してくれ」

 聖剣は宙に浮き、ルカに言われるがまま、主の元に向かった。

「さっ、行くぞ」

 ルカを先頭に3人は森の奥に向かった。



 しばらく歩いていると、ルカは立ち止まった。

 目の前に人面樹がいる。

 リリーに似た雰囲気を持つ顔の男である。

「久しぶりだな。ロラン」

「ルカか……何故、ここに……」

 ゆっくりと話している。

「随分な言い方するな。あんたの娘連れて来たからだよ。俺は一言も連れて来ないとは、言って無いし、あんたも連れて来るなと、頼んじゃいない。そうだろう?」

「お節介な悪魔だな……」

 ロランは薄ら笑いをする。

「悪魔だからではなく、それが俺の性分だよ。ほら、リリー」

「父さん……」

 リリーが恐る恐る声をかける。

「リリーか。まさか、この姿で再会するとは、皮肉だな」

「何でこんな事に……」

「人の闇は誰にでもある物……」

 ロランは静かに話しだす。

「その闇に負けてしまった……」

「嘘よ。父さんは……ルカがやったんでしょう?」

「ルカはお人好しにも、助けようとした……失敗したけどな……」

「そうだったな」

 ルカも認めている。

「しかし、人間が闇に飲み込まれ、モンスターになるには、相当の闇が必要なはずだ。何故こんな……」

 コウはロランを見て言う。

 少しの闇で人間がすぐモンスターになったら、世の中モンスターだらけである。

「そうだろうか……そうかもしれないな……だが、人間はそこまで強くもないのも確かだ。人間は闇に強い悪魔にはなれない……悪魔も人間にはなれない……力を欲した人間はいずれ闇にのまれる……これは、宿命何だよ……」

「嫌、そんなの認めない。諦める何て、父さんらしくないよ!」

 リリーが泣きだしている。

「らしくないか……リリーに何が分かるんだ?」

「父さんは勇者だから」

「勇者……人は勇者だから出来ると思い込んでいる。人は勝手過ぎだな。その点モンスターは気が楽だ。もしかしたら、初めから望んでいたのかも知れないな……」

「そんな……」

「これで、分かっただろう……勇者ロランは周りが望んだ勇者では無かったんだよ……」

 ロランは嘲笑う。

「酷い……」

 リリーは泣き崩れた。

「リリー……」

 ルカは唇を噛んだ。

「要はそれだけか?」

 ロランが聞く。

「いや、あんたの剣、リリーにやってもいいよな?」

「……何だ。そんな事か……その剣はとっくにお前の物になっておる。今更許可等いらない。好きにするがいいさ……」

「そうかよ。気に入らねーな。モンスターになって、そんなにいいか? リリー泣かして、何が嬉しいんだ? 帰ろう。用は済んだからな」

「うん……」

「じゃあな」

 ルカは先に歩きだした。

「リリーさん……」

 コウが心配する。

「大丈夫。行こう」

 リリーも歩きだす。

(これじゃ、どっちが勇者か分からないな。これがあの勇者ロランの成れの果てか……)

 コウは感慨深くなっていた。



 ドレイクの森を出て、ルカが口を開く。

「リリー。ゴメンな」

「謝らないでよ。別にあんたが悪い訳じゃないし」

「そう言って貰えると嬉しいよ。リリー、約束通り、聖剣をやるよ」

 ルカが何処からともなく取り出した鞘に、剣を収めた。

 その聖剣をスライド式にリリーに渡す。

「これで、あんたとの縁も切れるね」

「ああ、そうだな」

 ルカは淋しそうに言う。

 その後、帰りの馬車の中では、誰も口を開かなかった。



 その日の深夜。事件が起きた。

 この日は村には戻らず、近くの街の宿舎に泊まっていた。

「リリー……」

「あんたがいけないのよ。全て」

 眠っていたルカの首をリリーが締めていた。

「……俺が死ねば気が済むのか?」

 ルカは優しく、リリーの腕を握る。

「ええ!」

「そうか、ならやれよ……」

 ルカは覚悟を決めて言う。

 確かにルカのせいでもある。

 友の異常に気付かなかった。気付かないだけではない、助けだす事も出来なかった。

 娘であるリリーに恨まれてもそれは仕方なかった。

 リリーの異常にある握力でルカの首を折ろうとする。

 折らなくても、窒息するまで、強く締め付ける。

(分かっているさ……抵抗しても無駄だって事は……)

 ルカは腕を放し、目を瞑る。

 気が済むなら、それでも良かった。

「リリーさん。何をやっているんですか!」

 その時、異変に気付いたコウが、ルカの部屋に入り、リリーを取り押さえた。

「ゴホゴホ……コウ。何で……」

 ルカがむせる。

「悪魔の監視が僕の仕事ですから、3時間置きに様子を見るのも当たり前の仕事です」

「そんな事するのコウ位だぞ」

 一先ずは、コウの生真面目さにルカは救われた。

 ルカは電気を点け、リリーを見る。

 リリーの姿は2枚の黒い翼を広げ、黒い猫耳を付け、黒い尻尾もあった。

「コスプレ?」

 こんな時に緊張感を無くす発言をするのも、ルカである。

「そんな訳無いでしょう。冗談言わないで下さい!」

 コウが怒る。

「そうだった。リリー、モンスターになったんだな」

 ルカは悲しい顔をした。

「邪魔をするなコウ! ルカは父さんを!」

 コウから無理矢理離れる。

「ああ、否定しない」

「だからって、殺す事も死ぬ事も無いでしょうが!」

 コウはリリーのやり方もルカの考えも同意出来なかった。

「果たしてそれで、リリーの気が済むのか? リリーは俺が嫌い何だ。いつかやる日が来るのは目に見えていた。早いか遅いか、それだけだよ」

「だったら、大人しく死ね」

「ああ、出来るなら、そうしてくれよ」

「貴方って人は、死ぬのが怖く無いのですか?」

「ああ、怖いさ。でもな、俺は悪魔だ。首をどうこうする位じゃ死なないし、死ね無い。だったら、リリーの気が晴れるようにする方がいいだろう? リリーも闇に捕われてしまいモンスターになったんだから、そうだろう? リリー」

 ルカは悲しい顔をしてリリーに聞く。

「私がモンスター?」

 リリーは気付いていなかった。

「そうだ。リリー、よく見ろ」

 ルカは鏡を取り出し、リリーを写す。

 リリーは自分の姿を見て驚く。

「そんな……」

 リリーはショックを隠しきれないでいた。

「でも、何で、こうも立て続けにリリーさんの家族がモンスターに……」

「呪い何だと。十数年前、ロランがある冒険をした時にしくじり、大事な家族にある呪いが掛かったんだ」

「呪いですか?」

 コウが聞く。

「闇を人よりも多く吸収し、モンスターになりやすくする呪いだ。家族に降り掛かった呪いで、ロランの伴侶、つまりリリーの母親はすぐ、モンスターになってしまった。それを自らの力で退治した。その時に、伴侶の魂とその時に吸収した闇を封じた聖剣を作り上げたんだ」

「そんな嘘よ。母さんは病気で死んだの! 呪い何かじゃない。惑わさないで!」

「ロランはそう言ってリリーに言い聞かせたんだよ。言える訳無いだろう。自らの手であやめた。何て」

「違う。違う!」

 リリーは頭を抱える。

「リリーに冒険者になって欲しく無かったのは、リリーに闇を吸収させたくなかったからだ。付け焼き刃にしかならないと思うが、全てリリーの為だった」

「違う。ルカがモンスターにしたんだ。全部ルカが悪い。悪魔さえいなかったら、その呪いだって悪魔の仕業よ……」

「否定しても無駄だと思うから、あえてしない。そう、思うのは勝手だからな」

「ルカさんそうやって、リリーさんを煽らないで下さい。違うんでしょう?」

「どうだかな。呪いとか出来無くは無いしな」

 ルカは恍けている。

「僕は貴方を信じていますから。それで、元に戻せないんですか?」

「リリーにその気が無かったら無理だ」

「リリーさん。これでいいんですか? このままモンスターになって?」

「嫌よ。でも、ルカを倒せるなら、それでも……」

 黒い爪を伸ばし、ルカに攻撃をする。

「ほらな」

 ルカは軽々と避ける。

「ほらなって……」

 コウがもう一度羽交い締めにして、リリーの動きを止めた。

「リリーは俺や悪魔が嫌い何だ。その悪魔に戻して貰うのだって、屈辱的だと思うよ。俺は」

「だからって、このままにも出来ないでしょう」

「まあ、そうだな。ロランには、リリーの事、頼まれているし」

「だったら!」

 リリーは隙を見て再び離れる。

「だからって、無理矢理戻す事は出来ないよ。そこまで、俺の力は万能じゃないからな」

「そんな……納得出来ません! 何とかして下さい!」

「と、言われてもな~まあ、何とかするしか無いよな」

 ルカはのん気に言うが、コウは全く考えていないとは思わなかった。

「リリーさん。このままでいいんですか? ルカさんを殺して、何になるんです。人間を辞めていいんですか?」

 コウが説得する。

「説得しても無駄だ」

 今度は聖剣を抜いた。

「殺す!」

「闇が心を蝕んで、失いかけてる。でもな……」

 ルカはゆっくりリリーの所に向かう。

「どうするんですか?」

「まあ、見てろよ。リリーその聖剣を見ろ。それでいいのか?」

 聖剣は黒く、禍々しい剣となっていた。

「話かけるな!」

「大丈夫だよ。それが終わったら俺は早々に姿を消すから、リリーだから話を聞いてくれないか?」

 ルカは優しく笑いかける。

「来るな!」

 リリーは近付いてくるルカに向けて適当に剣を振る。

 しかし、かすりはするが、命中しない。

「無駄だよ。その剣は聖剣だ。敵と見なした魔の物しか切れない。俺は魔の物だが、敵じゃない。聖剣が敵と認識してないんだよ」

 ルカは優しくリリーを抱き締めた。

「リリー。ゴメンな。ロランを救ってやれなくって、だから、リリーだけは救いたいんだ。リリーは闇に負けちゃダメだ。リリー……」

「……ルカ」

 ルカの鼓動が聞こえる。

 人間の心臓の音と変わらない。温かく落ち着く音だった。

 悪魔と言ってもルカは人間と何も変わらなかった。

 リリーは聖剣を床に落とす。

「リリー状況が分かるか?」

「うん」

 リリーは我を取り戻し出した。

「そうか。リリーはどうしたい? このままモンスターになって俺を殺すか?」

「いや!」

 リリーは拒絶する。

「分かった。それが聞けただけで十分だ。今、戻してやるから、今度は失敗しない。安心しろ。リリーは強い。元に戻るよ」

 そう言いルカは白い翼を広げ、魔力を一気に放った。

 その魔力は白く光り、周りの空気を温かく包む。

(温かい。悪魔の力とは程遠いな。確か、魔王ルシファーは元々は天使だった説があったけ。ルカさん。貴方は一体……)

 コウはルカの力に見惚れてしまった。

 リリーの身体から闇が無くなり、その闇が全てルカの身体に移動し、吸収していく。

「リリー。忘れないでくれ。ロランはリリーの事が大好きだ。そして、俺もリリーが大好きだよ……」

 リリーが最後に聞いたルカの言葉である。

 その後、リリーは気を失って、どうなったか覚えていない。

 目を開けた時には、身体は元に戻りルカの姿が何処にも無かった。

 ルカは文字通り、リリーの前から消えたのだ。

 リリーの傍にいたコウにルカはどうしたかと聞いた。

 コウも知らなかった。

 追い掛けるのが騎士の役目だが、リリーの所にいて欲しいとルカがお願いしたのだ。

 コウは断る事が出来なかった。

 ルカの気持ちをコウも察したのだ。

 リリーはそれを聞いて、怒りをあらわにした。

「死ねとは言ったけど、消えろとは言って無いわ!」

 物は言い様である。

「コウ。ルカを探すわよ。そして、今度こそぶん殴ってやる!」

 これもリリーなりの愛情表現何だろう。

 コウはそれに逆らう事が出来ず、今度はルカを探す旅に出た。

(ルカさんが無事とは限らないのに……)

 コウは別れ際に、ルカの異変を感じていたのだ。



 ルカは意外と早く見付かった。

 と、言うか、アナスタシアに情報を聞こうとした所に、新しい冒険を探していたリリスがやってきて、リリスに聞いたのだ。

 ルカはレイの家にいた。

「急に姿を消して、ぶん殴りたいから案内して!」

 リリーが意気込むと、リリスは少し複雑な顔をして、レイの家を教えた。

 二人はすぐにレイの家に向かった。

 レイは小さな村の一番大きな屋敷に住んでいる。

 帽子で富を築いたとは思えない広さだったが、それは別の話だ。

 レイはリリーとコウを見て、リリス同様に複雑な表情をしたが、ルカの所に案内した。



 ルカはレイの屋敷の一番奥の部屋にいた。

 青白く、血色の悪い顔をルカはしており、死んだように眠っていた……。

「どうして?」

 リリーはルカの手を握る。

 死んではいないが冷たく、あの時感じた温かさを全く感じる事が出来なかった。

「ねえ、これどう言う冗談よ。死んで無いんでしょ、目を開けなさい!」

「確かに死んで無いけど、酷く衰弱しているんだ。しばらくは目を覚まさないよ」

 レイは他人事のように言う。

「しばらくって、どの位よ!」

「10年か20年かもしかしたら、50年以上か100年になるかも、まっ、悪魔にとっては大した時間じゃないよ」

 レイの言っていたしばらくも、悪魔の単位だ。

 人間にとって、しばらくではない。当分目を開けない。それ程、ルカは衰弱しているのだ。

「どうしてこんな事に……」

 リリーには分かっていた。

 しかし、口にしないといけない気がした。

「分かっているでしょう? 悪魔にとって、闇や呪いは力の源になるけど、吸収し過ぎは毒にしかならない。人間の抱える多くの闇は悪魔にとって許容範囲を超え、毒になるんだ。しかも一番強力な呪いでもある訳だし、ルカの身体は死なないまでも多くの闇を吸収し、衰弱したんだよ」

 レイが止めをさすように言う。

「私、ごめんなさい!」

 レイに頭を下げる。

「別にいいよ。ルカが自分の意志でやった事だから。僕やリリスが止めても、やっていたよ。ルカって、そう言う悪魔だから、ロランさん救えなかった時も、自分のせいだと責める位だし。全く、本当にお人好しだよね。悪魔の風上にも置けない位」

 レイは微かに笑った。

 リリーの罪悪感を払拭させるように、言っているようでもあった。

「だから、気にしなくていいよ。ああそうだ、ルカねリリーが救えて幸せだって言っていたよ。本当に好きだったんだね」

 レイは言い残し、部屋を出た。

「ねえ、ルカ……」

 リリーはルカを呼ぶが、反応は無い。

「ありがとう……」

 しばらく、じっとルカを見ていた。

 ルカは確かによく見ると美男子だった。

 だから惚れるとか、それは別の話だが、リリーは今、ルカに興味があった。

 そして、その男が今目の前で眠っている。

 受け入れたく無かった。

「ねえ、どうして私を助けたの?」

 ルカに聞く。

 反応が無いので、独り言になってしまった。

「リリーさんだからじゃないですかね?」

 見兼ねたコウが話しだす。

「その力を持ってすれば、ロランさんを助ける事が出来たと思います。結果は同じでしょうが……」

「大好き……か、ねえ、私、これからどうすればいいかな?」

 コウにあえて聞く。

「笑顔に毎日を過ごせばいいと思いますよ」

 コウが笑う。

「そうよね」

 リリーもつられて笑った。



 それから、数日後。

「本当に行っちゃうんだ」

 リリーが言う。

「ええ、本部にルカさんの事を報告しないといけませんしね」

 コウの見送りをしているのだ。

「いつでも、いらっしゃい。手料理ご馳走するわ」

「はあ、ありがとうございます」

 リリスもリリーと一緒にコウを見送りに来ていた。

 コウは思わず曖昧な返事をする。

(本物の女性ならな……)

 そして、心の中で嘆いた。

「それでは」

 コウはバイクを走らせ、二人の前から去った。

「リリスさん。あのー……」

「リリスでいいわよ。それにこの話はもうしない約束でしょう。だから、気にしてないわ」

「十分、気にしてますから」

 リリスはリリーの頬を笑顔でつねっている。

 リリーはリリスを見つけ、謝罪した後、リリスに冒険者の仲間にして欲しいと頼んだ。

 リリスはあっさり承諾し、2人は一緒にいるのだ。

 リリーはある目標が出来ていた冒険者になって、魔法を極める。

 目標としてはありがちだが、あわよくば、ルカの呪いも解こうと考えたのだ。

 ルカはリリーの呪いを自ら受けた形になる。モンスターにならないのは、それが悪魔だったから、それだけの理由で何十年も眠り続け、話が出来ないのは、リリーにとって苦痛でしかなかった。

 リリスにその事を相談した所、驚き、頬をつねったが、笑顔で了承してくれた。

 後で聞いたが、ルカに頼まれていたらしい。

 ルカは自分の行く末を薄々分かっていたようだ。

 リリーを許す許さないはリリスの自由だったが、リリスも悪魔だ。

 しばらく待つ事に抵抗が無かった。

 悪魔は思っていた以上に寛大な生き物のようだ。

「1人減ると寂しいわね」

 リリスが感傷に浸る。

「はい」

 リリーも返事をする。

「所でリリーって魔法使いになりたいのよね?」

「はい」

「だったら、ルカの書いた本を読むといいわ。あれで、少しは名の知れた作家なのよ」

「そう言えば、生計立てていたって、聞いたような……」

「その中に勇者ロランの事について書かれた本もあるわ。あっ、勇者ロランの伝説を追って見るのもいいかも。どうかな?」

「はい。興味あります!」

「じゃっ、決定ね。これから、楽しくなるわ」

 リリスは笑った。

 こうして、リリーは冒険者として、旅立つ事になった。

次回最終回!!

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