こいのぼり
それはある五月の晴れた日のこと。
小さな池の中に一匹の鯉がおりました。
彼はいつもひとりぼっちで、空をながめては物思いにふけていました。
彼は空をながめ、思います。
「こんな大空を、ゆうゆうと泳ぎたいな」
悲しそうな顔をして、彼はいつも大空をながめておりました。
そんなある日のこと。
空は晴れているというのに、しとしとと雨が降りました。
ですがその雨はすぐにやんでしまいます。
彼はいつものように空を眺めていると、あるものが目に入りました。
七色にかがやく橋が、池からずっとあこがれていた大空へに向かってかかっているのです。
彼は思いました。
「この橋をのぼれば、あの大空へと行けるんじゃないかな」
彼は思いきってその橋に飛び乗ります。
そして、その七色にかがやく橋を泳ぎました。
上へ、上へ、とのぼっていく途中に、彼はにんげんの男の子と目があってしまいました。
「あっ!! こいのぼりだっ!!」
――ある晴れた五月のこと、鯉は大空をゆうゆうと泳ぎましたとさ。
おしまい、おしまい。