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夏生詩集

琥珀色の音楽

作者: 夏生

これも長いです。エッセイを実験的に詩に変えてみました。



ちょっとした好奇心で入ったその店は

居酒屋が軒を連ねる界隈にあった


扉を開くと、ジャズの軽やかなリズムと

コーヒーの香ばしいかおりが迎えてくれた

店内ではジャズとコーヒーの香りが

手を繋いで楽しげに駆けまわっていた


私はコーヒーを注文し、

レコードから流れるジャズに耳を傾けた

十人入れば満席になるほどの空間には

一人でも心細くならない居心地の良さがあった


口ひげを蓄えた店主がコーヒーを

ゆっくり、ゆっくり運んできた

コーヒーはカップの淵ぎりぎりまで入っていた


私はコーヒーがこぼれないように

両手でカップを持ちゆっくり口へ運んだ

初めのひと口は湯船につかった瞬間の、

疲れが一気に消化されていく感覚に

よく似ていた



店内の壁一面に飾られた色鮮やかなレコードジャケット

コーヒーと同じ琥珀色の小さなテーブル

私の隣に座っていた白髪の男性客がジャズのリズムに合わせて

指をスナップさせていた

年代物のスピーカーの上に桃色のバラの花

狭い空間に時間はゆったりと、どこか楽しげに流れていた


この店を出ることが惜しくなった私は

もう少しだけ楽しませてくださいと

コーヒーのお替りを注文した


一曲終わると、サイフォンの丸いガラスの中で、

コポコポと軽やかな音が

素敵なインターバルの役目を果たしていた


芳しく優しいひとときだった


 

  

  



批評、感想頂けましたら幸いです。

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