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Act.05「PvP」#11


「はぁ、はぁ、はぁ……っ、はぁ……!」


 息が切れた。

 この世界の体はデジタルで、得られる感覚は偽物だ。

 酸素を求めると言う意味では呼吸を必要としていないにもかかわらず、俺の肺は一瞬前まで溺れかけていたかのように必死に喘いでいた。

 間断なく続く緊張、連続した詠唱、生身以上の運動量。

 限界を超えて振り絞ったという意識が俺の脳に伝わり、全身を縛り付ける様な途方もない疲労感を錯覚させるに至っていた。

 そう、これは錯覚だ。

 仮想世界の体には存在しない様々な感覚、それを唯一の生身である脳が情報を処理することで、現実世界での感覚を呼び起こしてしまう現象。

 脳が悲鳴を上げているのだ。

 俺の体はこんなに激しく酷使されたら耐えられるものじゃない、と。

 実際、現実ではそもそも運動部ですらないし、特別体を鍛えているわけでもない俺が、今やったような動きを経験したことがあるわけがない。

 この世界では己の意思の働きかけが、肉体をダイレクトに操作する。

 それが強く意識して望んだものであっても、逆に無意識であっても、だ。

 俺は長年のVR経験から、この体を酷使することには多少なりとも慣れている。

 意思の力で無意識を抑え込むことで、無理だ、できない、あり得ない、などと言う経験から生まれるネガティブなアクションを否定して、自らの体を可能な限りイメージ通りに動かしているのだ。

 しかし、幾ら自在に体を動かせたとしても、心の部分ではまだ折り合いが付いていないのだろう。

 抑え込まれていたネガティブなイメージは、こうして負荷をかけた後にじわじわと俺の体を蝕んでいく。

 激しい呼吸を何度繰り返しても、一向に止められる気配がない。

 俺の仮想の体は、ありもしない酸素を求めてひたすらにもがいていた。

 肩を大きく上下させながら俺は視線を上げる。

 全力で振り下ろした杖は地面に先端をめり込ませていた。

 俺はそれを見つめる様に、その小さな穴に身を捩じり込ませようとするかのように、気付かない内に膝を折っていたのだ。

 全身全霊を込めた先ほどの一撃は、まさに俺の中の何もかもを吸い取ってしまったようだ。

 力が上手く入らない……上手く操作できない体を無理矢理にでも引きずるようにして、俺は結果を見届ける。

 手にした杖から伸びていた炎は今は見る影もなく、細い糸のような弱々しい揺らぎが今まさに解けて消えた。

 視界の端に映るステータスは、俺の魔力が完全に枯渇したことによって、一時的なステータス異常である「魔力欠乏症」が発生していた。

 一定時間、魔法の使用不可、MP自然回復の停止など、魔法使いとしては致命的なものだ。

 自らが魔法を使い過ぎたことによって引き起こされるバッドステータスであり、これは己の実力も見極められない愚かな魔法使いへの順当なペナルティと言える。

 本来なら忌避すべきものだが、今の俺にとっては全力を出し切ることが出来た勲章のようなものに思えていた。

 馬鹿馬鹿しい話だと思うが、自分の全てを出し切って何かに注ぎ込むことが出来たと言う充足感と達成感が、疲れた頭には甘く沁みる様に感じられるのだ。

 興奮と言う熱病で火照った体には、その甘さが何よりも心地いいと思えた。

 カンデラは杖を俺に向けて構えていた。

 俺と同じように肩を上下させ、全身を激しく震えさせながら俺を睨みつけていた。

 血の気の引いた顔に壮絶な表情を載せながらも、やはり彼の口はあの不敵な笑みを浮かべているのだ。

 一種の病気だな、あれは、笑顔を絶やせない病。

 しかし、不思議と嫌な気はしない……いや、俺が何も感じていないのは、全てを出し切った疲労感や、喪失感が原因かもしれないけどな。

 ぐっと彼の体に緊張が走る。

 俺は仕留め損ねたのか。

 ならば、ここでやられるのは俺の方だ。

 魔法は使えないがステータス的にはまだ動けるだろう、逃げようとすれば、戦おうと思えば俺は問題なく動けるはずなのだ。

 それでも、今の俺は動けないままでいた。

 先の一撃が俺の全てであり、それを防がれたのならば俺の負けだという感覚があったからだ。

 奴がまだ立っていて、俺の剣が届かなかったと言うならば、それは俺の負けなのだ。

 敗者として、討たれる覚悟はできていた。

 カンデラは絞り出すようにして言った。


「……クソが、お前の勝ちだボケ……覚えてろよ……」


 それだけを告げると、彼の体はどうと崩れ落ちた。

 あの時に放った≪火剣≫による一撃は、俺の狙い通りに水のカーテンを切り裂いて、その奥に居たカンデラをしっかりと捉えていたのだろう。

 それによって、重装備に身を包んだ戦士のHPすらも溶かし尽くした尋常ならざる攻撃力を、その一身に受けたことで命を散らしていたのだ。

 彼がHPが尽きた状態で動けたのは、おそらく彼の強靭な意志の力だ。

 俺にとっておきの一言をぶつけてやりたくて、彼は動かなくなるアバターを無理矢理に動かして見せたのだ。

 俗にこれをバグと言う。

 VR系のゲームではアバターが死亡後に動くのは良くあることなので驚きは少ないが、彼が目の前でやって見せたのは、システムをも上回ってみせた彼の強い意思力の成せる業だと思う。

 口汚い罵りを受けたわけだが、不思議と彼に対して悪感情を抱かなかった。

 それもそうだろう、彼の言葉は文面だけ見れば友好的ではないが、その実、肉声に籠っていた感情はというと、どこか嬉し気な雰囲気も含んでいたように思えるのだ。

 その中に悔しさや、憤りが無かったわけではない。

 それでも、同じゲームを――同じ死闘ゲームを遊んだ仲間プレイヤーへの親愛というか、尊敬と言うか……友情のようなものがあるのだと、俺はそう思う。

 何故そう思うかと言えば、俺自身もそう思っているからだ。

 カンデラは口汚いし、PKだし、ついでに自己中っぽい部分や、KYな部分もありそうだったが……悪い奴ではないのだ。

 ちょっとヤンチャなだけで、俺と同じゲームが好きで堪らない人種なんだろう。

 負けた後にネチネチとした感情を抱いてしまう人間もいるが、彼がそういうタイプじゃないというだけで、俺はカンデラとは楽しくやっていけると思えた。

 まぁ、しばらくは対人戦はコリゴリと言った感じだな……楽しかったかどうかと聞かれれば、中々に楽しかったと言えるのだが、この疲労感や虚脱感にはしばらく慣れそうにもない。

 俺はふと思い出す。

 確か一分間ほどは死んだ場所にプレイヤーの意識が残留しているはずだ。

 俺はカンデラの死体に向かって、そこにいるだろう彼に向かって語りかける。


「先に言っとくけど……あとで怒るなよ?」


 それだけを言うと、俺の体は意思とは関係なく地面に伏せていた。

 俺はそれを、第三者の視点で眺めていた。

 自分の体を自分で眺めると言うのは何とも不思議な感覚だ。

 現実の幽体離脱というのはこういう感覚なのだろうか。

 俺が倒れたのは背中に刺さった一本の短剣が原因だ。

 くるっと振り返って見ると、先ほど俺が抱き止めた暗殺者風の冒険者が投擲したポーズで固まっていた。

 緊張感からか肩を大きく上下に揺らしながら……ついでに豊かな胸も揺らしながら、地に伏せた俺を見つめていた。

 なんか、触れたと時に思ったよりも大きい気がする。

 俺が意識しているから印象的に見えているだけだろうか。

 それにしても、死んだ後の視点ってのは中々いいな。

 戦場でこうして暢気にしていられるってのは、ついさっきまでギリギリの綱渡りを連続で続けていた俺にとっては、いい息抜きになる感じだ。

 むしろ、戦っていた時は余裕が無かったので見れていなかった全体の様子が、こうしてゆっくりと眺められるというのは、ある意味では「最高の特等席」と言えなくもない。

 死んだ場所からは殆ど動けないようだが、それでも退屈はしない感じだ。

 どうやら、さっきの女暗殺者は俺が与えた麻痺が解けて動けるようになったのでPK側の援護を……と、思ったのだろう。 きっとそうだ。

 間違ってもあの時に抱き付いた俺への復讐ではないと思いたい。

 柔らかくて中々に気持ち良い触り心地だったが、あれは不可抗力である。

 全身のシルエットを隠す格好で男女の判別はついていなかったし、それに何より戦場故多少のアクシデントは致し方ないのだ、他意は無い。

 彼女が被っていたローブはいつの間にか脱げていたようだが、表情を隠すようにスカーフで顔の半分を隠していたので、唯一特徴を窺えるのは目元と髪ぐらいか。

 髪はウェーブの掛かったセミショートで、色はやや明るめのダークブラウン……うーん、何色と表現すればいいんだ?

 あまりリアルでオシャレとか染髪には興味がないから、パッと色味が何なのか分からないんだよな。

 とにかく、栗色っぽい髪の色をしていて、瞳は光の加減のせいだろうか左右が違って見える。

 赤みを帯びた右目と、緑色っぽく見える左目。

 距離は十五メートルくらいはあるかな。

 この遠さで正確に俺の体を射ぬけるとは、いやー、大した腕だなぁ。

 俺と彼女の間には直接遮っているわけではないが、幾つかの交戦グループが出来ていた。

 それらに狙いを狂わされることなく、尚且つ、この乱戦で他の冒険者に狙われること無く俺を狙撃する腕前は、まさに一流の暗殺スキルだと言えるかもしれない。

 タイトルにもよるけど、VRの物理遠距離職は基本的にネガティブなイメージがある。

 この世界もそうだが、弓は狙いを付けたり引き絞ったりなど複数のステータス、プレイヤースキルを必要としていて扱いが難しいし、他の投擲アイテムもリアルでキャッチボールやフリスビーを薙げている時とはまた少し違った感覚になるんだよな。

 それにしても、彼女は意外と可愛らしい感じだな。

 女暗殺者って言うと、セクシーだったり、クールだったりで、キレイ系な感じのイメージが先行するんだけど、彼女はふわっとした柔らかな印象の方が強い気がする。

 ……重ねて言うが、別に柔らかい感触を肌が覚えてるからではなく、彼女の見た目や持っている雰囲気からだ。 他意はない。

 誰に言い訳してるんだ俺は。

 身長も少し小柄な方なのかな。

 遠間から見ているので良い比較対象が無くてハッキリとは言えないか。

 女性の平均身長がだいたい百六十センチ未満くらいと考えると、俺の認識では大抵が小柄だと思ってしまうから何とも言い難いのだ。

 流石に百五十以下ならば一目で小柄だと分かるのだけど。

 顔や体の輪郭もすらっとしているのだけど、女性的な魅力を欠いたものではなく、女の子らしい緩やかな曲線が豊富だ。

 シャープな感じではなく、キュートな感じだな。

 ……って、ダメだな。

 喪失感が大きいせいか、無意識が原始的な欲求でこの穴を埋めようとしてしまっているようだ。

 男として当然見たくない訳じゃないんだが、見境なくエロに傾いてしまうのはどうかと思う。

 思春期だもんねと言われればそうかもしれないが、どうせ大人になっても男の頭の中はエロで一杯だと分かっているので、思春期を免罪符にするつもりはさらさらない。

 と言うか、今の状況でじろじろと見ていると言うのは完全に覗きのそれだ。

 罪悪感もあるし、これを切っ掛けにして万が一でも変な性癖が目覚めたら嫌だな。

 これ以上は彼女に失礼……いや、これ以上も何も、十分に失礼だろう。

 意図的じゃないにしろ、彼女とは直に触れてしまったこともあるのだ、そのことを真摯に受け止めて卑劣な行為を続けるべきではないと俺は自分を嗜める。

 目下の問題は、彼女に謝るべきかどうかなのだが……と言うかアレだな。

 別にアバターの外見が女でも中身は男ってのは良くあるしな、別に彼女扱いする必要もあまり無いんだよな……いいや、謝罪は止めておこう。

 もし中身が野郎ならばお互いに気持ち悪い思いをする展開が幾つか予想できるし、女性だったとしても、気持ちが悪く感じる人もいるだろう。

 やはり戦場故致し方なし。

 これがシンプルで明快な法だな。

 もし機会があって、彼女の方から問い詰められれば素直に謝ることにしよう。


 ……って、あ。

 そんなアホ臭い自問自答を脳内で繰り広げていたら、俺を仕留めた女暗殺者が突如飛びかかっていった黒い影に切り伏せられていた。

 うわぁ、慈悲も遠慮も無い滅茶苦茶な一撃だ。

 死角から飛びかかって斬り伏せ、更に追撃とばかりに衝撃で倒れた背中に何度も剣を……これ、やられた方は何をされたか分からない恐怖があるだろうけど、周りで見てると別の恐怖を覚えるぞ。

 苦痛から逃れる様に伸ばされた手は空を切って地面に落ちた。

 あー、死体の瞳が開いたままとか怖い。

 この辺は別にリアル過ぎなくてもいいんじゃないかなぁ……冒険者がやられたらクリスタルになって~とかさ。

 この光景はちょっとインパクトがあり過ぎるからね、あとで運営に意見を提出しておこう。

 ん、そう言えば俺の死に顔はどんな感じだ?

 ……うわ、特に表情は無いけど満足そうな顔してる……なんだか恥ずかしいな、うわ、殺したい! 俺自身を殺したい! なんか恥ずかしい、やり遂げた感が出てて恥ずかしい!

 死体を殺したいって、俺もいいかげん言ってることがサイコだな。

 まぁ、あそこの女暗殺者を惨殺した黒い影の奴よりはマシか。

 今は死体を椅子にして戦場を眺めてるし、サマにはなってるけど怖いよマジで。

 と言うか、よく見るとあの黒いのマグナさんじゃないですか、やだー。

 前々から思ってたけど、マグナって戦闘になるとキャラが変わると言うかさ、普段はぶっきらぼうで俺様な、まさに冒険者って感じなのに対して、戦闘の時は本当に戦闘狂というか……狂戦士って印象があるんだよね。

 自らを省みない特攻スタイルというか、常に前線に居ると言うか、むしろアイツが居る場所が最前線みたいな。

 そんな空気が滲み出るんだよね。

 知らず知らずの内に、怖い人と知り合いになってたもんだなぁ。

 悪い奴じゃないって分かってるけど、ちょっと距離を取ってしまいそうだ。

 相手が傷付くだろうから、そういうのを無意識にでも態度に出さない様に心掛けないとな。

 こうして見ると、優男風な面影は別に残っていないわけじゃないんだよな。

 普段からエッジが効いた印象があるのは、彼がトゲトゲした発言をちょくちょく挟んでいるからで、実際には割と女性にも近い柔らかな体のラインをしている。

 血と硝煙が似合う戦場の女戦士。

 彼のことを知らない人にスクリーンショットを取って見せれば、普通に信じてくれそうだな。

 まぁ、そういう事はしないけどさ。

 万が一、ネタばらしをした時に変な趣味に目覚められても困るし。

 マグナは何か喋ってるみたいだけど、ここからじゃ当然聞き取れないな。

 さっきの俺の様に、倒した相手に向けて語りかけているのだろうか。

 マグナが彼女に何を語っているのかは気になるが、例え俺が聞こえる距離に居たとしても聞くつもりはないんだけどね。

 俺もさっきのやり取り聞かれたら恥ずかしいし、そんなもんじゃないかな。


 気が付けばホームタウンへの帰還が可能になっていた。

 カンデラの放った炎の嵐は彼が倒れたことでは消えなかったが、その勢いは急速に衰えていたのでこのまま放っておいても大丈夫だろう。

 最初に大規模なPKを可能とした上級魔法。

 これは俺の推測だが、本当に俺たちを迎撃するつもりだったのなら、最後に展開した時ももっと早くに全員を焼き尽くすような範囲の指定が可能だったんじゃないかと思っている。

 わざと大きな範囲と威力を設定し、その中で討伐隊とPKの決着を促す。

 其の為のフィールド作りをしたようにしか思えないのだ。

 また、俺の上級魔法は彼とは違う魔法だった。

 多分、幾つもの上級魔法が存在しているのだと思うが、習得した魔法に個人差が出たのは何が原因となっているのかが気になるな。

 俺があの魔法を覚えることや、逆にカンデラが俺の魔法を覚えることが可能なのかどうか。

 流石に上級魔法が個人によって違う『ユニークスキル』だとは思っていないが、一体どういう仕様なのだろうか。

 改めて感じたのピーキーであり、オーバースペックな部分のある魔法という存在。

 特に今回の俺の立ち回りでは、傍目から見れば戦士よりも圧倒的に有利に思えてしまったんじゃなかろうか。

 俺が思うに、魔法は想定していたよりも種族の特色を色濃く反映している。

 マギエルの俺と、アルヴのカンデラでは適した戦い方が違うはずだ。

 俺とカンデラは似たような戦法を取ったし、魔法使い同士の術比べのようなこともしたが、あくまで共通した点でお互いに「張り合ってみた」だけで、あれに付き合わなければならない道理は無かったのだ。

 もっと戦いかたを突き詰めていけば、魔法使いの動きは今とは違ったものになりそうだ。

 対人戦に備えてイメージや練習、特訓を繰り返していたが、実際の挙動が想定とは大きく違っていた現象も存在していたし、まだまだ魔法に関連した謎は多いようだ。

 などと、色々なことを考えるだけの余裕が脳に戻ってきたようなので、俺は戦場を後にして町に戻ることにした。

 決着の行く末を眺めていてもいいのだが、どうせ霊体(こんな状態)じゃここで他に出来ることは無いのだ。

 一旦戻り、疲れた体と心をリフレッシュしておく。

 その方が良いだろうと思うのだ。

 直接操作ではなく間接操作で『町への帰還』を選択して蘇生を開始する。

 光に溶ける景色を最後に、俺は瞳を閉じて再生の時を待った。




――――



 彼らが大規模な「イベント」を引き起こしてから、この世界では既に半日の時が過ぎていた。

 PKを引き起こしたグループ曰く、


「PvP要素のある本作において、その危険性や、対処方法、またPvPにおける戦術の確立などをテストに参加する全てのプレイヤーに意識してもらい、より広く意見を交換する機会を作りたかった」


 と言う主張に対して、やり方に対しての苦言などはあれど、その趣旨は多くのプレイヤーに概ね一定の理解を示してもらえた。

 この世界に集っている彼らは、元の世界――現実世界では一端のゲーマーと呼ばれる人種が殆どであり、その中でもハングリー精神を強く持った人間が選抜されていた。

 彼らにとってこの世界を良くすることは己の利益に繋がるのだ。

 富と名誉、そして自由の為に彼らは対人戦闘や集団戦闘に対する模索を始めた。

 また、それと同じくして追加された様々な要素も大々的に検証、研究され、その成果が続々と寄せられるようになっていた。

 新たな『箱庭』の領域を解放したことで第二の町が発見されたり、生産職が今までの武具とは一線を画す新たなアイテムの生産に辿り着いた。

 対人戦における戦術、パーティの構成などは予想以上に積極的な参加があって瞬く間に広がりを見せ、発見された大規模なダンジョンやクエストを前に血潮を滾らせる冒険者たち。

 一方で魔法使いと戦士の間に少しの溝が生まれたが、今はまだ目立ってはいないようで気に掛ける者は少なかった。

 このまま何もないかもしれないのだ、気に掛けることは他に沢山あるので冒険者たちはすぐにそのことを意識の底に沈めてしまった。

 沸き立つ彼らの感情の色は、まさに空を駆ける虹のように極彩色で溢れており、それらは複雑に絡み合って新たな色を生み出していた。

 今まさに、『箱庭』という小さなキャンパスに冒険者と言う名の筆と絵の具が、壮大な絵画を描き始めた瞬間だった。

 そこにどのような絵が完成するのかは、今はまだ誰も知らない。

ここまで長くなるとは思っていませんでした。

多分、このシーンは一人称じゃなく三人称視点ならばもっとあっさり終わっていたと思います。

これは構成のミスですね、申し訳ない。


あと、ジンは主人公に向いてないなと改めて思いました。

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