Act.03『Trial attack』#2
おー、凄いな。
斬って、斬って、回避して、斬る。
テンポよく、リズムよく、踊るように戦うビゼン。
長い黒髪と尻尾が流れる様に、彼女の動きの後を追うように宙に黒い残像を描き出す。
ガラスが砕ける音がして、角兎が光の粒となって溶けて消える。
残る角兎は四……いや、三匹か。
アカツキの方も順調に角兎を狩っている。
シノブの動きを水に例えるなら、アカツキのそれは炎だろうか。
膂力に任せて直剣を豪快に振りぬき、息もつかせぬ怒涛の連続攻撃で圧倒する。
背後から飛びかかって来た一匹を左手の拳骨で叩き落とし、剣による追撃をぶちかます。
ドラゴニアの高い身体能力が生み出す馬力を、臆することなく乗りこなすパイロットのおかげで、その高い性能を十二分に発揮しているといった感じだ。
被弾を恐れないためHPは徐々に減少しているが、高いステータスもあって、全く危険域まで落ち込む気配がない。
正直、生まれたてのキャラクターであそこまで戦闘力があるというのは流石にどうかと思ってしまう。
種族格差ここに極まれりといったところか。
ちなみに、角兎の攻撃をバカスカ食らうとマギエルは十発も耐えられずに死ぬ。
倒す速度も堅実な戦いを繰り広げるビゼンよりも、烈火の如く突撃するアカツキの方が早い。
ま、アカツキはVR経験が豊富なことを差し引けば、ビゼンことシノブの適応力は流石の天才肌と言えるだろう。
ぶっちゃけ、俺やカツキが最初にVRMMOやった時なんて散々だった。
イノシシ型のモンスターに追われて二時間逃げ続けた記憶は、未だにことあるごとに思い出す俺たちの恐怖の代名詞だ。
見守ること五分、全ての角兎を倒したので感想を伝える。
「いいよいいよー、世界狙っていけるよー」
「……なんなの、その投げやりな感想は」
世界のどこがいけないのか。
「だろ? 流石は俺様だ」
ほら、アカツキはポージングまで決めてくれるのにな。
俺様と言えばマグナを思い出すな。
攻撃意識が高いと俺様系になっていくのだろうか。
自分も気を付けないと俺様しそうだ。
キャラ被りになるし気を付けよう。
「まぁ、アカツキはともかくビゼンが思いのほか動けたので、ちょっと予定を変更しようと思うんだ」
「ほう」
「ん、どうするの?」
「一旦、町に戻るぞ」
むわっとした熱気が、扉を解放したと共に溢れ出て来た。
カンカンと金属を打ち付ける音と、炎の爆ぜる音が微かに聞こえてくる。
ドミナの町に唯一ある鍛冶場兼武器屋だ。
店員も魔法屋の理系や知的といった印象から、体育会系や脳筋といったマッシブな印象の人が多く感じる。
店内も心なしか少し汗臭い気がした。
利用するのは初めてなので、適当に店員を捕まえて話を聞いてみるか。
近くにいたのは小柄だが樽のようなゴツイ体格をしたおっさんだ。
肌が日に焼けており、テカテカと輝いている。
「ちょっといいか?」
「おう、らっしゃい!」
思った以上に元気な声が返ってくる。
顔は意外なことになかなか愛想の良さそうな感じだ。
髭も髪もぼさぼさなことから、どうやらドワーフだろうと当たりを付ける。
「武器を探してるんだが」
「おうよ! ……って、兄ちゃんは魔法使いっぽいが?
あぁ、後ろの二人のお仲間さんが入用なのか!」
へへっと笑って一人で見当を付けてしまう。
ドワーフの大雑把で喧嘩腰なイメージからは大分かけ離れたタイプだな。
目端も効くし、勘も鋭い好々爺といった感じだ。
「あぁ、その通りだ。 大剣と刀を探してるんだが、オススメはあるか?」
「あたぼうよ、こっちだな!」
ずんずんと床を踏み鳴らし、店の奥へ案内してくれる。
RPGではこういう町の武器屋は樽などに様々な武器を片っ端から突っ込んでいるような、かなり雑多な店内をしているイメージがあるのだが、この店は入口すぐはさっぱりとした小部屋、そこから一つ抜けた先からが商品の展示会場のようになっているようだ。
小部屋にも武器がないわけじゃないのだが、それらは武器屋としてのイメージを優先させた飾りなんだそうだ。
話を聞いてみると修理などの注文と引き渡しを行う目的があの部屋で、俺たちのような人間のための案内所も兼ねているらしい。
無骨な仕事場をイメージしていただけに、予想外にシステマティックな現実を見せつけられて目から鱗が落ちる印象だ。
実際、ディスプレイエリアは整然と武器が陳列されており、どの系統の武器がどれだけあるのか、どこにあるのかが一目瞭然だ。
これは利用しやすい。
武器屋のデザインを担当した開発者の、武器を見せる為のこだわりが感じ取れるようだ。
「大剣って言うと、やっぱこいつを外せないな」
おっさんは立て掛けた剣の一本を手に持った。
その全長は軽くおっさんの倍はありそうだ。
「片手、両手兼用のツーハンド系だな。
見分け方は簡単だ……この剣の柄の上、刀身に刃を持たせてない部分があるだろ?
こいつが、両手で持つ際に役に立つ握りになるわけだな。
もちろん、普通の柄も長めに作ってあるんだが、実戦で刀身が長すぎて不便な場合があれば、この部分の握りで多少は調節ができるってわけだ」
ツヴァイヘンダーとかの方が聞き覚えがあるかもしれない。
直剣をそのまま引き伸ばしたようなそれは、確かに大きな剣といった印象だ。
説明を聞くとなるほど、実戦を意識してるんだなと素人にも分かる。
まぁ、俺とアカツキは他のVRMMOでも似たような武器を使ったことがあるんだけどな。
もっとも、そのゲームでは刀身側の握りを使ったことがないんだけど。
普通の柄をそのまま持ってぶんぶんしていただけでオッケーだった。
こういう説明があるってことは、この世界ではそういう事態もあり得るってことだろうか。
「もう一つは人気商品だな。
ザ・男の武器と呼べるコイツはバスター系だな。
大物を討伐する為に用意したって経緯があるから兎に角でかい!
重さも相当だ、ドラゴニアの兄ちゃんでも扱いが難しいだろう!
しかし、その分は当てた時のガツンとした手応えが返してくれる!
並のモンスターならまさに一刀両断よ!」
漫画やアニメ、ゲームなどで有名な鉄板をそのまま武器にしたような大剣だ。
ドラゴンを殺したり、化物を殺したり、お肉を焼いたり、様々な活躍を見せる。
以前のVRMMOでも人気の武器だったな。
とりあえずぶんぶんしてた印象だ。
「……おっと、鉄板みてぇだからって肉は焼くもんじゃねぇぞ!」
がっはっはとおっさんが笑う。
良くわかってるじゃないか。
大剣を欲しているのはアカツキだ、彼の方を見ると……やっぱりと言うべきだな、バスター系に興味津々といった感じだ。
以前やっていたVRMMOでもバスター系担いでハッスルしてたもんな。
「よし、これに決めた!」
そう言って、バスターソードを手にする。
即断即決だな。
「次は刀を頼む」
「おう、こっちだ!」
おっさんは続いて刀のコーナーへ案内してくれる。
刀は店内のかなり奥にコーナーがあるんだな。
「うちでは刀はこの二本しか作ってねぇな」
一本は一般的な反りのある刀だ。
まさに日本刀だな。
「俗に刀って言われるとコイツだ……もちろん、カテゴリ的にも刀だ。
切れ味に特化してるから、硬いもんを叩くのには向かねぇな。
あとは多少デリケートだからメンテナンスが必要だ。
愛情を注げない奴はコイツを選ばない方が無難だな」
おっさんのテンションが急に下がり、まじめな声で説明する。
これが彼の本当の姿なのだろうか。
「んで、こっちも刀だが……見れば分かると思うが反りがねぇ。
耐久性と取り回しの良さを高めたもんだ。
ぶっちゃけ、性質は直剣となんら変わりは無いんだが……柄がとても長く作ってある。
グリップの良さを高めて、突いたり刺したりするのに適している」
確か長巻だったか。
刀身部分よりも柄の方が長いくらいだ。
わりと武器としてはマイナーな方だと思うのだが、一体どういう層を狙っているんだ?
ビゼンは両方を手に取り、あれこれと構えたり、振ってみたりして感覚を確かめている。
おっさんはその仕草を更に真剣に見つめていた。
……ただのエロ親父なのかもしれない。
「ジン、私はこれがいいな」
結局、普通の刀から一本を選ぶ。
彼女の腰に下げると少し長く見えるが、平均的な長さなんじゃないだろうか。
あまり現実の刀には詳しくないからな。
鞘も黒塗りなのでビゼンは変わらずまっ黒かと思いきや、赤い紐がアクセントになっていた。
別売りらしいのだが、ちゃっかりと買っているあたり流石女の子はしっかりしているということか。
ちなみに、二人の武器の支払は金を余らせている俺持ちだ。
二人の武器が揃ったので、おっさんに礼を言って店を後にする。
続いては隣の防具屋だ。
適当な店員を探して声を掛ける。
「おう、兄ちゃん! 防具も入用か?」
さっきのおっさんだった。
どうやら奥の鍛冶場経由で繋がっているらしい。
折角なので、おっさんに案内してもらい防具も整える。
見た目は殆ど変えず、単純に性能のグレードアップを行う。
特に前衛職の二人は装備が命だ。
防具のステータスは特に、命に直結しているので怠ることはできない。
アカツキは初期と比べて少し重装備に、ビゼンは鉢金と手甲が増えたのが主な外観の変化か。
ちなみに、自分は既にアップグレード済みだ。
それでも防御力に殆ど変化は無いんだよな。
魔法職の装備は防御能力ではなく、ステータス補正系になるみたいだ。
今度こそおっさんに礼を言って別れ、ギルド会館でクエストを幾つか受けて戦闘訓練を再開した。
近接二人、後衛一人。
重戦士と軽戦士に魔法使い。
タンク、アタッカー、ソーサラー。
いや、回復も使えるから魔法使いというよりは賢者の方が近いのか?
奇しくもパーティ内の役職がマギエルとしての設定に近づいていたことに気付く。
三人とメンバーが少ないパーティだが、戦闘はかなり順調だ。
マグナ達と組んだ時もいいパーティと言えたが、今の三人でもそれに引けを取らないと言っても過言じゃないだろう。
それは多分に俺とアカツキの連携のおかげだと言える。
長年、VRMMOでコンビを組んで遊んできた仲だ。
阿吽の呼吸で連携を合わせることができる。
豪快なバスターソードによる薙ぎ払い、それに合わせて生き延びた敵へ魔法による追撃を行う。
ビゼンも初めてながらよく動いてくれている。
残った敵のフォローへと奔走する。
まだまだぎこちない動きをしている所もあるが、戦果を見る分には上々と言えるだろう。
この世界の戦闘は多対多、もしくは多対一となることが殆どだ。
この常に多となるのが敵である。
冒険者側よりも圧倒的に頭数が多い敵に対して、一体どのように対処するのか。
そういう戦闘バランスで作られているようだ。
序盤の戦闘から左右前後と様々な角度から襲われ、パーティを組めばメンバーの数より多い敵を相手にしなければならなくなる。
戦闘に関するセンスを強く要求するゲームデザインだ。
今はゲーマーが多いのでこのバランスでも特に問題は無いだろうが、一般のプレイヤーが増えるとなると、この難易度では少々手応えがありすぎる……かもしれないな。
肩で息をするビゼンの為に、小休止を取ることにした。
雑貨屋で購入しておいた水や干し肉をお供に、森の中での休息を楽しむ。
気分はちょっとした遠足の様な感じだ……俺とアカツキは。
ビゼンはそれなりに疲れたようで、木を背もたれに少しぐったりとしていた。
「あなたたち、よくもこんな……ハードな遊びしてるわね……」
「そうか?」
「アカツキはともかく、ジンは何で平気な顔してるのよ……」
「俺の場合は慣れじゃないかな」
「慣れ……慣れれば、息が上がらなく……なるの?」
「あー、それは生身の感覚に引っ張られてるんだよ。
VRMMOの中では色々な情報を生身の感覚に置き換えてるよな?
例えば、ダメージを熱さだったり、軽い痛みだったり、重さだったり……そういう風にVR世界ではシステム側が色々と生身の感覚を利用するんだけど、それらの情報の処理をするのは脳だ。
脳がVRと現実の区別を付けられないでいると、生身の経験と結び付けて「運動したはずだから息が切れるはず」とか「運動したらお腹が空くはず」なんて色々な錯覚をするのさ」
ビゼンはさっとお腹を抑えて、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
俺は何も言わずに干し肉を差し出し、ビゼンはそれを黙々と口にする。
アカツキは既に一袋完食して二袋目を開けていた。
革の水筒から飲む水は程よく冷えていて気持ちがいい。
この辺はゲームならではの快適な部分だろうな。
「……ふぅ、錯覚ねぇ」
水を一口こくりと飲み、教えたことを反芻しているようだ。
「VRって考え方によっては錯覚で出来た世界だからな。
とある研究結果では子供よりも大人の方がより深くVR世界にダイブすることが出来るらしい。
その理由は、様々な経験を多く積んだ方が、VRが構築する世界の粗を個人の経験から脳が補正するように働くからだそうだ。
大人になってからVRMMOにハマってしまうと抜け出せない要因の一つとも言われてるな」
「ふむ」
「俺は大人なんだから個人の好きにさせてやれよ、と思うんだけどね。
昔でも「ゲームは悪だ」みたいな風潮があったみたいだし、中には「子供はゲームと現実の区別がつかないからやらせるべきじゃない」とかっていう、とんでもないことを言った人もいるみたい」
「うわ、アホ臭い……流石にそれは作り話でしょ? ジンの好きな都市伝説の類」
「残念ながら都市伝説じゃなく、一昔前ではそういう知識人の見解ってのがあったみたいだぜ?
子供でもその理屈はおかしいって分かるもんなんだけどな……」
「アカツキにまで言われるとか、本当に酷いわね……」
「まぁ、ゲームって結局は仮想領域でのシミュレーションでしかないからね。
どこまでいっても、ある仮定の上で成り立つ現象の調査を目的としたものだから、そこに善悪も何も無いんだと思う。
たまたま、プレイヤーが勝利条件とか達成条件をクリアする楽しみを見出したから娯楽としての側面があるだけだから」
「……なんか、ジンが難しいこと言ってると違和感があるわね」
「そうか?」
「そういう真摯な態度は学校の勉強でも発揮しなさいよ」
「それとこれとは」
「話が違うんだよなー」
「……全くもう、調子がいいわね」
そんな感じで休憩しつつ雑談を続ける。
「――そう言えば、ビゼンはどうだ?」
「んー、多少は慣れた気もするかな。 あれね、αテスト受けてたから思った以上に動けると言うか、αテストで磨かれたと言うか……私自身がちょっと驚いてる感じ」
アカツキの言葉足らずな問いに、彼女はさっと意図を汲み取って返す。
やっぱり頭の回転が速いな。
そうだ、気になったことを聞いてみるか。
「そう言えば、スキルとかって閃いたか?」
「俺はまだだな」
「私もまだね」
ふむ、まだなのか。
「スキルは使ってるのか?」
「それがさ、スキルを使おうとすると上手く発動しないんだよ」
「同じく、発動できないのよね」
話を聞くと、どうやらスキルもαテストの時と仕様が違うみたいだ。
「そう言えば、ジンも魔法を格好つけて使ってるよな」
「違ぇよ、あれが正しい使い方なの!」
「え、そうなんだ」
「何だよお前らー」
誤解していた二人に、俺は魔法のシステムについて説明する。
「なるほど」
「もしかしたら、スキルも似たような感じで使えるんじゃないか?」
「……かもね」
ビゼンはそう言って立ち上がり構える。
すらりと抜き放った刀を体の右側面に引き込むようにして水平に構える。
「ふっ!」
短い気合と共に振りぬいた。
特に変化は無いな。
「次、やるわよ」
あぁ、デモンストレーションか。
もう一度同じ構えを取る。
「≪スラッシュ≫!」
技名の発声と同時に振り抜くと、その軌跡を青い光が駆け抜ける。
青い光は強く発光するのではなく、あくまで薄い青色が色として残像を描いた感じだ。
振りぬいた姿勢で構えていた彼女は、息を吐きつつ姿勢を正した。
「……えーっと、これ毎回やらないとダメなのかな」
「だろうな」
「えぇ……」
項垂れるように気に寄り掛かるビゼン。
顔がわずかに染まっているのは恥ずかしいからだろう。
「逆に燃えるだろ!」
「アカツキはそういうの好きそうだものね……」
「おう、必殺技を叫ぶんだぜ! いいじゃないか、≪スラッシュ≫!」
アカツキが気合を入れて叫ぶと、彼は急に大剣を構えて抜き放ちざまに横薙ぎの一閃を放つ。
青い残光を引いたことから、どうやらスキルを放ったようだ。
剣が俺の目前でピタリと静止している。
紫色の蜂の巣の様な光に止められていることから、どうやら攻撃禁止措置によって阻まれたらしいな。
「おま、いきなりやるのは止めろよ!」
「わはは、すまんすまん」
「PVPが解禁されてたら、きっと俺は死んでたぞ……」
PVP解禁は日程では後半戦以降とのことなので当分先だそうだ。
場合によってはクローズドβテスト期間には間に合わない可能性があるとか。
俺はPVPも嫌いじゃないので、テストで実装されれば参加する予定だ。
「そうすれば俺がジンの遺産を継いでやるよ」
「遺産っていうか、ただの強盗じゃねぇか」
「はっはっは」
「……本当に仲がいいわね」
半ば呆れつつ、それでも彼女も笑っていた。
存分に休憩した俺たちは、再び訓練を再開した。
スキルを使えるようになった二人は、更に見違えるように戦果を重ねる。
途中、物は試しと入れておいた『スチームベア』討伐クエストによって因縁のアイツが出て来た。
自分で仕込んでおきながら、前回の印象で少し居竦み上がってしまう俺には構うことなく、アカツキがその重装備でガチンコのバトルを繰り広げる。
俺が即死しかけた熊のパンチを食らっても殆どダメージを受けず、大剣で正面からぶつかっているのに互角以上に渡り合っている。
装備の補正があるとはいえ、流石にドラゴニアという種族が羨ましくなってきた。
ビゼンも近接戦闘に特化した種族の面目躍如といったところか、右に左に華麗に舞いつつ、スキルを使って狼を一刀の元に斬り伏せていく。
そう、ビゼンの刀の威力が凄まじいのだ。
斬れる相手ならバスバスとダメージを通していくようで、獣系の相手には滅法強い。
おかしいなぁ……魔法使い五人パーティだと苦戦していたのに、全くそんな気配がないぞ。
いくら装備が現状の最高だからといって、いくら本職の近接をいれたからといって、そこまで戦力比に差があるわけが、むしろ、魔法使いパーティの方が人数が多かったのだから火力で勝るはずなんだけどな……。
まぁ、俺がヒールと間引きとフォローを全部引き受けているから、実際の役職の数ではどっこいなのかもしれないが。
なんだか釈然としないな。
熊とはそれから十分ほど戦闘を繰り広げた末に、アカツキが一人で見事に討ち果たした。
狼や他の雑魚は殆どビゼンが片づけ、俺は終始ビゼンのフォローと回復に終始した。
全滅するのも経験かなーなんて思っていたので、今回の結果は拍子抜けだ。
意外と何とでもなってしまうのかもしれないな。
それからしばらく狩りをして、町に帰って報告をしたところで解散となる。
約二日間の特訓はこれにて終了となった。