第2話 ライトの過去
ライトがこの町にたどり着き、クーに出会う10年前……。
彼は姉と一緒に暮らしていた。父と母は彼が物心を持つ前に死んでしまっていたので姉がライトの母親代わりをしていたのだった。
2人は人間に見つからないように色んな町を放浪しながら生活していたがそんなある日、2人は人間に捕まってしまった。
その人間達は動物達を捕まえて殺すことはしない、捕まえて人間の欲求不満を晴らす為の娼婦や男娼として商売をしていたのだった………。
ライトの姉はライトを男娼にしない条件として他の者たちより倍の客の相手をさされていた。
牢屋の中……、 「お姉ちゃん御免ね…。僕のせいでこんな……。」
「何言ってるのよ、ライトが苦しんでいる方がもっと辛いんだからね。」そう言って姉はライトを抱きかかえた。
「いつかこんな所抜け出せるわ。だから希望を捨てちゃだめよ。」とニッコリして言ったが彼女の目は涙で濡れていた。
姉は毎日ライトの為に客を取らされていた………、いつ出してくれるか分からないこの地獄の娼館の中で…………。
だがそんな姉は客の病気を貰ってしまった。
しかしこの娼館では動物達が病気になっても治療はしない、処分するだけだ。 彼らにとって動物は客を取るためだけの道具である存在………、生きようが死のうがどうでもいいのだ。
ライトの姉ももちろん処分されることとなったのだった。
2人が居られる最後の夜………。
「嫌だよお姉ちゃんと最後まで居たいよ……。」と泣きつくライト。
だが「グスッ…、御免ねライト。ちゃんと守ってあげられなくて……。」と姉はライトに対して泣きながら謝った。
「えっ?何でお姉ちゃんが謝るの?僕のせいでこんな酷いことになったんだよ?」
それに対して姉は首を横に振り、「私が死んでしまったら今度は貴方が男娼にされてしまうわ。まだこんなに小さいのに…。前にも言ったけど私はライトが苦しんでいる方が辛いのよ……。」
「お姉ちゃん……。」
「ライトッ!!」と姉はライトに抱きついた。
「これからは貴方1人になるけど頑張るのよ! ここに来る客に辱めを受けるかもしれないし、万が一ここから出られたとしても人間に殺されるかもしれない。他の動物と出会っても貴方が犬って理由で苛められるかもしれない……。でも、」
姉が言い終わる前にライトは姉を制した。
「分かってるよ……。どんなことがあっても僕は生きていくよ。どんなことがあっても……。」とライトは泣いていた。
その翌日、ライトの姉は殺された…。
ライトの心はポッカリと穴が開いてしまったが、苦しみはこれからだったのだ。
男娼としての焼印を腕の甲に付けられ、3年間男達に犯され続けた。逆らえば暴力を振るわれもした。
しかしライトは姉に言われた通りに頑張って苦しみの日々を耐え続けた。
そんなある日娼婦や男娼の動物達が暴動を起こしライトはそれに乗じてここから脱出することが出来たのだった。
抜け出して町を転々とする内に色んな動物と出会った。だがそれらの殆んどが犬に対して人間と同様の恨みをもっていたので激しい苛めや暴力を受けたこともあり彼の体には消えない大量の傷跡ができたしまった。
そして様々の苛めや暴力、男達による辱め、姉の死で生きる希望を失っていた時に今現在住んでいる町の住人に保護され、以後ここに住むことになったのだった……。