【悲報】大和田照樹、小心者。
3人は早速計画をねり始めていた。聞きこみ調査、生徒会関係者のSNS確認、この2つをこなして生徒会の計画を変えようという魂胆だ。彼らは皆矢木の机の周りに集合し、話し合っていた。だが、そこに今にも不安という文字が浮かんできそうな顔で照樹は言った。
「な、なぁ...やっぱり聞きこみだけにしないか...?SNSみたいなほぼ個人情報を武器に戦うって、やっぱりフェアじゃないっていうか...」
陽は驚いた。ついさっき廊下にも響くような声で決意の宣言をした彼が数分後にこんな弱音を吐いているのだ。陽は呆れと困惑の中間の顔でこう言った。
「ええ!?先輩、さっきの決意発言はどうしたんですか!?この高校変えなくていいんですか?」
「いやいや、変えるって言っても、俺はもっと『異議あり!』とか叫んで戦う裁判みたいな物を期待したわけで、さすがに全部の個人情報を掴むようなことはちょっと...」
そんな2人の会話を横目に、光希はバッグからノートパソコンを取り出して、生徒会関係者のSNSを確認しだした。彼女が現生徒会長:大野清秀のアカウントをスクロールすると、衝撃の投稿を確認した。彼女は驚いた目で2人に確認をさせる。
「!!これ...見て...生徒会長の...アカウント...」
「!?マジかよあいつ...」
「この先輩、こんなこと考えてたんですか...?」
その投稿にはこう書かれていた
『まじで陰キャとか高入生のやつらの話とかキショくて聞いてられないから、漫画とかアニメの話をしちゃいけないって案書いたら採用されたwww『オタクコンテンツ統制』って名前でwwww』
そのリプライには同校による書き込みが続いていた。
『え、マジwwwお前神すぎな?wwほんと聞いててキツかったし助かったわwww』
『まだ仮決段階だからwww16日の本会議で決まるwwまあ、どうせこんな会議誰も聞かないし、脳死で決定させてくれるでしょwwww』
実際そうだ。このような生徒会の会議はほとんどの生徒は途中で眠くなり誰も話を聞いていない。だがこの悪意にまみれた生徒会長の文章に非友協会の皆は顔にしわを寄せていた。
「あの野郎...ついにこんなこと言い出しやがったのかよ...」
「先輩、この生徒会長のこと、知ってるんですか?」
「知ってるも何も、鬱になる前の俺の友達だ。」
陽はそれを知って大きく目を見開き、照樹の方をみた。このような悪意しかない投稿をする人間と脳筋だが繊細で優しい先輩にかつて交友関係があったことが信じられなかったのだ。
「あいつも昔はここまで悪いやつじゃなかったんだ。ていうかむしろ、俺なんかよりよっぽど優しいやつだったんだ。」
大和田照樹と大野清秀は2人とも中入生であり、かつては2人ともラグビー部として共に汗を流していた。彼らは周りから見ても仲が良く、苗字から取って勝手に、「ビッグブラザー」というコンビ名まで付けられた程だった。
だが、優秀な部活動が多いこの綾切第五高校では珍しいくらいにこのラグビー部は戦績が悪く、学校に心酔してる顧問はよく部員たちを怒鳴りつけていた。そして、照樹が2年の時の春の大会でラグビー部は予選1回で大敗を期し、顧問からは雷が落ちたかのように怒鳴られ、メンバー内の雰囲気も険悪になり、照樹は鬱になってしばらく学校に来れなくなってしまった。照樹は清秀も含めた全ての部員との連絡先を消し、鬱の治療に専念した。
このような経緯を2人に話すと、どちらも深刻そうな顔を浮かべた。
「先輩達に、そんな話があったなんて...」
「儚い...友情...」
「だが、あいつまでここまでおかしくなっちまった理由がまるで分からない...ちくしょう...」
照樹は軽く机を叩く。かつて友だった人のことを何も分かってやれない悔しさで。
陽がふと窓を見るともう夕日は落ちかけていた。時間は17:37、そろそろ日が落ち始める時間だ。彼はすっかり重い雰囲気になった教室の空気を入れ替えるつもりで皆に声をかけた。
「きょ、今日のところはこれで解散にしませんか?ほら、日も落ちてきましたし。」
他の2人も教室の壁掛け時計を確認し、かなり長居していたことに気づいた。
「あ、確かに。よし、じゃあ明日も放課後ここで集合で。」
「家でも色々...調べてくる...」
3人椅子から立ち上がり帰り支度をその場で行った。
学校から出ると照樹は右方向、陽と光希は左方向へそれぞれ帰った。陽と光希は駅まで帰り道が一緒だったため一緒に歩いていた。この状況に陽は内心ドキドキしていた。
(ま、まさか高2になってこんな偶然が起こるなんて...しかも近くで見たら光希さん、結構可愛い寄りじゃ...)
実際光希はかなりの美貌を持ち合わせている。それに守ってあげたくなるくらい小柄で、普段は無口というぼっちというのが不思議なくらいの属性てんこ盛り少女であった。
「陽先輩は...」
光希が口を開いた。彼女から話を振るのはかなり珍しい。
「え、どうしたん、ですか。」
緊張で言葉が途切れ途切れになってしまう陽。
「陽先輩は...照樹先輩の過去について...どう思いますか...」
陽は一瞬どこかいかがわしい話を妄想してしまっていたが、照樹という名を聞きむしろ安心した。
「ああ...まぁ、部員と仲悪くなって、それで昔の友達とも疎遠になるっていうのは当事者じゃない俺からしても来るものはあるよな...」
光希は陽の回答を聞いたあとしばらく黙った。陽もしばらく彼女の無言に付き合うように一緒に帰り道を歩いた。
そして光希は再び口を開いた。
「陽先輩は...アニメとか見るんですか...?」
先程の話とは打って変わって今度は今回の事案『オタクコンテンツ統制』(以降はオタコン統制と略す)の話が始まった。
「ああ、人並みには、見るけど...」
「1番好きなアニメ...知りたいです...」
「うーん...WOODEN_GATEかなぁ?」
WOODEN_GATEはあまり最近のアニメでもない知る人ぞ知る名作のような立ち回りのアニメである。彼の好きなアニメを聞いた途端、光希の口角は少し上がり、
「...!私も...好きです...」
と答えた。
「へぇ、ウデゲ好きなんだ。なんというか...ちょっと嬉しいな。中学時代から数えてもウデゲ好きなやつ他にいなかったから...」
「ウデゲ好き...みんな通...センスあり...」
帰り道の住宅街で2人で小さくはしゃぐ。だがすぐに落ち着き、ちょっと歩いたらすぐに駅に着いてしまった。光希は最後に陽に一言、
「先輩...絶対、変えて見せましょうね...」
と言い、陽もすぐに
「ああ。」
と答えた。
彼女とは最寄り駅は反対方面なのである。
そして次の日以降、非友協会の面々は生徒会についての情報を集める作業に走った。休み時間中は暇そうな生徒に現在の生徒会の印象や生徒会に関する情報(知っていれば)の聞きこみを、放課後になったら生徒会の現在の活動内容や生徒会関係者のSNS確認など徹底的に行った。確実にぼっちを増やすことになるだろう活動、「オタコン統制」の打破をするために。
「え?生徒会についての印象?うーん...あんま知らないんだよな...なんつーか、知らなすぎて怖いレベルっていうか...」
「生徒会の人ら、明らかに根暗っぽいの嫌いな人が集まってて気分悪いのよね...」
「生徒会...まあいい噂は聞かないですなぁ...ところで君、『教頭のタイツのメーカーを当てるの会』に興味ないかい?」
聞き込みによれば情報がないのが怪しい、ねじれた人間がつるんでるなどの声が多かった。さらに、生徒会の一部メンバーは学校の近くのコンビニのドアの前で騒ぎあってるなど正直信用できるかは不明な情報まで入ってきた。
放課後の生徒会関係者のSNS調べでは、基本的にレストランのスイーツの写真や仲間とのバカ話などばかりが出てきたが所々に生徒会の話などが入っており、非友協会はそこを徹底的に調べあげた。
生徒会長のSNSは調べるまでもなく、書記の宮部一輝、会計の村田羽依は会長に賛同している様子だった
「生徒会長の案えぐすぎるwww」
「教室の端にいるキモイやつらが消えていくのを想像するだけでおもろいw」
しかし、意外なことに生徒会側でもこの案は反対の人はいるらしく、副会長の松本秋はSNSで反対の意を示していた。
「正直ここ最近の会長はずっと変だと思ってたけど、前に無理やり仮決させた案で確信がついた。私ももっといろいろ言ってれば...」
非友協会の面々はこのような情報をプリントし、それを資料に会議に使う原稿を作成した。相手の反論も想定し、原稿用紙4枚程度にまとまった。
そして5/15、会議前日の放課後。全体的に暗くなった学校内で唯一明るい教室内で1つのの声が木霊した。
「はぁ~終わったー。原稿書けたー、っと。」
陽は机の上にちょうど書き終えた4枚目の原稿用紙を置く。置かれた原稿を光希はすぐに手に取り確認する。彼女はすぐにそれを読み終えてぼそぼそとした声で言う。
「...陽先輩の原稿...分かりやすい...」
それに乗っかり照樹が陽と肩を組もうとしてくる。
「それな!いや~陽~!助かってるよマジで!!」
「ちょ、光希さんに先輩まで...あんま褒めすぎないでくださいよ!」
陽は少し照れた顔になる。1ヶ月という時間の多くを共にすごした3人は最初よりは親しくなり、無言の時間などは少なくなった。
「まぁ、何はともあれ、生徒会の裏についてまとまりましたので、そろそろ帰りませんか?」
陽が2人に向かって問う。
「...賛成...」
「あ、ああ、そうだな...」
2人も賛成し、皆が一斉に荷物をまとめ始める。その時、陽は照樹の顔が少し曇ってるように見え声をかけた。
「?先輩、どうしてそんな暗い顔してるんですか...?」
「いや...なんていうか...この原稿の通りに行くと、あいつが完全に悪者になっちまうんじゃねぇかなって...」
あいつとは、大野清秀のことである。照樹は彼との交友関係が切れ、悪行に手を染めていたとしても昔の彼を知っているからか、彼を悪だと断定したくないのだ。
「...分かりますけど...証明が...」
光希が口を挟む。皆思い悩んだ顔をし、数分たった後、陽が照樹に言う。
「じゃあ、明日証明すればいいじゃないですか。」
「え?」
照樹が困惑気味に陽の顔を見る。
「明日、生徒会と話し合ううちにそこら辺は分かります。いや分かるはずです!僕の原稿で彼らはぼろを出すって信じてください!」
陽の自信に押され、照樹は力強く拳を握りしめる。
「お、おう、そうだな!よっしゃ!!!!明日、勝つぞ!!!!」
「「オー!!!!」」「...オー...」
体育会系の力強い声と共に照樹は筋骨隆々な腕を空に高く掲げる。他2人も掛け声とともに手を掲げた。




