フィルネアの朝
フィルネアの町の朝は柔らかな光に包まれていた。
石畳の小道をノヴェルはゆっくり歩く。
17歳の少年だが、町の人々に軽く会釈をしながら、今日も変わらぬ日常を楽しんでいた。
広場には木の屋台が並び、果物や香草を並べる商人の声が朝の静けさに混ざる。
子どもたちが木の剣で遊ぶ声が響き、ノヴェルも微笑みながら仲間たちに手を振った。
「おはよう、ノヴェル!」
露店の果物屋の店主が声をかける。
ノヴェルは元気よく返事をして小川沿いの道を進む。
小さな橋を渡ると町の奥の広場にいる友達の姿が見える。
「ノヴェル、手伝ってくれ!」
友達が積み上げた木箱の荷物を運ぶのを頼まれた。
少年は笑って応じ、二人で声を掛け合いながら箱を運ぶ。
重さも程よく、ちょっとした運動にちょうどよかった。
荷物を運び終えるとノヴェルは息を整えながら広場の周囲を歩いた。
屋台の小鳥の鳴き声や朝露に濡れた花壇の色鮮やかさに思わず立ち止まって見入る。
町の人々はまだ朝の仕事に追われているが、その表情はどこか穏やかで、少年の胸に安心感を与えた。
「ノヴェル、今日は一緒に剣の練習しようぜ!」
友達の一人が声をかけてくる。
ノヴェルは笑ってうなずき、広場の端にある木の柵の前に向かう。
小さな剣を手に取り、軽く振りながら仲間と競い合う。
木の剣のぶつかる音や笑い声が町全体に響き渡った。
練習を終え、ノヴェルは少し疲れた体を伸ばしながら町を見渡した。
遠くに丘の影が見え、森の緑が光を受けて揺れている。
今日は特別な予定もなく、ただ平凡な日常が流れていく。
それでも少年の心は、こうした小さな日々の連なりが何よりも大切だと知っていた。