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67話、マフィアの影

 時に思いもよらない発見がある。

 それはブラッド隊と出会って仕事を協同で行った日の翌々日。『風玉』が返却され、俺の持ち物として“内”に仕舞われた時のこと。


(……【六華閃(ろっかせん)】?)


 風魔法のクラスⅠを習得した瞬間、新たな刀術戦技を覚えた。

 しかも見覚えのない戦技だ。


 扱う武器や習得した戦技、魔法。これらで新しいスキルを覚える事があるのは知っていたが、俺が知っているよりも種類は多いのかもしれない。

 もしかしたら、現実世界では元々このように多くの派生スキルが溢れているのかも。


 益々、魔法を揃える楽しみが増えて来た。


「どうした、兄弟。今からバチバチのアクションかますって熱くなってんのか? 心配すんな。自慢の火魔法でアッチアチに燃やしちまえよ。ハートは常に燃やせ? 最後に生き残るのはパッションが熱い奴なんだからな!」


 一言も返事させずして、ここまでの文言を浴びせてくるブラッドに拍手。魔戦士じゃなくて、ラッパーにでも転職すればいい。

 すると上機嫌なブラッドに、俺と同じくして呆れるアシュリーが代わりに謝罪を発した。


「すまない、ソール君。慣れないと鬱陶しいと思うが、慣れてもストレスにはなるから諦めてくれ」

「適応不可能なんですね……」

「そうだ。先に伝えておこう。私達は明日の夜から特別な仕事をするので、暫くは会えなくなるだろう。だからこれが終わったら、連絡を待っていて欲しい。打ち合わせはそれからだ」

「特別な仕事……?」


 高レベルの俺がいた方があらゆる仕事が捗るだろう。率先して一緒に行動したいわけではないが、疑問だ。どうしてアシュリーは俺を編成から外したのか。考えられるのは身内絡みか、犯罪絡みか、それらだろう。


 その返答は、サラから語られる。


「少し……グレーな仕事なの」

「協会を介さないタイプの?」

「そうね……言い方によると、用心棒。でも実際は、ギャング達が新型ドラッグを蔓延させつつあるらしいの。それで、あるバーの人が店内でドラッグ売買をしているって噂があるから、私達で捕まえて……その……」


 言葉を濁したが、ドラッグのディーラーを捕まえて脅し、見せしめにする形で売人を追い出そうと言うのだろう。


 通常は警察に通報すべきだが、バーには正式な捜査を立ち入られたくない、何か他に理由があるのかもしれない。未成年を働かせていたりとか。店内で少し違法な接客をしているとか。


「すまないな、こちらの都合ばかりで」

「ごめんね……」


 ホエールやサラからの謝罪で思考は現実へ引き戻され、既に頭が弾き出していた解答を提案した。


「僕も参加していいですか? 報酬は必要ないので」

「えっ!? だ、ダメよ! いけないわ! だってソール君は十七歳でしょう!?」

「実はギャングに入りたがっている友達がいて、そういう危ない実情を実際にこの目で見てから説得したいんです」

「で、でも……」

「仕事、手伝ってあげてますよね?」


 俺は四人の痛いところを突いて、同行を求めた。

 というのも、理由は興味本位というだけではない。代表からの依頼に関連するものではないかと考えたからだ。


 三名は渋顔で否定的な反応を見せるも、俺頼みで今日は少し厄介な仕事を予定しているから断り切れない。

 このような場合に役に立つのは、楽観的かつ勢いを尊ぶこの男だった。


「おい、だから言っただろ? 俺らはファミリーだろうが。……安心しろ、ソール。仲間外れになんてしないさ。いや、できるわけがない! 俺がさせねぇから! そこんとこヨロシクぅ!」

「では決まりで」

「任せな!」


 ブラッドの決断で俺の同行が決定する。三人も否とは言えなかった。

 この日は廃墟に住み着いた魔物を倒し、その翌日の夕暮れ時には現地で集合した。

 これまでのように他の都市ではなく、帝都に戻っての仕事。それもよく知る治安の悪い区域近くのバーだった。


 そりゃドラッグの売買に使われるだろうという日陰者が好みそうな場所だ。

 まずは裏口で簡単な打ち合わせをする事に。


「んじゃ、チームを分けるぞ? 俺は一人で――」

「一人は私だろうな。ブラッドにはサラ、ソール君はアシュリーに任せるのが適当だろう」


 ホエールが綺麗な三分割を見せる。

 それから店主との擦り合わせで取り決めた注意事項を述べる。


「間違っても酒は飲まないように。カウンターにいる男性店員から、ノンアルコール飲料をもらってくれ。話は通してある」

「標的の情報はどのくらいあるんですか?」

「もう顔も割れているんだ。店主が入店に注目してくれるから、そいつが入って来たら俺達に無線で知らせてくる」


 店主は根本的なドラッグ問題の解決を求めているわけではない。店内の浄化のみを欲している。

 つまりその売人を叩きのめすという、魔戦士なら簡単な仕事だ。


「奴等の取り引きを確認後、店から出たところを売人も購入した奴も、まとめて思い知らせる」

「分かりました」

「……あまり気持ちのいい仕事ではないが、ここのバーはクリーンなマフィア……と言っても所詮はマフィアだがな。まあいい。そことの付き合いがあって、店内での違法薬物売買があると、そことの関係に不破が生じるんだ」

「一刻も早く排除しないと致命的ですね」

「そういう事なんだ」


 クリーンなマフィア……ビアンコファミリーだろう。あそこはドラッグも麻薬も取り扱わない。ホテル業やカジノ経営がメインだ。

 となると、今回はブルファミリーかグリージョファミリー辺りが、ドラッグの元締めをしている可能性が高い。


 とはいえ、今回はそこまで深く関係するものではない。決める事は決めたので、最後にブラッドが締めくくる。


「オーケー、決まったなら後はプロの仕事をしよう。念の為に適当に辺りを散歩でもして、時間差で入店してから仕事に取り掛かろう。あとこれだけは覚えておけ。作戦は忘れてもこれだけは忘れるな。俺たちは鹿か? 馬か? 違うだろ、狼だ! 俺達は狼なんだよ! みんな、狩りの時間だ!」


 一言どころではなく余計な後半を聞き流し、一度解散となった。

 

 俺はアシュリーと共に辺りの道を散策する。俺達は最後にバーへ戻る事になっている為、余裕を持ってレストランで食事をする事にした。


「アシュリーさんは恋人はいらっしゃるんですか?」

「え……いないが、どうしてだ?」

「今夜は恋人役なので、失礼な振る舞いをしてしまうかもしれないと思いまして」


 隠れた名店が近くにあるので、そこへ向かう道中にアシュリーに確認する。

 試しに、コールの皮ぬきで惚れさせられるか、実験してみようと思ったからだ。偶然にもアシュリーの人柄が良かったので、これはただの実験だ。


「安心してくれ。これでも年上なんだから、大抵のことは水に流すつもりだ」

「そのイヤリング、素敵ですね」

「ぇ……あ、ありがとうっ。なんだか……照れるな」


 あからさまにアプローチして好意を示していく。これで多少は踏み込んだ話が出来るだろう。

 丁度、あの悪魔について聞きたい事もあるしな。


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