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47話、第二の書き換わり


「……怪我まで治ったか」


 光の神と影の神は世界創造より自身を三つに割き、新たな世界に完全なる統率者は不要として消滅した。


 光の神は【耀の光】、【日の光】、【月の光】。

 影の神は【陰の影】、【夜の影】、【魔の影】。

 現在、魔王の一体であるベルゼブブが【夜の影】を手にしてしまい、悪魔が増大してしまった事がそもそもの問題なのだが、光に関しては百年近く前の【月の光】以降は確認されていなかった。

 悪魔の根源である【夜の影】、魔力の源である【月の光】。どちらも手にすれば世界は思うがままだ。

 それを凌ぐ【耀の光】ならばなおさらに。


「ふぅ……」

「……あの、コール。こ、これは……」

「うん? つまり俺のお陰で生きて帰れるってこと。それだけ。しかも俺はレベルも大幅に上がったし、たまには良いことってしてみるもんだな」


 馬鹿みたいに跳ね上がったレベルにより湧き上がる万能感に浸ることもなく、生きてシャバに帰れる喜びからどう病弱らしく過ごそうかばかりを考えている。

 乗って来たバイクも光になり、騒ぎを聞き付けた迎えが来るのを待つか、それとも通りかかる誰かを待つか。


「……おい、また泣いてるのか? 勘弁してくれよ、興奮しちゃうだろ?」

「っ、違うわよっ、馬鹿っ……! ――ちょっ!?」


 差し出したハンカチで目元を拭うローズマリーを抱き上げ、目に付く場所へ向かって歩く。禍々しい魔城があったとは思えない長閑な平原を眺めながら。


「……そう言えば、お前には触れるな。なんでだ?」

「何を言っているの……? それは触れるでしょう、生きているのだから……」

「……愛の力だな、きっと」

「えぇっ!?」


 六つの光と影の中でも破格な【耀の光】へのゲーム愛が、ローズマリーを例外としているようだ。直接触れても体調が悪くならないし、むしろ快調だ。


「……ここまでしてくれるし、ずっと前から狙われているようだったし……あのっ、本当にそういうことだったの……?」

「ん? そういう事だ」


 トマトみたいに真っ赤な顔をして、あからさまに緊張しているようだしまるでプロポーズされた花嫁だ。


「……そ、それなら……よろしく、おねがいするわ」

「あぁ、よろしく〜」


 今更だな。誰にも【耀の光】は渡さない、絶対の絶対にだ。

 今はうんともすんとも言わなくなっているが、取り出し方は後で考えよう。今はローズマリーの口止めだけは念入りにしなければ。とりあえず魔城に関しては、主の悪魔を殺して自然消滅させたとでも口裏を合わせておこう。


「……暇ならその放り出してる乳とか当てて来いよ。気が効かないんだから全く……」

「放り出してなんかないわよっ……! あなた本当はそんな事を言う人だったのっ?」


 ♤


「――ローズ、無事で何よりだ」


 対面の椅子に腰を下ろすなり、ペンドラゴン・エンタックは厳かに告げた。


「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした、代表」

「……」


 呼び出されちゃったぁよぉ。

 しれぇぇっとローズマリーを送り届けてから帰ろうと思っていたのに。ローズマリーが無断で居なくなっている事に気付いた兵士達が捜索に到着し、帰って来てすぐにここまでのこのことやって来てしまった。

 代表が所有する屋敷の応接室の一つで、一人がけのソファ同士で向かい合って言葉を交わしている。とりあえずはローズの背後で気配を消しておこう。


「……病院にいた筈のビアが消えた。お前が帰還後に隊を向けた時には影も形もなくなっていた」

「代表、母が私に会いたがらなかったというのは本当だったのですか?」

「幼き頃から言って来た通り、本当だ。顔を合わせる度に泣かれてしまうのであまり会わないようにはしていたが、あれからも変わらない。ビアはそもそも俺にさえ対面して会ってはくれなかった」

「……」


 やはり疎まれているわけではなかったのか。

 そのローズマリーも沈痛の面持ちをするペンドラゴンに驚きを表している。


「まさか……悪魔に代わられていたとは……」


 愛煙家らしく気を紛らわそうと煙草に火を付け、苦々しい顔をして背もたれにもたれかかる。


「ふぅ……普通なら異常を疑い、悪魔だと判明しただろう。しかし宮殿へ連れて来た時に強引な手段を用いたので、恨まれているものとばかり捉えていた」


 それは本人にしか分からない。ビア・エンタックが代表を恨んでいた可能性は十分にあるだろう。

 本質的には独裁者寄りの男であることに変わりはない。唯一の対抗勢力とされるサックスーン家は裏との繋がりが濃い為に難儀しているようだが、それ以外はあっと言う間に排除してしまった。

 暗殺も排除も露骨なこの男は、誰からも恨まれる素養がある。


「……コール、お前のお陰だ。どうやってローズマリーを襲った異変に気付いたのかは問うつもりはない。ただ感謝を伝えておく」


 無難に無言で頭を下げておく。こいつの感謝に価値などないが、形式というものは必要だ。


「デュエルから聞いているが、任務とは言え魔城を使ったほぼ自主的な鍛錬はまだ必要か? その分、学校に時間を割いてもらいたいんだがな」

「今のレベル帯の魔城では、もはや不要と考えております」

「だろうな、お前は強い。今に始まったことじゃないがな。だからキャメロットでの任務について変更することにした」

「まさか……ローズマリー様の護衛ですか?」

「察しが良い。驚異的な成長速度でアーサー達もそこそこのレベルに達していると報告を受けている。いよいよ魔城攻略は奴等に任せ、ルーラーの指導と同時にローズを警護してやって欲しい」

「承知しました」


 コールになって知った情報だが、英雄達を使った人工精霊の運用は全て魔晶目的だ。《夜の王》の影響で増え続ける悪魔や魔物から、最大の資源である魔晶を大量に採集し、更なる人工精霊の改良と生産を行おうとペンドラゴンは考えているようだ。

 だから本当は《夜の王》が倒されることなんか一欠片も望んでいない。


「……」

「……ああんっ!? 嘘だろっ!? 嘘だろ、ローズッ!」


 澄まして機嫌悪そうにしていたローズマリーの顔が、赤く染まっていることに代表が気付いてしまう。

 この後に胸ぐらを掴まれて詰問される騒動もあったが、多少なりともアーサー達のお守りから抜け出せたのは有り難い。おっさんに長い間接触されて顔面蒼白にはなれども。

 この事件自体は秘匿されるようだが、代表の印象を良くできたことだろう。


 残る問題は、ローズマリーの母親に成り代わっていた悪魔だ。

 人よりも悪魔と過ごした時間の方が長いこの俺から、果たして逃げられるかな?

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