対岸の森 7
「アウルス・アンダーソン侯爵閣下・・・アナタが、来るとは・・・」
愚かな犯罪者の自白の日から数日。今日はいよいよ監査官が来る。と、朝から憂鬱だった副ギルド長の前に現れたのは、予想していなかった懐かしい男だった。
グレブル街の冒険者ギルド・副ギルド長のイグナスは、数十年ぶりに再会した友人に、不躾に目を細めてその顔をみると、眉間にシワを寄せて、お互い老けた。としみじみとした。
「まさか、暇なのか」
「仮にも薬師統括国営ギルドのギルド長に随分な言い草だな」
そうじゃ無くても侯爵家の当主に向かってかける言葉では無いだろうが。イヤ、コイツは学生時代からこうゆうやつだったよ。と、アウルスは肩をすくめて本題に入るつもりで話を進めた。
「この件は直通でな」
「ではあの噂は本当なのか!?」
事情通のイグナスの耳は、会わぬ間にもアウルスの噂に事欠くことはなかった。
将来を羨望された若き魔術師が、突然転職したと思ったら師匠の色香に誑かされ、周りから年増狂いと揶揄されるもその師匠の死をきっかけに、今度は10も年の離れた妹弟子を溺愛する様になった。そんな噂を耳にするたび、なんて極端なやつなんだと呆れたものだ。
「何年前の話をしてるんだ」
アウルスは、貴族の振る舞いを崩してッチッと舌打ちをすると、そらされた話を元に戻す。
「ふざけてる場合じゃないぞ。マーキュリー侯爵様が激おこだ」
「あの金貨さえ見てればいつでもご機嫌なマイアが!?・・・マジか?」
「長い付き合いだがあんなにブチギレているマイアは見たことがない」
これから商業ギルド統括自ら国を挙げて宿泊業に力を入れていこうと、鳴り物入りで作り上げたホテルの上々な評判もやっと定着した。
起こした新事業が軌道に乗り始めたばかりだと言うのに、自分の管轄する宿屋の店主が犯罪に加担するなど、その苦労して作り上げた信用を台無しにする許し難い所業。事情を知る者にはさもありなんと言うところだが、その苛立ちと怒りは凄まじく、おかげで王族までもがビクビクしているほどだ。
釣られて金で世話になっている王侯貴族が総出でピリつき、中央政府は今までにない緊張感に包まれ、城に勤める文官達は気が気でない日々を送っている。
「そっちかぁ〜」
実害はすでに出ているようだ。趣味で金儲けをやってる奴が1番怖い。とはこの事か。
イグナスは執務机に肘を置き、頭を覆ってガックリと項垂れ言った。
「俺、この仕事辞めようと思ってたんだ」
「・・・なに!?」
ここに来て7年。ずっとギルド長の尻拭いをさせられて来た。
いつまで経っても私利私欲を優先させ、目先の利益につられて小物のような振る舞いを省みることもない。仮にもいちギルドを引きいる長の無能さを、どんなに領主に進言しても上司に報告しても、一向に改善が見られなかった。つくづくイヤになった。
心残りはエドガーだった。彼の不遇にはずっと気づいていたが、自分には国から命じられた大事な任務がある。冒険者ひとりに肩入れして本来の仕事を台無しにする事を恐れていたが、その葛藤がどんなに人間としての尊厳を蝕んだことか。そしてようやく気づいた。
「俺はこの仕事に向いていないことがわかった」
「何を馬鹿な事を。俺が帰った後に来るのはオマエの古巣だぞ」
「わかっているよ。だから直接言えるんじゃないか。今度こそ辞めさせてくださいって!」
「ッチッ! どいつもこいつもっ」
歳をとり、手駒が減るのは貴族様にとってはさぞかし手痛い出費と誤算だろう。
アウルスの遠慮の無い舌打ちに、イグナスは苦笑いを返す。
辞めると決めたからには最後に彼をなんとか、一切の咎なく此処から救い出せたらと、ギルド長を失脚させるべくさらに証拠集めに躍起になったが、どれも小悪党らしく領主の腰巾着の域を超えなかった。今更賄賂やケチな横領ぐらいじゃ決定打にはならない。
ましてや領主は本来のターゲットだ。報告もせず独自に証拠を保持しておくわけにはいかない。
どうしようかと考えあぐねていたところに、元特級薬師の話が舞い込んできた。
制作者の望まぬ販路でのポーションの横流しは、共犯者の領主共に大きな決め手になる。期せずして転がり込んだ美味い話に功を急いだのだろう。証拠は十二分に得た。
旧友が溺愛していたと言う件の妹弟子。
平民出と言うハンデをものともせずその優秀さを遺憾無く発揮し、最年少で[特級薬師]まで登り詰めたのに、先だってその誉ある職をあっさり自ら辞した話は、大いに特権階級界を沸き立たせる騒動だった事だろう。
何故辞めた。辞めた後何処に属した。と噂は噂を呼びその動向に注目が集まっていたが、蓋を開けてみればフリーの薬師になり、人里を離れて隠居生活をしているらしい。
年齢からは少々青いが、よくある薬師の最終選択だ。
気せずしてそれまでと同じ境遇にあったイグナスは、その元特級薬師の心情が痛いほど理解できた。それなのに。
「辞めた特級薬師殿も、結局オマエの子飼いになっているのだなぁ」
「急に人聞きの悪い言い方をするな。俺は王の為に正しく親交を深めているだけだ」
全く。そうやって雑に貴族の顔を見せるから、ダラダラと上司と部下としての境を越えられずにいるのだろうに。
「変わらないな。アンダーソン侯爵閣下」
「なんだ改まって気持ち悪い。何かあるのかと勘繰ってしまうだろ。オマエまで仕事を増やす気か?」
「まさか。さっさと仕事するか」
「そうしてくれ」
イグナスは用意していた書類の束を出す。
幸い今件の犯罪者がそのことの大きさを自覚していない案件だ。お陰で非常に協力的で聴取も捗り滞りなく、末端の仕事などもはや事後処理だけで、大人しく沙汰が降るのを待つばかり。
それもこれも優秀な元特級薬師様の小細工のおかげなのだと、イグナスはその手腕に脱帽するばかりだ。
「良い部下を持ったな」
「・・・あぁ全くだ」
「目星がついていたからこそ、ここに俺が配属されたのだろう?」
「俺はてっきりオマエが自分で選んだのかと思っていたよ」
気の置けないやり取りの中、渡された書類から目を離さずに応えるその様子に、イグナスは目を細めてアウルスをみた。
我欲を抑え込み、その部下の優秀さすらも、仕える王族のため、延いては国民のためにとその力を振るうのだ。イグナスはいち市民のひとりとして想う。為政者が皆アウルスのような男だったなら、自分のような仕事をする人間もずっと減るだろうに。と。
「全く。どこまでも真面目なことだ」
イグナスが手づから紅茶をいれその集中が切れるのを待っていると、アウルスはため息をついて読んでいた書類を紅茶の脇に置いた。
「・・・やはり、隣国からもたらされた薬物だったか」
あらかたルリィから聞いていた通り。と、背もたれに体を預け、冷めた紅茶に手を伸ばす。
田舎の単なる痴情のもつれと処理してしまうのは容易いが、その毒物はすでに王都中枢まで届いてしまっている。
とうとうその入手先が明らかになる証拠を得た。
領主お抱えの隊商が、何年も無申請で隣国と交流していたのだ。おそらく叩けば、他にも余罪があり、他の物品の密輸も物証も出るだろう。
そちらは薬師の知る所では無い。
今件に自国の薬師が絡んでいないと知り、とりあえず今まで自由にしていた隣国との取引を厳しく目を光らせればいい。と、当たりがついただけ多少なりとも肩の力が抜けたアウルスだったが、長く平和な時期を過ごしていただけに、立て続けに露わになる隣国絡みの事件を前に、さすがにただの偶然とは思えなくなっていた。
法が異なる国との薬の自由輸入の禁止。それに伴う需要への供給。
おそらく、王都から離れた辺境国境領を収める貴族達からの反発は、相当なものになるだろう。
「あぁ〜・・・っめんどくせぇなぁ」
昔から、澄まし顔を決して崩さない男から思いがけず漏れ出た本音に、イグナスは久しぶりに声を上げて笑った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
局部的な犯行と、その犯罪者自体が諸悪の全貌解明に協力的だったお陰で、『罪人に逃亡の恐れなし』と判断された田舎街では日常を取り戻していた。
関係者に謹慎こそ言い渡されているが、それを取り囲む人の営みは続いているのだ。物理的に距離のある中央からの沙汰を待つ間、その所存は自治体に任されることになった。
人手不足の田舎街で暮らす人々は、日々食っていくために一旦落ち着きを取り戻し、唯一被害を受けたエドガーですらも、採取に運搬にと、粛々と来るべき日に向けて自分の役割をこなしていた。
優秀な薬師が用意した香水が効いているのか、弁えているのか、あれから幼馴染の3人が、エドガーに接触してくることはなかった。
その代わりに、イグナス副ギルド長を伴ってそれぞれの親が会いに来た。
木こりの親方と、自らも被害者だと訴えた隊商長に、『どうか娘を犯罪奴隷に落とすのは勘弁してほしい』と懇願され、他に被害が無かった件は賠償と引き換えに個人的な訴えはしない事になった。
エドガーは、賠償としてミリーの家が所有していた1番良いマジックバックを譲り受けた。
ミリーは今後、本人の以前からの望み通り家業を手伝う事になる。マジックバック分の借金を返しながら。
おそらく、領主の命令とは言え、悪質な密輸に手を初めた責を負って、ミリーの家は自由に国境を越える権限を持つ定期隊商の資格を剥奪される事になる。
商人を続けるなら、ただの行商人と変わらぬ扱いからの再スタートだ。いや、これからは監視付きなのだ。より厳しい商いになる事だろう。
マットとメグの2人も自治体の監視付きで、使い込んだ分を立て替えた木こりギルドの労役と、エドガーに接触しない事を条件に、横領と住居侵入の犯罪告発はしない。と各ギルド長と契約を交わした。
かろうじて奴隷になる事は免れたが、薬物の不正使用の罪が許されたわけでは無い。とイグナスが3人に告げる。
当然、不正使用の履歴はすでに王都の[キングスヤッコ]に報告済みで、あくまで3人については、エドガーの温情で「過失」によるものとされ、罰則については各自治体に任せる事になっただけだと釘を刺した。
次にエドガーの身に何かあればより厳しい処分が課せられると、単なる執行猶予である事を薬師ギルドから派遣された監査官の名のもとに提示され、この国の将軍ディオメデス侯爵が統括する、中央冒険者ギルドからもギルドタグの永久剥奪と不名誉な処分も言い渡された。
エドガーは、商業ギルドを統括するマーキュリー侯爵からの直々の慰謝料だと、管轄内の宿屋ならば、どの宿にでも永久に無料で宿泊できる事になった。
衣食住の心配が無くなったエドガーは、着々と確固とした地位を築き上げ、冒険者ランクがBランクに上がった頃、とうとう街を出る事を他の冒険者達が見守る中ギルドのフロアで告げた。
「そうかエドガー決めたのだな」
「侯爵様2人にお墨付きをもらって、王都でAランクに上がる指導を願う伝ができました」
これでもう、一介のギルド長如きが私利私欲で優秀な冒険者を使い潰すこともできなくなるだろう。
真っ先に声をかけられたイグナスは、我が事のように心底ほっとした笑みを返した。
「あ、え、ポーションは、どうなるのですか?」
いつものように受付カウンターの前で、嬉しげに今後の動向を話すエドガーに、隣にいたギルド員が慌てて問いかける。
イグナスは目を細めてそのギルド員を見た。
「冒険者は何処に行くのも自由ですよ。そもそも今回のポーションの入手は特例です。忘れたのですか?」
「あ・・・」
ポーションの入手が容易になった事で、街にくる冒険者や商人の出入りも増え、結果街は大いに潤った。
それが一気に無くなる。その場にいたギルド員と冒険者達にざわめきが起こった。
わかっていたはずだ。
そもそもこの地域にポーションが届き難いのは、エドガーの生活とはなんら関係はない。
たまたま近くに来ている薬師の、気紛れにもたらされた一過性の恩恵と初めからわかっていたはずだ。
それなのに、それらをもたらしたのがたった1人の冒険者の働きによるものだと気づきもしなかったのか。
そんな冒険者にこの街の住人達は何をしたのか自覚もないのか。
つい先だって街の労働者達がそのポーションに命を助けられたばかりだと言うのに、安穏と享受されてきた僥倖が続く為にこのギルドは何をしたと言うのだろう。
縋るような視線を向けるギルド員達を尻目に、イグナスは大きくため息をついた。
「ポーションの入手が困難になるともそれは所詮以前と同じ状態に戻るだけだ」
以前と同じではない。今まで頼り切っていた優れた冒険者が街を出るのだ。それだけで大きく戦力が落ちる上に、そのままでは他の冒険者達の足も遠のくだろう。
イグナスが告げだ現実に、その場の皆が凍りつく。
「代わりの冒険者を派遣すれば良い」
「ギルド長・・・」
街の住人が動揺を露わにする中、執務室から出たギルド長が階段の上から声を上げた。
「元特級薬師に直接交渉すれば良い。エドガー、ここを出る最後の仕事にその薬師との面会を都合つけろ。何事も引き継ぎは必要だ」
ここに来てまだそんなことを言っているのか。と、イグナスは頭を抱えた。
何故この街に冒険者が少ないのか、何故この街に優秀な人材が居つかなかったのか、顧みることもせずそのやり方を変えようともしない。エドガーを通して、使い潰されると目に見えているのに、誰がその代わりを望むというのか。
街の衰退はポーション不足だけのせいではないのだ。
「ギルド長。件の者はギルドに属さない薬師です。冒険者と同じくその自由は揺るがない」
「特級薬師を辞めた今、ルリィ・オミナイはただの平民だ。こちらは貴族領主からの依頼。無碍になど出来るはずも無い」
この男、ギルドに属さない薬師がどう言う存在かよもや理解してないのではあるまいな。
特権階級の独占を防ぐために、冒険者と薬師はその自由が保障されている。王侯貴族達が自ら定めたこの誓約がなされて久しい昨今に、国内の医療の根幹を覆すこの有様とは、謹慎の意味をわかっていないのか?
イグナスは怒りを通り越し呆れ果てた。
「救いようが無いっ」
「キサマぁっ! 雇われの分際でっ!」
ギルド長の怒号に、ざわめきが大きくなる中、不意にフロアに満ちるマナが激しく揺れた。
同時に数人の冒険者達が得物に手をかけ椅子を倒して立ち上がり、ギルドの扉に注目した。
「あら、失礼。取り込み中でした?」
すると、ゆっくりと開けられた扉から、件の薬師様ルリィ・オミナイが二頭の幻獣とさらに二頭の森狼を伴い現れた。
薬師に侍る魔獣達は「グルグル」と威嚇音を奏でながら、その美しい躯体を見せつけるようにねっとりと人の領域を闊歩する。
森の魔女然とした妖艶な香りを放つ立ち居振る舞いをそのままに、この場の喧騒などお構いなしにその中心にいる薬師が悠々とカウンターに近づくと、さらに絶望的な言葉を告げた。
「森での仕事が終わったので帰ります。今までお世話になったエドガーさんに、道中の護衛を頼むことにしました」
それだけの魔獣に囲まれて、護衛など必要ないだろう。と誰もが思うが、その言葉を発せられる人間はいない。
息を飲んだ皆が見守るなか「それと、ポーションの委託販売依頼の終了手続きを」ルリィは容赦なく現実を突きつけた。
受付カウンターでは、イグナスが恭しく挨拶を交わし、サクサクと書類の作成を始めた。
何か言いたげにギルド長が階段の踊り場から見ているが、幻獣二頭がくまなく辺りに響かせている〈威圧〉の魔法に、イグナス以外に身動きできる強者もここにはいないようだ。
まさか一介の平民風情が、この街で最も高い戦力を有する冒険者ギルドに、それ超える強力な戦力を伴い現れいでると誰も予想だにしていなかった。
ギルド長は、アレが門を通り抜けられるだけの理由がある事を瞬時に理解した。
謹慎後この職を辞することになる。
領主の欲望に漬け込んで、件の薬師の拉致監禁を仄めかしなんとか起死回生を狙っていたが、理解した今イグナスの仕事を止める手立ては何一つとしてなかった。
エドガーは沈黙のままその一部始終を眺めていた。
自分は一体、何を恐れていたのだろう。
イグナスはその仕事を終えると「頑張れよ」とエドガーと握手を交わし、正しく作成した文句のつけようのない完璧な指名依頼手渡した。
書類を受け取ったエドガーと、魔石の外れた首輪を ペッ と床に吐き出した森狼達のマズルを「イイコね」と撫でながら、魔女一行は堂々とギルド館を出ていった。
それを待っていたかのように、代わりに王都から来た官憲部隊が入ってくる。
やはり。ギルド長は膝から崩れ落ちた。
「我らはゾクファイツ王国騎士団第四部隊である。王の勅命により、ここオルランド領領主及び、冒険者ギルド長を捕縛する。関係者各位速やかに協力願う」
その宣言を無視するように、ギルド館の中では歓声が湧き上がった。
「やったなっエドガー!」
「おめでとうっ! エドガー!!」
「もう帰ってくるんじゃねえぞ!!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
エドガーが扉がゆっくりと閉まって行くのを見つめていると、他の街を拠点にする冒険者達の祝福を告げるエールが次々と扉から溢れ出してくる。
そうだ俺は冒険者。どこで何をするのも自由だ。堂々とこの街を出ていくよ。
ウルとネロに鼻先で促され、エドガーは先を行く薬師の背を追って門に向かって歩き出した。
「本当に、ありがとうございました」
なんの問題もなく街門を出たエドガーは、こぼれ落ちそうになる涙を拭って、この顛末の陰の立役者である薬師に礼を述べた。
ルリィは「フフッ」と笑ってはっきりと応えた。
「私は私の仕事をしただけ。これから頑張るのはエドガーさんだわ」
そんなルリィの手をとって、エドガーは熱を込めた視線を向けると、その思いの丈を告げる。
「俺は、いつになったらあなたの家に訪うことができるだろう」
「あなたに外での縁ができたらいつでも」
「・・・そうか、そうだよな。そうだった」
即答したルリィの素気無い答えに、エドガーは名残惜しそうに手を離した。
街の人々がエドガーにしたように、エドガー自身も魔女の力を頼りにするばかりでは、いつまで経っても、その足元にもたどり着けないと自分で気づけてよかった。と、苦笑いを返す。
「いずれまた」
「えぇ、またのご来店お待ちしております」
エドガーは真摯に頭を下げると、大きく吸い込んだ息を吐き出すように「行こう!」とネロとウルに声をかけ意気揚々と歩き出した。
遠く離れていく新たな一歩を踏み出した若い冒険者を見送って、ニコが深いため息をついた。
「それにしても、つくづくルリィって殿方に縁がないのね」
「いざとなったら、また俺が捕まえてきてやるから心配すんな」
いつものように軽口を返すゲッコウに、ルリィが眉間にシワを寄せて抗議する。
「ちょっと、ヒトの生涯の伴侶をその辺の犬猫みたいに言わないでよ」
「「なんだと!? その辺の犬猫の何が悪い!」」
珍しくゲッコウと意見があったのが気に入らなかったのか、ニコがゲッコウの背を尻尾でバシン!と叩くと、ルリィは満面の笑みを向け言った。
「私はあなた達が一緒にいてくれればそれで幸せ」
第二章終了です。
読んでくださってありがとうございました。
第三章に続きますが、第三章、第四章でお終いになっているのですが、ダラダラ続けたくなってもおります。
それではいずれまた!




