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青い雪

森の中を僕らは走る。

つないだ手があたたかい。

鳥の声も聞こえないあたりに僕らはやってきた。

気がつけば、木々が青白く光っているように見える。


「クロネコ」

「なに?」

「寒くない?」

気がつけば、少し寒い。

サカナは歯をカチカチ言わせている。

僕は腕でサカナを包む。

思ったより、サカナは小さな女の子で、

僕が包んだらすっぽりだ。

「クロネコぉ…」

「なに?」

「愛、見つかるかなぁ」

「見つけよう」

僕は、それしか言えない。

寒くて心細くなっているサカナに、

僕は、確たる言葉も言えない。


息が白い。

青白い木々の合間から、

青白い雪がちらちらと降ってくる。

ここの雪は白じゃない。

発光して青白い。


森の片隅で、

僕らは青い雪に埋もれちゃうのかなぁと、ふと、思う。

サカナの探している愛と言うものも、わからないまま。

僕はサカナを包んだまま、ここで二人埋もれるのかな。

それはそれで、僕らがひとつになれるならいいような気がした。

サカナはどう思うだろう。


「クロネコ」

「なに?」

「ありがとう、あったかくなった」

サカナは僕の腕をはずして、深呼吸をひとつ。

「よしっ!」

サカナは、元気になろうとしている。

二人で埋もれる気はさらさらなかったのか。

僕はそれがちょっと残念だった。

「クロネコ」

「なに?」

「冬が来たならば、春が来るんだよ」

サカナは言って笑う。

ああ、やっぱりサカナはきらきらとしていてきれいだ。


サカナが手を差し出す。

僕は疑わずその手をとる。

「いこ!」

僕はうなずいて、

二人して走り出す。


青い雪の降る森の中を、

僕たちは走る。

ここが冬ならば、いずれ雪は溶けて、

青白い森にも鳥の声や緑や花があるかもしれない。

いつか春は来る。

春を待つ間、隣に誰かがいる。

それはとてもあたたかいことだ。


僕らの後ろにあしあとが。

それに青い雪が積もって消えていく。

僕らは振り返らないで走る。

心細さも消えたから。

森の中へ。森の中へ。

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