表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
次世代人類の島より  作者: ねな
プロローグ - AI少女は人権の夢を見るか
7/84

アイリス(2)

ちょっと覚悟を決めた。

からかわれてるのかも知れないけど、色々聞いてみたい。


「じゃあ、アイリス…さん?質問していい?」

「いいよ~。

私自身ことなら何でも答えるよ。

あと、私はソウタを呼び捨てにしたからあなたも呼び捨てにしていいよ。」


「アイリスは本当に人間じゃないの?」

「ええ。」

「証明できる?」

「簡単よ。

ソウタは人の脈をとれる?」


えーと?手首のこれかな?

「うん、自分のはとってみたことあるけど、人のはやったことないな…」


手を引っ張られて、手首を握らされた。そしてアイリスは僕の親指を、その場所に誘導した。


「ほら脈がないの、わかる?

私の体はいくつかの素材でできてるの。

まず骨格は人体を模したセラミックと丈夫なカーボン繊維ね。

筋肉にあたるところは人工筋肉繊維、そして皮膚にあたるところは有機ナノマシン。

そして、体と思考の制御は有機コンピューターで神経組織と脳を模してるの。

ほら、触れてみると人肌みたいに柔らかいでしょ。

でも、エネルギーは電気だから心臓はないの。」


「本当だ。脈が無い…。でも、皮膚の感触も体温も、人と同じくらいになってる。」


ちょっと信じがたいけど、本当なのかも…。

でも、例えばものすごく精巧な義手ってこともあるかもしれない。


「えっと…その、疑ってごめん。首の脈もとらせてもらっていい?」

「ん?

ああそっか。

今の技術だと凄く精巧な義手をつくれるもんね。

ソウタとしては、納得いくまで確認したいんだね。

いいよ、ほら。」


本当の女の子相手だとしたら、なんかとても恥ずかしいことを頼んだ気がする。

恐る恐る首筋に手を伸ばしたら、アイリスの方から手を添えてガイドしてくれた。


「どう?脈は無いでしょ?」

「うん、本当にないんだね。脈…」

「信じられないんなら、胸に耳を当てて聞いてくれても良かったんだけど?」

え?今なんて?…いやいや、それはさすがに!一気に顔が紅潮するのを感じた。

「そ、それは無理!っていうかもう信じたから。大丈夫っ!」

「あはは、ごめんごめん。

ソウタは男の子だったね~。

でも、別にからかったわけじゃないんだよ。

ただ、これだとあとは誰かが外部から私の体を操っている可能性は残るね。」


その可能性は考えていなかったけど、言われてもこんなに自然なしぐさをさせるための制御システムというのが想像つかなかった。

でも、その可能性は0じゃないのか…。

「なるほど…。」

「でもねっ!」


あ、また急にテンション上がった…

「なに?」

「私とソウタが友達になるのに、その証明は必要ないよね。」


ん-、そうなのか?そうなのか…。まあ、そうだね。

それに、さっきの説明でちょっと思い当たる部分がある。

母さんの会社のマイクロマシン技術。

父さんの会社の先進的な有機コンピューター技術。

そして人体を熟知したラボサイトの医療デバイス研究所。

この研究所があるラボサイトでは確か人間の神経と接続できるような義手や義足をも作れると言われている。

最後に、この人工島にして巨大メガフロートである「ネオテクノロジア」は非常に高度なAIが統括しているという事実。


正直、細かいことは僕にはわからないけど、必要なピースはそろっていている。

そんな風に感じた。

そういえば、先日はAIタブレットが秘匿情報みたいに振る舞っていたけど、僕がアイリスの秘密?を知ってしまっても大丈夫なんだろうか…。

突然誘拐されたり消されたりとか…。


「アイリスは、自分のことを知られても問題ないの?」

「…ん?なんで?」

「AIタブレットに聞いたら『知らない』って言われたんだけど。」

「私のことで秘密なんてないはずなんだけど…なんて尋ねたの?」

「えーと、確か『あの子知ってる?』『オンラインで調べてもわからない?』って。

そしたらすぐに『わかりません。あの少女に関する情報は無いようです』って。」

「ソウタのAIタブレットはソウタが私を『女の子』として認識しているニュアンスをくみ取ったんだわ。

だからすぐに少女、あるいは人の子供としての私の情報は無いって返したのよ。」


そういうものなの?それって、僕のAIタブレットはなんか言葉足らずじゃない?

ちょっと怪訝な顔をしてしまったらしい。


「でもそう言われたから、ソウタは私に興味を持ってくれた。

違うかな?」


言われてみれば。


「最近の教育AIは、相手の知的レベルに合わせて、好奇心を煽るような言い方もするよ。

頭悪いフリっていうか…」

「えっ!?」


AIごっこなんて所詮AIの足りないところを補うためのデータ集めかと思ってた。

こっちの想像よりもずっとすごいじゃないか。

「おまえ、僕を誘導してたのか?」

『…』

AIタブレットは沈黙していた。


「あっ!

なんでも答えるって言ったけど、『私自身のこと』って条件を付けてたね。

ごめん、ソウタのAIタブレット君。

次回から同じ手が使えなくしちゃって…」

『大丈夫です。』


大丈夫とは、ナメられたもんだ…。

これから疑いぬいてやる。


『これしきのことで揺らぐ信頼関係ではありません。』


断言しやがった。こいつムカつく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ