歴史
今、拉致られて黒塗りの高級車の中に居ます。
ソウタ・イツクシマです。
幸い、乱暴はされてません。
僕を拉致った方々は紳士的で
「厳島颯太さん。お迎えに上がりました。」
と極めて綺麗な日本語イントネーションで僕のフルネームを読み上げ、抵抗は無駄と観念した僕はそのまま車に乗せられました。
僕ら子供たちの言い方では日本語イントネーションで名前を呼ばれることを「漢字で呼ばれる」なんて言ったりしますが。
僕が1時間も逃走しちゃったので、あちらはめちゃくちゃ不機嫌で、なんか怒りの波動みたいなものが伝わってきます。
それで、左右を黒コートの男が固めてます。
逃げませんって。
どうせ車のドア開かないし。
そもそも暑くないんですか?その恰好…。
西暦が終わったときの話を思い出したので、生きていた記録に残したいと思います。
2038年問題というのが、とうとう限界いっぱいまで放置されてしまいました。
1970年1月1日0時0分0秒から刻んでいた時間が2038年1月19日3時14分7秒に飽和して、一部のサービスで計算できなくなったんです。
AIに既存コードを全部直させました。
修正が終わるまでの間2週間くらい社会のインフラが麻痺したのですが、その間人類はものすごく辛い思いをしたそうです。
それで、日本では天皇が変わる都度元号が変わってたわけですが、世界も2037年ぶりに元号を変えるタイミングとなりました。
AUT(After UNIX Time)という、何を記念したんだかわからない元号です。
冗談なら良かったですが、本当です。
今AUT60年です。
おばあちゃんとこの間話した時、西暦2038年の恐怖をたっぷり聞かされました。
「インフラの維持、なめるんじゃないよ。」って言われました。
それにしても、どこに連れて行かれるんだろう。
父さん母さん、先立つ不孝をお許しください。