序
太平洋の公海上に浮かぶメガフロートの人工島国家「ネオテクノロジア」が出来て、もう1世紀にもなる。
国家の枠を超えた先端科学技術研究センターをいくつもかかえ、人種も国籍もとても多彩だ。
俺に言わせれば、この島の住民は2種類に分かれる。
技術を買われてはるばるやって来た移民と、そこで生まれた子供たちだ。
移民たちは技術的な実績を掲げるか、AIが出すテストをパスすれば比較的容易にこの国の永住権を獲得できる。
最初の数年、本当に初期のころは男女比で悲惨な男社会になりかけていたそうだが、移民局のAIが妻帯者の受け入れを推奨したことと、女性エンジニアを少し多めに募集したことで、この島はその難を免れた。
ここで生まれた子供たちは研究者・あるいはエンジニアとなるために適切な訓練を積むことができる。
学校では知識をAIが教え、情緒面のフォローを人間がするといったスタイルをとっている。
これはこの国が推奨している生き方だ。
だが、もちろんスポーツ選手になったっていい。
身体的な才能に恵まれている人も当然いるのだから。
だってもう、この島には20万人の人々が住んでいるのだ。
サッカーでも野球でもバスケットボールでも、チームは多数存在する。カジュアルなものから本格的なものまでだ。リーグもいくつかある。
まだお世辞にも強いとは言えないが、国際試合だってできる程度にはなってきた。
AIとアンドロイドの補助に支えられているが、自給自足だってかなりできている。
特産品やここで生産しにくいもの以外は輸入に頼ってないとのことだ。
まあ、一国民としては大きな不満もなく人生を謳歌させてもらっているさ。
ただ…いつ頃からだったかな。
人ではない女の子、としか言い表せない。ともかくある少女が町に住んでいることに気づいたんだ。