第2話 魔女
この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
「すいませんでしたッ!」
家を出てから30分。
セレマは師匠である少女ーもとい”魔女”の前でど土下座をしていた。
ーーー魔女、ソフィア・ダグラス。
年齢的には、少年と同じ16歳に見えるが、物言いはどこか、女王を感じさせる雰囲気を醸し出している。
髪は白に黒を入れたような色で彩られ、
胸元まで晒された、病的に白い身体。
また、筋肉質でなく、肥満体質でない、整った肢体。
そして、ーーー
「........今、何時だ?」
綺麗な、少女の声で、淡々と問われる。
その言葉に、何故かとてつもない恐怖を感じた。
「..........9時30分です」
「.....では、集合時間は?」
「........................。」
そう聞かれて黙る、俺。
しばらく黙ると、「6時だ」と答えてくれた。
........一体何がしたいのかと上を見て、
その顔を見てしまった。
「..................」
思わず絶句。息を呑む。心音が激しくなる。の、テンプレ通りの流れ。
だが仕方がないであろう。
まるで肉食獣に睨まれているが如く鋭い眼付き。
更に、何故か笑っているが、目だけが笑っていない顔。
そしてーーー、周りが黒いのだから。
朝のはずなのに、背景のみが黒く見えてしまう。
それがとてつもなく怖い。
そのことを考えていると、周りが急に渦巻き始めた。
(ヤべェ.....!これ、イメージじゃねぇ!魔術だ!!)
気づくや否や、少年は背後に逃げ始めた。
が、時すでに遅し。
展開した魔術は、魔女の怒りと呼応し、少年に当たり、体が砕け.......
たかに思えた。
「ッ........!」
それは、少年の前には盾があったためだ。
ーーー創造。
それが少年の最も得意な魔術だ。
攻撃を受けると確信した刹那。少年はこの盾を顕現させたのだ。
まあ、それでも完全に防げたわけではなかった。
出された爆撃に、思わず、アグッと情けない声を出す。
だが仕方ないだろう。
相手がどう思っていようと、少年にとって、もはやこれは戦争なのだから。
「星は高く。天は遠く。 地を知る者であるー」
「ッ!詠唱魔術かよ!」
ー詠唱魔術。
無詠唱と違い、詠唱する手間がかかる。
が、魔力量と比例し、無詠唱時よりも格段に威力が上がる。
更に、どの程度かを言霊に乗せて調整できる、と言う利点がある。
「我は、疾風の如き疾さで、敵を翻弄する者であるならば!」
ドォン!!!!!!
魔女の一歩。
それに応じ、音も、疾さも桁が違った。
「呼応せよ!風の精達よ!!」
それに頷く代わりと言わんばかりに、風が渦巻く。
「まずッ............」
嵐となった魔力の塊が迫ってくる。
だから、
「創造!!」
バァァァァァン!!!
「..........ほう?」
ぶつかり合って相殺される。
つまりは、同じ力がぶつかり合ったと言うことだ。
ーーー周りの木々を粉々にしたモノを。
ちなみに、創ったものは、剣でも、弓でも、盾でもない。
そう、同じ嵐を。
「ほう、私を模倣したか.....だが、」
「................ぉ、えぁぁぁ、あ」
少年の口から、血が小さく溢れ出す。
魔力は、術者の生命から出させる力。
ーーーつまりは、生命力を代償にしているということと同義だ。
それと、少女から出された魔力は、少年が1日出せるギリギリのモノだった。ということも相まって、少年の体はズタボロになってしまったのだ。
「お見事!魔力量も格段と上がっているな」
「ガハッ!ゴホガグッァ!!」
「おやおや、、、やり過ぎてしまったようだ」
「”おやおや、、、やり過ぎてしまったようだ”じゃねぇよ!この異次元!!」
「そぉかぁー?(笑)」
先程までの険悪な雰囲気から一変。
一気にホワホワとしたムードになる。
基本的に弟子バカな師匠なので、同じ境地に行けれたのが嬉しいらしい。
ーーーちなみに会話している間に、一瞬で治療してもらったので痛みがなくなっていた。
だからこそ、
「...............................。」
何であんな目に、と言う不満が出始めた。
........だが元々、遅刻していたせいだと思い出して黙った。
「まぁ、いい。とりあえず明日には間に合うな....」
「明日?」
「ん?何だ言ってなかったか?私、明日から実技魔術講師になるんだよ」
「おー」
ーーー実技魔術講師。
簡単に言うと、生徒の魔術の使い方を指南する魔術講師。
現代風で言うと、体育教師のような人を指す。
だが、手本になるレベルの魔術師が激減してしまった現代において、それはとてつもない魔術師の名誉である。
「ちなみにどこなんだ?」
「国立シーカー魔術学院」
「マジで!超大手じゃん」
「ん〜〜〜。そこまでハードル上げないほうがいいと思うぞ?」
「?何で?」
「だってお前、そこに入学すっから」
「.................................?はぁ?」
「まぁ正確には、入学試験を受ける。だが」
「え?俺知らないんだけど!え?何で?え!」
まさかの事実に驚く俺。
だが考えてみてくれ。
朝起きたら、親に「あ。あんた東大の試験頼んどいたから。明日頑張って」と言われたらどうなる?
そりゃ、「は?」ってなるだろ。
「まぁとりあえず............2時間みっちりシゴいてやるぞ。覚悟しろ」
「え?ちょ、まっ!」
いきなり魔術で光弾で現れ、飛んできた。
それに抗うために少年は、同じように剣を顕現させ、
そして、少年と少女の戦争とも言えるーーー
訓練が、始まった。
【ブックマーク】や【評価ポイント】、【感想】など、励みになるのでよろしくお願いします。