外れスキル『拙作』を持った作者の苦悩 ~長文タイトルに手を出し、人気キーワードで釣ったお話し~タイトルとレビューは比例する可能性、それ如何に~
キーワードにもありますが、決して批判エッセイではありません。
作者の成長日記、そんな捉え方をしてもらえたら幸いです。
「これは……面白い」
とあるエッセイに感化された私は、自身の長編作品を世に広めるべく、日々執筆に明け暮れ、自身の作品を読み直し、自画自賛していた。
その時に。
【編集ってやりだしたら止まらなくないですか?】
一丁前に上記のような、いかにも『私、書いてます! 執筆しています!』と、痛々しいタイトルのエッセイを書いた。
だけど、一ヶ月後、自身の長編作品を読み返して。
「こりゃあっかんわ、伝えたいことを詰め込み過ぎ」
突然、そう思った。
私は、自分で自分の可能性を、見限った。
嗚呼、私の百万文字……グッバイ。
描くキャラクターは血が通い、生きて、確かにそこに居たのに。
流行り廃りが激化しているインターネットの世界でも受け入れられる、そう思っていたのに。
「何を伝えたいのか、言いたいのか、わからへん。拙作やわ」
――私は、筆を置いた。
★ ☆ ☆ ☆ ☆
それから半月後。
筆を置いたとはいえ、やはり未練があった。
書きたい。伝えたい。知ってほしい。自分も、自分の作品も。
なろう界隈の書き手も、洋服のデザイナーも、モノを創るクリエイターも、訪問販売する営業マンも、『対、人間』を標準にする者ならきっと、同じ気持ちだろう、そう思っている。
そんな前置きはさて置いて。
『郷に入っては郷に従え』
なろうで書き手を続けたい気持ちがあるのなら、なろうをもっと知るべき、そう思った私は、毛嫌いしていた長文タイトル並びに、あらタイの作品を、そして婚約破棄、追放ざまぁの作品を読み漁った結果。
「……面白い」
全部が全部、というわけではなかったけれど。少数の作品は、そう思えた。
――私は、偏見を持ってごめんなさい、とスライディング土下座を心の中で、静かに行った。
☆ ★ ☆ ☆ ☆
それから半月後。
読んでいて、なんだかゾワゾワする。居た堪れない気持ちになる。
『共感性羞恥』
例えば。
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放課後、高校の校舎裏。
僕は、学校一可愛い美少女と呼ばれる、雨宮凛子と対峙していた。
『放課後……校舎裏へ来てください』
お昼休み、一人でお弁当を食べていた時、雨宮さんにそう言われた。
それは、死刑宣告と同義の言葉、そう僕は思った。
どうせ、いつも遠目から見ていて気持ち悪いからやめて、とか、
「……あの、高杉君」
言われるんだろうからね。
「っ……な、なななな何かな」
だけど僕は、冷静に、淀みなく返事をした。
ほら、早く言いなよ、キモいって、雨宮さん。
そんなにモジモジして、イジらしくしていたら、僕の中で君は……学校一可愛い美少女が、日本一可愛い美少女にランクアップしちゃうよ。
「えっとぉ……」
雨宮さんは言い淀む。
違う、そうじゃないよ、雨宮さん。いつもの冷ややかな目線を僕に向けながら、ほら、陰キャの僕を蔑むような事を言うべきだ。僕とはかかわるべきではない、高嶺の花なのだから。
だから僕は、サラッと受け流す所存。
「ははははや、早くしてくれないかな。げげ、げげげゲームの受け取りに――」
放課後に行きつけのショップに行って、乙女ゲーに勤しむ予定がある、そう僕は言い切るつもりだったのに。
「――あんなに見られたら意識しちゃうじゃない! ばか!」
ふぇ? もも、ももももしかして!? いやいやいや!
冷静だ、冷静になれ、僕。 ……って、今のツンデレじゃん。ここ、なんて乙女ゲー?
そんなことを考えていたら、雨宮さんは顔を真っ赤にして、僕の視界から走って過ぎ去った。
この日、僕の中で雨宮さんは、宇宙一可愛い美少女にランクアップした。
―――
――――――
―――――――――
と、まぁ、『そんなこと』の二行が、私の中で不要に思えてきてしまうわけで。
セリフではボケてもいいけれども、地の文でボケられるのが、とても居た堪れない気持ちになってしまう。
ジャンルがコメディーならまだしも、ハイファンタジーやら、現実世界[恋愛]でも見受けられる。
居た堪れないを違う意味でいえば、寒い、恥ずかしい、そういう気持ちになる。
外れスキル『拙作』を除去する為に、私は日々研究している。
↑これも、不要。
☆ ☆ ★ ☆ ☆
それから半月後。
私は、ランキングを上から下へスクロールしていて、気が付いた事があった。
「やっぱり悪役令嬢、婚約破棄、追放系、多いなぁ」
決してマイナスな捉え方ではなく、需要があるからこそ多いんだ、そう私は捉えた。
大なり小なり物語の構成は様々だが、一貫していえることは――。
『パターンA:令嬢を追放する。そして、追放した方がざまぁ展開される』
又は、ハイファンタジー系で、
『パターンB:パーティーに所属していたけど、無能スキルが故に追放。以下上記と同じ』
これを、現代社会で例えると。
パターンA:スカッと、ハッピーエンド。
主人公少女、大企業の社長令嬢は、日本有数の大企業の息子である御曹司と婚約をしていた。
だが、唐突に御曹司は婚約を破棄してくれと、申し出る。
その後、主人公少女は憤怒し、陰から人を操り、時に自分が出て、ざまぁ展開。
又は、無自覚系で、勝手に何らかの理由で御曹司が自爆し、戻ってきてくれ、と頼むが、断る。
その裏の背景は様々だが、概ねハッピーエンド。
パターンB:縁の下の力持ち系。
とある高校のバスケット部は、全国大会を夢見て日々汗水流し、練習していた。
主人公少年は、秀でる才能はなかったが、努力、そしてチームの為に常日頃、貢献していた。
だが、キャプテンはそれをよしとはしなかった。実力主義だったからだ。
少年は、控えでも、ベンチでも無く、何故か退部をさせられる。
少年は傷心し、退部をきっかけに転校したが、その先のバスケット部でレギュラーを勝ち取り、元部員と決勝であたる。
そして勝利し、全国出場を果たした。
目の前の事実にしか焦点を合わせられなかった部員達にざまぁ系。
パターンB:マイナス思考が故に失敗した時の事を徹底的に考えてしまうが、実は優秀系。
とある会社のプロジェクトで、部長から抜擢された社員が五人居た。
一人を除いて、明らかに優秀な彼らは、出来の悪い主人公青年を毛嫌いする。
青年は、誰も見ていない所で、同僚の些細なミスを陰ながらフォローしていた。
だが、プロジェクトリーダーは青年を外し、優秀な人材と交換する。
その裏で、部長は青年の才能に気付いており、違う人材をあてがって、秘密裏に同じプロジェクトを同時進行させていた。
そして、プロジェクトのプレゼン当日、大勢の前だと何故か饒舌になる青年の素晴らしいプレゼン能力と、完璧なリスクヘッジを想定出来た、青年チームの勝利となった。
元のプロジェクトメンバーは、優秀が過ぎるが故に、失敗した時の事を疎かにしていた結果だった。
前を向く者、後ろを向く者、調和されてこそ、会社や社会が成り立つ、秀才にざまぁ系。
……と、まぁ、多少の差はあれど、大体はざまぁ展開になるわけで。
そのスカッとしたい感情は、こうともいえるのではないだろうか。
小学校から中学校に進学して、同級生や、親の、些細な発言にイライラしてしまうもどかしさ、
高校生になって、上手く振る舞っているつもりでも、何故かクラスに馴染めない虚しさ、
大学生になって、バイト先の年上女性に、かわいいね、と言われて相手にされない儚さ、
社会人になって、社会の荒波に揉まれて精神を削り、いっそのこと辞めてしまいたい絶望感。
故に、私はこう思った。
――ストレス溜まってるんやなぁ。
現実では、言いたいことを言えないけれど、小説のキャラクターが代弁してくれる。
つまり、ストレス→心が荒む→読もう→ざまぁ→スッキリ→現実→ストレス、この繰り返し。
だから私は、最高のスカッとを届けられるように、頭を捻る。
「ほんまは、『友情! 努力! 勝利!』の方が、好きやねんけど」
☆ ☆ ☆ ★ ☆
思い立ったが吉日。
私は、数か月ぶりに筆を執った。
【不遇な悪役令嬢に転生したら、案の定、婚約破棄をされましてよ ~タイトル詐欺にご注意を~】
恐らく、多くの方が気になるキーワードを、てんこ盛りタイトルにしてみた。
言葉は悪いけど、釣った。
そして、結果は。
「……まじか」
ド底辺の私は、PV数1000を突破出来てしまった。
さらに、総合評価も、32pt、となんとも有難いお話で。
ちなみに、ブックマーク2件で、嬉しいったらありゃしない。
「……しかも、伝わった!」
それに、伝えたい事が伝わった。
だからもう、この小説は報われた、そう思えて、私の心は晴れた。
ちなみに、冒頭に書いたエッセイの方が、PV数がだいぶ下なのに、ポイントは高い。
不思議。
☆ ☆ ☆ ☆ ★
とある日、気が付いてしまった。
『長文タイトルの作品より、短文タイトルの作品の方が、レビュー数が多い』
一概には言えない。だけど、その傾向が強い。
「なんでやろうなぁ」
考えた。悩んだ。
でも、決定的な違い、それがわからなかった。
ふと、とあるレビューを見た時だった。
そこにはこう記されていた。
『ハリーポッターを彷彿とさせる作品』
どきっ、とした。同時に、ワクワクもした。
それは、その作品のタイトルから内容が全く想像出来なかったから。
「そういうコトかぁ……」
その作品を読んで納得した。せざるを得なかった。
特に『劇』、本当に素晴らしかった。
つまり。
『作品の中身が不透明であるからこそ、読者はその感動を、レビューに載せる』
読者は、感動を、素晴らしさを共有、共感、周知したいから書いている、そう思えた。
読者をそうさせるだけの文章力、構成力、発想力、それを純粋にすごい、そう思えた。
同時に私は、自分の拙作具合に、絶望した。
あのような傑作、秀作、もはや名作を、私は書ける気がしない。
だけど。
いずれ私は、自分が納得出来る『力作』を書きあげたい。
その時は、作品に愛を込めて、短文タイトルにしよう、そう思えた。
そして、気が付いたら。
レビューなんて恐れ多いと思っていた私は、ココで、盛大にレビューを書いてしまっていた。
(内緒だけど、作者のマイページに行けば……)
Fin.
おっと、そこの読者様。
ウェイトウェイト、ストップストップ。
ブラウザバックはまだ早いです。
ああ、わかるぅ~。
は? 自己満乙。
いい暇潰しになったぜ。
そんな風に思ってくれたのなら、この作品の区切り線のように、
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作者の外れスキルは、その一手で外れるやもしれません。
では、ここまでスクロール頂き、ありがとうございました。