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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第六章 再び宇宙へ

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次の仕事へ

お読み頂き有難うございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

大凡おおよそのところは理解した、といった顔で、それでもプッカは尋ねる。


「もう一つ、分からないことがあるぜ。」

「何かしら?」

「何故俺達は、ルルイエの檻あれを見ていると気分が悪くなるのか、ってことだ。」

「ああ、それはね.....」


いつの間にか、鰻の骨せんべいもほとんど無くなっていた。

プッカに促され、最後の一つえんりょのかたまりを摘まんだ円香は、それをポリポリと噛みながら話を続ける。


ルルイエの檻あれが、魂の値を引き上げるってのはさっき言ったわよね。でもそれは、かなり未発達な魂のことなの。私達人間ぐらいに脳が発達した生物だと、相対的に魂の値を引き下げるだけなのよ。」

「成程.....完璧に理解できた.....と思う。」


お茶を飲み終え、二人は立ち上がる。


「どうも、ご馳走様。」

「旨かったよ。鰻が正式メニューに載る日が待ち遠しいな。」


シェフ達がにっこり笑って見送ってくれる。


「毎度、有難うございます。今後ともよろしく御贔屓に。」

「今度は是非、肝焼きも召し上がって下さいね。」

「いずれトマト煮込みにも挑戦しますので。」


満腹の二人は店を出た。



「さて、帰ってひと眠りするか。円香はどうする?」

「私も帰るわ。飲んで食べてそして寝る、これが一番充実した人生ってもんよ。」

「ふはっ!間違いないな。」


二人は互いの部屋へと戻った。


.............................................



プッカは今、地質学者として月で採れる鉱物の調査をしている。

同時に、アステロイドベルトから運ばれてくる小惑星の成分を逐一調べ、リストを作成している。

「いずれ、太陽系全ての鉱物分布を明らかにしてやる。」とのことだ。


円香はこれから、宇宙空間に浮かぶ巨大な居住区の設計にかかる。

ラグランジュポイントにいくつかのスペースコロニーを浮かべ、テラフォーミングされた火星と共に、人口増加に対処する。

「火星には負けられない、どこよりも住みやすい環境にするわよ」と意気込んでいる。


地球を飛び出した人類は、まだまだどこまでも進んでいく。

ゆっくりと、しかし着実に.......



.............................................



わしのへや はいるな!


そう書かれたドアをノックする。

「はいってます。」

間の抜けたボケが返ってきた。

「トイレじゃ無いんですから。」

一応ツッコみつつ、ドアを開ける。


清潔に保たれた部屋の中央には大きな机があり、その前に置かれた大きなひじ掛け椅子には、この部屋の主がちょこんと座っている。


てっきり録り溜めたアニメでも見ているのかと思ったら、チラシの裏にものすごい勢いで鉛筆を走らせている。

辺りには、同様に書き散らされたチラシが何枚も散らばっている。


私は、雇い主の邪魔をせぬよう、そっとそれらのチラシを拾い集め、右上に走り書きされた通し番号に従って並べてゆく。

しばらくの間、鉛筆の音と「むう」だの「うん」だの「ありゃ」だのといった呟きだけが聞こえていた。


「よし!こんなもんかの。」


満足そうに鉛筆を置き、彼女は私の方を見る。

何かは知らないが、一段落ついたようだ。


「お茶でも淹れましょうか?」

「そうじゃな......いや、濃い目のコーヒーを頼むぞい。清書したらキッチンへ行くからの。」


そう言うと彼女はすぐさま、先程のチラシの内容をノートにまとめ始めた。


.......

.....

...


キッチンでコーヒーの用意をする。


とはいっても、インスタントにお湯を注ぐだけだ。

菓子皿にはいつものアイシングクラッカーをたっぷりと盛る。


「ふう、できたぞい。」

「こちらも用意できましたよ。」

「うむ、すまんの。ちっ!」


彼女はクラッカーをポイポイと口に放り込みながら、コーヒーを啜る。

その間に私は、手渡されたノートを眺める。


先日発見されたルルイエの檻。

その復元にあたって円香さん達のチームが導き出した数式。

その数式を出発点として、理論展開がなされていた。


幾つかの不確定項を含むものの、魂や思考、記憶といった概念が数式化されている。


成程.....

ここがこうなって......



......うん?



「所長、この式はまさか?」

「ふっふっふ.....人の記憶の分析と再構築のための数式じゃよ。まだ八割方しか出来ておらんがのう。」

「いや、それにしてもですよ......これをうまく使えば......」

「そうじゃ!人の生きてきた記憶を記録し、コピーすることが出来る。」



恐らく彼女も私と同様、今朝のニュースのことを考えていたのだろう。



火星において、元素変換装置を用いた物質転送の可能性が示唆された。

ある物質の元素を2カ所で順次変換スクラップアンドビルドすることによって、物質を転送するという概念。

そこにこの数式を応用すれば......


「そうじゃ!人が遠く離れた場所へ、簡単に移動することが出来る!」

「!」


興奮して体が震えてきた。


「まあ、まだまだ未完成の理論じゃからな。あと何年かはかかるじゃろうて。カワムラ君、これからまだまだ忙しくなるぞい。」

「もちろん是非、お手伝いさせてください!こんな面白い事、他の人に任せられませんよ!」


隠居のつもりで始めた家政夫このしごとだが、まだまだリタイアは出来ないしするつもりもない。


私は、元教え子で現雇い主の女性に、改めて尊敬の念を抱いた。

まったくこの人の才能には恐れ入る。

神か、もしくは悪魔なのだろうか?


「いや、美の女神に決まっておろうが!!」




この話をもちまして、一旦終了とさせて頂きます。

少しお休みを頂いてから、同じ世界で続編を書く予定です。


これまで駄文にお付き合いいただき、有難うございました。

心より感謝申し上げます。

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