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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第六章 再び宇宙へ

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魂の特異点

「私達は科学者よ。だから、その観点から議論しないといけないわ。その上で聞くけれど、魂って何だと思う?」


微笑みながら円香が問う。

プッカも持論を述べる。


「ニューロンネットワークにおける電気信号の流れだ。」

「それだけ?」

おおむねね、それだけだ。無数のニューロンが複雑に情報を伝達し、そこに秩序と混沌が生まれる。それを俯瞰で観察すると魂とか心の動きってのが表現できるんだと思ってる。」

「ふーん、なるほどね.......」

「変な考えだと思うかい?」


円香はプッカの言葉を反芻しながら、ぬるくなってきたお茶をごくりと飲む。


「まあ、私もあなたと大体同じ考えだったわ。」

「そうかい?そりゃ光栄だな。だが、何故に過去形?」

「うん。ユイの仮説を聞いちゃったからね。」

「魂の特異点、ってやつか。」


.......

.....

...


円香はポケットから何かを取り出した。


「何だい?それ?」

「小型のモーターよ。私が小さい頃、よく遊んでいた玩具ね。お守り代わりにってわけじゃないけれど、今でも触ってるとなんだか安心するのよ。」


古びたモーターを手の中で弄びながら、円香は言う。

ちなみに、「石」に蓄えたエネルギーを運動エネルギーとして使えることが分かってからも、細かなところでは今でもモーターが使われている。

人類が所有する「石」の量には限りがあるからだ。


「これに電気を流すと回る。逆に手で回せば電気が流れるわ。」

「なんか、学生の頃に習ったな。フレミング、だっけ?」

「そう。乱暴にまとめると、電流と磁界と力ね。この三つがそれぞれお互いに影響を及ぼすの。」

「で、それと魂云々うんぬんに何の関係があるんだ?」


今一つピンと来ないプッカ。

そんな彼に、円香は楽しそうに言う。


「ニューロンでの電気信号、まずこれが電流に相当するのよ。」


ん?

ん?

待て!

待て待て!

プッカの頭の中で、何かがカチリと合う。


「おい、まさか.......」


円香は言葉を続ける。


「そして魂が磁界に、生命エネルギーが力に相当するわ。」

「なんてこった、そういうことか.......」


プッカは頭を抱えた。


.............................................


「お話し中、すみません。お茶のお代わりはいかがですか?」


シェフが新しい湯飲みを持ってきた。

二人は一瞬、「早く帰れぶぶづけでもいかがどす」の意味かと思い、席を立ちかける。


「あと、これも良かったらどうぞ。まだ熱いですからお気をつけて。」


そんな二人の前に、小さな皿が置かれた。

鰻の骨をじっくりと油で揚げたせんべいだ。

どうやらまだ、ここにいてもいいらしい。


ちち......」

「あ、これ美味いな......」


骨せんべいをポリポリと齧る。

薄く塩味が付いていて、お茶よりも、もう一杯ビールが欲しくなってくる。


.......

.....

...


「さて、と......」


一息ついたところで、円香の言った言葉を反芻し、さっき直感的に理解したと思ったことについて、もう一度よく考えてみることにする。


ニューロンでの電気信号 = 電流

魂           = 磁界

生命エネルギー     = 力


この三つが相関関係にあるとして、例えばどうなる?


「例えばね、強い心(=魂)を持った人が、何かやるぞ~と一大決心(=ニューロンでの電気信号)をする。そうすると、それをやり遂げる力(=生命エネルギー)が湧いてくるのよ。」

「ははぁ......」

「分かるかしら?」

「何となく、だけどな......」


落ち着いて考えてみると、なかなか理解が難しい。

プッカは、酔いが醒めてからもう一度考えてみようと思った。

だがその前に、もう一つ確認しておくことがある。


「で、これまでの話と、さっき言っていた『魂の特異点』ってのは、どういう関係になるんだい?」

「特異点ってのは、いわば一定の法則から外れたところね。ルルイエの檻の内側は、魂のあたい.....とでも言うのかな、つまり生まれたばかりの弱い魂でさえも、一定のあたいにまで引き上げることができるのよ。」

「すると、どうなる?」

「連動して、生命エネルギーの値が強まるわ。結果として、この中にいる生き物、例えば鰻の幼生の生存率が上がるの。魂のゆりかごってのはそういう意味よ。」

「ふーむ.....」


難しい顔をするプッカに、円香は微笑みかける。


「まあ、今の段階では仮説止まりよ。これからユイが、ちゃんとした理論にしてくれると思うわ。」



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