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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第六章 再び宇宙へ

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白焼き

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

冷凍庫で三十分程冷やすと、鰻はおとなしくなる。


魚を、ましてや鰻を料理するのは久しぶりだ。

タケシは緊張しながら鰻を掴む。

長めの板の上に置き、目の少し後ろの部分へ目打ちをする。


タケシの生まれ育った国では、地域によって背開きと腹開きの二種類の方法がある。

なんでも、ハラキリを忌む地域では背開きになったそうだ。

そこにこだわりは無いが、魚は背から開くことが多い。

その方がハラワタを傷付け難い気もするが、まあ一番の理由は、ただ何となくだ。


思えば、最初の料理の師である父親もそうだった。


とにかくキャンプが好きで、休日ごとにテントと酒を担いでは、山に海にと繰り出していた。

魚を釣り、塩を振って焚火で焼く。

食べきれぬ分は、背から開いて干物を作る。

幼い時はもちろんのこと、タケシが社会人になってからでも、時々は付き合わされたものだ。


そんな父親が一度だけ、キャンプで鰻を焼いたことがあった。

川に仕掛けた罠に鰻がかかったからだったが、さばくのにも焼くのにも苦労したことを覚えている。


「鰻はやっぱり、プロに任せるのが一番ってことだな。」


そう言って笑っていた。


そんなことを思い出しながら、小さなナイフで鰻を裂いていく。

身を開き、内臓を取り出す。

背骨を外し、頭を落とし、軽く血を洗う。

内臓は、苦玉を外し、ナイフの背で消化管の中身をしごいて取り除き、腸の先端を切り落とす。

調理のお礼の一部として、内臓はタケシが貰えることになっている。

あとで、好物の肝吸いを作るつもりだ。


そのままでは長いので、鰻の身を半分に切る。

やや皮に近い身の部分に鉄串を打つ。

鰻の専門家には敵わないものの、タケシとてプロの料理人だ。

修行時代に、一通りは習っているのだから。

大丈夫だ。

心を落ち着け、迷わずに串を打っていく。


.......

.....

...


七輪があれば良かったのだが、生憎あいにくここには無い。


ガスコンロの上に、魚焼き器をのせ、強火で十分に加熱しておく。

鰻を皮を下にしてのせ、中火にする。

そのままゆっくりと焼いていく。


ジュゥ....


色が変わってくる。

焦げないよう数分毎に時々ひっくり返し、慌てずに焼き続ける。


ジュゥゥ.......

ジュゥゥ.......

プシプシプシプシ......


鰻の身と皮が、自身から出た脂で少しづつ焼けていく。

こんがりと、脂で揚がるように焼けていく。


「白焼き」という名前ではあるが、きつね色になるまで焼く。

しっかりと焼く。

根気良く焼く。

ここをいいかげんに済ませると、臭みが残るのだ。


辺りには暴力的な香りがたちこめ、否応なしに食欲を刺激する。


.......

.....

...


月で水耕栽培された山葵わさび

茎をポキリと折り取って、薄く皮を剥き、茎に近い方をゆっくりとすりおろしていく。


鰻にも気を配らないといけないのだが、山葵をすりおろす時には焦ってはいけない。


力を入れずにすりおろす。

山葵の細胞を一つ一つ潰すかのように、丁寧に丁寧に。

そうすることによって、香りも辛みも最大限に引き出せるのだから。


.......

.....

...


次は塩だ。


無論、醤油も用意してある。

白焼きといえばワサビ醤油が定番だが、タケシとしては、塩とワサビで食べて欲しい。

まあこればかりは、料理人の趣味を押し付けるわけにはいかないが。


元素変換装置で作ったものだが、いつものルナステーキに使うのとは違う塩を選んである。

塩化マグネシウムを始めとした各種ミネラルを含むように作り、海水から作った塩と同じような味になるよう調整されたものだ。


三つに区切られた横長の薬味皿にワサビと塩を盛る。

残りの一つは醤油用だ。


.......

.....

...


鰻が焼きあがった。


串を外し、冷めないようあらかじめ温めておいた皿に盛る。

こんがりしたきつね色の表面では、まだ僅かに脂が爆ぜている。


「お待たせしました。」


カウンターにいるお二人の目の前へ。

円香さんもすっかり元気になられたようだ。


「んーーーーーーーっ!!!!」



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