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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第六章 再び宇宙へ

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ルルイエの檻

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

ルルイエのおり


それはマリアナ海溝の最深部、チャレンジャー海淵で発見された異文明の遺跡である。

大きさは30メートル程、歪な柱状のものが複雑に絡み合って籠を形成しており、見る者に名状し難き恐怖を与える。


円香達の解析によると、幾何学的に狂った形状のそれには、恐るべきことに「ある一定の法則」が存在した。

その法則にのっとり、長い年月において浸食された部分をも復元して作られた完全なる複製品レプリカ

それは、円香達スタッフの健康を害するほどのおぞましい物体であった。


なぜ、わざわざ復元した複製品そんなものを作る必要があったのか?


それは、鰻の幼生「レプトセファルス」に関するある実験結果による。

ルルイエの檻を水槽に入れておくだけで、幼生レプトセファルスの生存率が上がり、また味も良くなることが判明したのである。


鰻だけでは無い。

その他の水産物についても、幼生や稚魚の住処すみかとして用いるだけで、養殖の効率アップや品質の向上といった効果が確認された。


つまりルルイエの檻の量産は、養殖漁業において画期的なブレイクスルーをもたらすものなのであった。


.............................................


円香達は、今後もさらに忙しくなる。


スペースデブリの回収がほぼ完了することにより、稼働に余裕の出てきたスイーパーホエールの改修をしなければならないのだ。

(元々、スイーパーホエールというのは、生簀を積んだ養殖用のための機体を改修したものであったため、厳密には本来の姿へ戻す作業なのではあるが。)


フィッシュタンクホエールと名付けられるそれは、内部に巨大な生簀が設置され、自律型AIによる無人制御で地球や月付近の宇宙空間を泳ぎ回ることになる。

内部に設置された巨大な生簀では、様々な魚介類の養殖が行われる。

これにより、月基地や、今後建造が予定されている宇宙コロニーなどの遠く地球を離れた場所であっても、新鮮な魚介が安価に供給可能となる見込みだ。


フィッシュタンクホエールには、砂粒程の大きさの、2つの「石」が搭載される。

用いるエネルギーは、機体全面に設置された太陽電池で生み出す電気エネルギーだ。


その電気エネルギーを使い、1つ目の「石」で元素変換を行い、生簀の水の浄化と不純物の分解、二酸化炭素の除去と酸素の供給などを行う。

2つ目の「石」は、真空状態に置かれてエネルギーの充填を行い、適宜運動エネルギーへと変換することで、推進装置としての役割を担う。

無論、電気エネルギーの一部は、水温管理のためのヒーターや各種電子機器の稼働にも用いられる。


蛇足ではあるが、現在絶賛テラフォーミング中の火星においては、フィッシュタンクホエールは用いず、最近造られた人工海洋にルルイエの檻を幾つか沈めることで対処する予定だ。


.............................................


「今日は有難う、またね。」

「ああ、無理しないでゆっくり休んでくれよ。」


プッカに部屋まで送ってもらい、さよならを言うと、円香はドアをゆっくりと閉める。


まだ少し眩暈めまいがするが、あまり気にはならない。

鼻唄交じりに服を脱ぎ捨て、ぬるめのシャワーを浴びる。

なんだか少し、食欲も出てきた気もする。


シャワーを終え、体を拭いてパジャマを着ると、冷蔵庫から豆腐を取り出す。

削り節をのせ、シソ風味のノンオイルドレッシングを少しかけると、小さなスプーンで少しずつ口へ運ぶ。


食べながらも、円香のニヤニヤが止まらない。

プッカが心配してくれて、わざわざ来てくれて、そのことが嬉しかったのだ。


小さな冷奴を食べ終えると、食器を洗い、歯を磨いてベッドへ潜り込む。

電気を消した真っ暗な部屋で、円香は今日のことを思い出す。


「プッカってば、興奮してあんなこと言うなんてね。」


興奮のあまり口走ったのであろう、プッカのセリフ。

円香はその言葉を反芻する。


「うちの円香がお世話になってます.....」

「俺の円香をこんなにまでして.......」

「俺の円香....俺の円香....う、ふ、ふ、ふ......うー!うー!うー!」


しまりの無いニヤケた顔で、枕をぽふぽふと叩く円香であった。



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