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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第六章 再び宇宙へ

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平和利用

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

俺達は黙って、格納庫へと続く廊下を歩いている。


「さっきはありがとね.....でもあれ.....本気?」

「何がだ?」

「.....ううん、何でもないわ.....」


なんか、顔が赤いな.....?


.......

.....

...


広い格納庫には、少し小型のスイーパーホエールが一機、ポツンと端の方に置かれていた


「前に見たのより、少し小さいな。」

「これはお掃除クジラスイーパーホエールとは違うわ。試作品だから少し小型だけれど、まあ基本設計はあまり変わらないわね。」


円香は近くにある作業台に載っていた端末を操作する。

ブーンという微かな音がして、スリープモードだったクジラが起動する。

円香は振り向くと、にっこり笑って言った。


「それじゃ、ハッチを開けるわよ。しっかり丹田に気を込めておいて。そうすれば大丈夫だから。」

「分かった。ここにもあれがあるんだな?」

「ええ、開けるわよ。」


ファサッという感じで、音も無くクジラの口ハッチが開く。

俺はへそと股の間の辺りに力を込め、あれに呑まれまいと心を決める。

中には四角くて大きく、そして透明な箱があった。


「こいつは.....水槽か?」

「ええ、このクジラちゃんの名前は生簀クジラ(フィッシュタンクホエール)。あの中にほら、あそこに。」

「本当だ、あれがあるな.....」


縦横5メートル、奥行10メートルほどの巨大な水槽の片隅に、先程見たのと同じいびつなそれがあった。


.......

.....

...



ルルイエの檻。


先日の深海探索で発見された地球外生命。

それを閉じ込めるための檻である。


実物は今も深海にあるが、その時の映像記録を元に、円香達は復元を試み、ほぼ完成というところまできていた。

未完成とはいえ、そのレプリカは十分過ぎる程の禍々しさを持つ。

不用意にそれを見たプッカの意識を刈り取る程には。


水槽の片隅に置かれたルルイエの檻。

それは照明の明かりを反射し、きらきらと光る。


「.....いや、違うか?あれが光っているわけじゃ無いのか?」


プッカがつぶやく。

円香がうなずく。


「そうよ。ここから見えるかしら?檻の隙間にすごく小さなお魚がいるんだけど。」

「魚が動いて、照明の光を反射しているのか?」

「ええ、あれはレプトセファルス。つまり鰻の幼生ね。あれが成長して稚魚シラスウナギになるのよ。」


.............................................


その後、円香から詳しい話を聞いた。



長らく謎とされてきた、鰻の産卵場所。

マリアナ海溝で産卵することだけは分かっていたが、詳しい生態は謎のままだったそうだ。

そのため養殖の鰻であっても、その出発点である稚魚シラスウナギは天然のものを捕獲しなければならなかったんだと。

人工孵化も技術的には可能だったんが、幼生レプトセファルスの生存率の低さからコストが高くつき、実用化にはまだまだ時間がかかる筈だった。


ところが今回の深海探索において、幼生レプトセファルスがルルイエの檻を住処としていたことが判明した。


ユイ博士の依頼で、まずは再現性の低い簡単なレプリカを作り実験したところ、親の鰻は先を争うように檻の中で産卵し、孵化したばかりの幼生レプトセファルスは全てそこに住み付いた。

それどころか、稚魚シラスウナギへの成長時において、生存率が跳ね上がる事が明らかになったんだそうだ。


マジかよ.....

すげえな.....


.............................................


「黙っててごめんなさいね。一応極秘のプロジェクトだったから。」

「いや、俺の方こそ押しかけたりしてすまなかった。」


俺は円香に頭を下げる。

円香は慌てて俺の手を握ってきた。


「いいのよ。私のことを心配してくれたんでしょ?嬉しいわ。」

「で、もうこの仕事は終わるのか?」

「うーん、もう少しかかるわね。レプリカの精度が上がれば上がる程、色々な効果が見込めるから。でも、あと少しだから。」


円香はにっこりと笑う。

......なんか可愛いな、こいつ。


何故だろう?

まだ少し、くらくらするな......



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