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宇宙開拓記 ~人類は逞しい  作者: 杠煬
第六章 再び宇宙へ

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物騒な物体

お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。

目が覚めると、応接スペースのソファーに寝かされていた。

かたわらには円香がいる。


「あ、目が覚めたのね。大丈夫?」

「あ、ああ。」


返事をして身を起こすと.....ううむ、大丈夫じゃないな。

まだ眩暈めまいがする。


「もう少し、寝ていた方がいいわ。」

「いや、もう大丈夫だ。」


無理をして起きると、青白い顔で端末を叩いている円香の上司のデスクへ。

ちくしょう、足元が覚束おぼつかないぜ。


「おやプッカさん、もう大丈夫ですか?」

「ええ、先程は不躾な口をききまして申し訳ありませんでした。」

「いえいえ、お気になさらず。それだけ円香さんを大事に思ってくれているということですから。それよりも、本当に大丈夫ですか?もう少し横になっておられた方が.....」

「平気です。それよりも教えて下さい。ありゃあ一体、何なんです?」


俺は隣の部屋へ続く扉の方を指差して言った。


.............................................


さっきチラリと見た、扉の向こうにあったもの。

俺はそれを目にした瞬間、あまりのおぞましさに意識が飛んでしまった。


名状し難き恐怖。

闇の深淵から這いのぼる様な恐怖。

そういったものを具現化したようなあの形状は、たった一瞬見ただけなのに、今も俺の記憶に焼き付いている。

思い出したくもないが、はっきりと思い出せてしまうのだ。


いびつな柱状のものが複雑に絡まり合った、まるで籠のようなそれ。

全体の大きさは縦横奥ゆきがそれぞれ3メートル程だったか。

一つ一つの柱が何の法則性も無いかの如く、あるところでは膨らみ、あるところではへこみ、あるところではたわみ、あるところでは捻じれ、あるところでは歪んでいた。

そして直感的に理解してしまったが、あの一見無秩序な柱状のものには、それなりの法則性が感じられたのだ。


幾何学的に狂った、それでも存在の奥底を貫く法則性が。


ようやく、ここ数日の円香の、そしてこの部屋にいる人達の不調の原因が分かった。

あんなもの毎日目にしていたら、そりゃあ体調も悪くなる筈だ。


で、結局、あれはいったい何なのだ?

円香の上司は、ゆっくりと一言ずつ、俺の問いに答えてくれた。


「あれは、ルルイエの檻、と呼ばれるものです。」


.............................................


話には聞いたことがある。


円香の友人のユイ博士が、先の深海探索で遭遇したという地球外生命。

それが閉じ込められていたというのが「ルルイエの檻」だった筈だ。


成程、あんなもんの中に閉じ込められていたら、生半可なことでは抜け出せやしないだろう。

というか、普通の人間があの中に閉じ込められたなら、間違いなく発狂するだろうな.....


「じゃあ、あれがその?深海から引き揚げてきたんですか?」

「いえ、あれは縮小スケールで復元したものです。現物はまだ、海の底ですよ。我々の仕事は、映像に記録されたデータをもとに、あれを復元し、コピー品を幾つか作る事なのです。」

「.....何のために?」


思わず声が固くなる。

あんな物騒なもの、何の用途があるというのだろう?

正直、軍事用だとしか思えない。


この世界から、戦争は無くなった筈なのに。

いまさら兵器の開発なんて。



円香には、そんな仕事をして欲しくない。



「心配いらないわ、プッカ。そんな怖い顔をしないで。」


円香が俺達の方へ近づいてきた。

なにやら楽し気な笑みを浮かべている。


「円香.....だがあれは.....」

「あなたの考えていることは分かるわ。大丈夫、あれは平和利用のためのものよ。次長、この人に格納庫を見せても?」


にこにこしながら、円香は上司に許可を取る。


「構いませんよ。プッカさん、格納庫へ行ってみてください。但し、他言無用に願いますよ。」

「よし、じゃあ行きましょうか。」


円香は俺の手を取り歩きだした。

おいおい、まだ少し足元がふらつくんだって.....



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